スマートフォンの普及にともない、デジタル機器の使い過ぎによる弊害に関心が向けられることがよくあります。忘れっぽくなるとか言語能力が低下するという意見まで出ることも。しかし最新の海外研究によると、いろいろな情報を覚えるための外部記憶装置にデジタル機器を使うことで、逆に記憶力がよくなると報告されました。賢いつき合い方とは?
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スマホで記憶力が向上?
デジタル機器の影響については多くの研究が行われています。「スマホ脳」という本が日本でも人気でしたが、スマートフォンを使うことの弊害がクローズアップされることも珍しくありません。依存し過ぎると記憶力や認知能力が低下する「デジタル認知症」になる可能性があるという意見も出ているそう。
今回、英国ロンドン大学認知神経科学研究所の研究グループは、デジタル機器を使うことが人間の能力にどのような影響を及ぼすのかを実験によって確かめています。
対象にしたのは、18〜71歳のボランティア150人以上です。数字を左右に振り分ける、頭を使うテストをくり返し受けてもらい、自分の頭で記憶しておく場合と、タブレットなどに情報をメモした場合とで、テストの成績にどのような差が生まれるのかを調べました。
タブレットにメモするほうが…
こうした実験から判明したのは、タブレットなどでメモをしたほうが、記憶力が向上して、テストの成績が高まるという結果でした。
研究グループによると、タブレットのような外部の記憶装置を使うことで、情報を記憶しやすくなったり、脳に記憶しておく情報と、機器に記憶しておく情報を分けることで、脳に余裕ができたりする可能性があるといいます。デジタル機器は記憶力を損なうどころか、記憶力さえ高める可能性があるとしています。
研究グループによると、機器に重要な情報をメモしておくと、重要ではない情報は脳で記憶する形になるものの、機器が使えないと、重要ではない情報だけ覚えている状態に陥ることもあるといいます。そのため、機器の情報が消えてしまう可能性を考えて、バックアップが大切ということ。物事を記憶しておくために、スマホを効果的に使うのがスマートな使い方といえそうです。
<参考文献>
Using smartphones could help improve memory skills
https://www.ucl.ac.uk/news/2022/aug/using-smartphones-could-help-improve-memory-skills
Dupont D, Zhu Q, Gilbert SJ. Value-based routing of delayed intentions into brain-based versus external memory stores. J Exp Psychol Gen. 2022 Aug 1. doi: 10.1037/xge0001261. Epub ahead of print. PMID: 35913880.
https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fxge0001261