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今年で10年目! ハワイ州がとり組む就農プログラム「GoFarm Hawaii」の成果とは?

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今年で10年目! ハワイ州がとり組む就農プログラム「GoFarm Hawaii」の成果とは?

ハワイ大学が中心となって農業者を作る就農プログラム「GoFarm Hawaii」が始まって10年目。米国農務省や、ハワイ州農務局、カメハメハスクールなどが補助金を出しながら始まった「GoFarm Hawaii」は、2021年までに卒業生450名超を輩出し、今では全米で最大の農業プログラムとなっています。今回はこのプログラムに参加している山根英樹さんに取材をしました。

監修 : ホリコミュニケーション/編集者 (編集者)

ホリコミュニケーションLLC
2007年より海外企画編集会社を設立。ハワイにオフィスを設ける。アメリカ、イタリア、イギリス、スペイン、アジアなど50名ほどのライターを登録、世界の情報を日本の雑誌、ウェブマガジン等へ提供している。www.horicomm.com

Contents 目次

「GoFarm Hawaii」は、現在、オアフ島で2か所、カウアイ島、マウイ島、ハワイ島と合計5か所で展開されています。今回お話をうかがったのは、オアフ島ワイマナロのハワイ大学敷地内でプログラムを体験中の山根さん。彼は、オーストラリア政府やハワイ州農務局で20年以上農業に関わってきた経歴を持っています。

「『GoFarm Hawaii』は、大きく3段階に分かれています。

フェーズ1“AgCurious”は2時間のオンライン講座。ハワイの農業の現状、プログラムの概要説明などを行います。

フェーズ2“AgXposure”は5週間。それぞれ週に1度、オンライン講座と農地での体験を含む農家視察(フィールドビジット)があります。講座では栽培計画の注意点や知識を主に学び、フィールドビジットでは主にオアフ島内の農家を巡り、簡単な農作業のお手伝いなどをして農業にふれ合う体験をします。

フィールドビジットの様子画像
フィールドビジットの様子

フェーズ3“AgXcel”は6か月。それぞれ週に1度、オンライン講座と農地での実習(フィールドアクティビティ)があります。講座では土壌、灌漑、肥料、病害虫、会計、マーケティング、加工、法律、ハワイ農業の歴史などについて学びます。農地での体験では1/16 エーカー(約250m2) の広さの土地を与えられ、トマト、バジル、ケールなど約25 種類にもおよぶ作物をコーチのアドバイスを受けながら生徒自身で栽培します。作物の収穫日に合わせて種まきの時期を逆算し、栽培計画を立てて実践するのです。

フィールドアクティビティの様子画像
フィールドアクティビティの様子

収穫した野菜は自分で箱詰めにして、1箱20ドル以上で売ります。販売計画は、一般家庭7世帯に対して7週間販売することを念頭に立てます。ビジネスコーチからアドバイスを受けながら販売先を自分で開拓する能力を培います。その後、集大成として自分で立てたビジネスプランを発表し、『GoFarm』は修了です。

『GoFarm』で一緒に学ぶ生徒さんは、会計士、学校の先生、レストランのシェフなどさまざま。アメリカ本土からハワイに移ってきて、農業者になろうという人も参加しています。プログラムが始まったフェーズ1では90名くらいいても、プログラムが進むにつれて選抜されていき、講座としての最後のフェーズであるAgXcelに残るのは10名ほどです。 AgXcelを修了すると、修了証を授与されます。

プログラム終了後、農地を自分で見つけられない参加者のために“AgIncubator”という、『GoFarm』が提供しているサービスがあります。月額75ドルという破格値で、敷地内の1/4 エーカー(1000m2、バスケットボールコート5面分くらい)の農地を使え、トラクターなどの農機具も無料で使えます。そうして自分の好きな作物を好きなように栽培、販売して、実際の農家として活動します。ただし、『GoFarm』を卒業していることが応募の条件で、希望した参加者の中から選抜で3人くらいしか選ばれず、農地を使えるのは3年までです。

ハワイは島であり、多くのものをアメリカ本土から頼っています。そんな状況を打破していこうと地産地消が叫ばれてからずいぶん経ちますが、ハワイの自給率は15%ほどとまだまだです。また、ハワイには農地がたくさんあるものの、あとを継いでくれる家族がいないなどの理由で農地を手放さないといけない従事者も多いのが現状です。土地はあるけれど、なり手がいない、けれど、もっと自給率を高めないといけないということで、ハワイ州が中心となり、このプログラムを推進しているのです」(山根さん)

山根さん画像
お話をうかがった山根英樹さん

山根さん は、現在、フェーズ3の2か月目に入ったところ。今後、お米、枝豆、みょうが、大根、しそ、白ねぎなど日系人、日本人が好みそうな野菜を作っていきたいと考えています。またそれだけではなく、フリーズドライの加工品にすることも考えていると言います。物価高が続くハワイでは、まさに自給自足が要となりそうです。

写真/堀内章子 山根英樹
文/堀内章子

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