ペット、特に犬は癒しや元気のもとというだけでなく、飼い主を健康にしてくれたり、寿命まで延ばしたりするという研究結果も報告されています。そんな家族の一員とは、できるだけ長く一緒に楽しく暮らしたいものです。でもこのたびの海外研究によると、人間と同じように犬も年をとると耳が遠くなって、認知機能の低下や行動の変化につながりやすくなるという報告がありました。コミュニケーションを工夫するとよさそうです。
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犬に声は届いている?
ペットブームといわれますが、人間よりも寿命が長くはありませんから、ペットの老いと向き合う場面は必ず出てきます。老化すれば生活にも不自由が出てきます。人と同じように適切にサポートしてあげるのが大切です。
たとえば、犬にも難聴が起こることがあります。人間の場合、65歳を超えるとおよそ3分の1が老人性難聴になり、老人性難聴になると認知機能の衰えが30〜40%速くなります。犬では老人性難聴が8〜10歳で始まり、中〜高域の周波数帯が特に聞こえにくくなるといわれています。
今回、米国ノースカロライナ州立大学の研究グループは、犬の老人性難聴について、生活の質や認知機能も含めて検討しています。対象としたのはペットとして飼われているさまざまな種類の健康な犬(ラブラドールレトリーバー、ビーグル、雑種など)です。犬種ごとの平均年齢に照らして高齢〜老齢と見なされる39頭(平均13歳)について調べました。どれくらいの大きさ(強さ)の音を聞きとれるかの測定と認知機能のテストに加えて、飼い主にはふだんの日常生活と認知症のレベルを調べる質問票に答えてもらいました。
難聴をカバーするためには?
今回の研究から明らかになったのは、犬が難聴になると日常生活に難が出てくるほか、認知機能の低下も一緒に起こっているということでした。
具体的には、難聴が進むほどに、質問票から判定された飼い主から見た日常生活に関連した成績が低くなっており、ふだんの行動に問題が生じている状態であることがわかりました。活力がない、指示を理解しないなどの変化が認められたのです。さらに、犬を難聴の進み具合によって軽いグループから進んだグループまで3つのグループにわけて比べると、難聴が軽いほど認知能力が正常であるとわかりました。
人間は年をとって耳が遠くなると、運動能力や神経の働きにも影響を受けますが、犬でも同じことがいえるようだと研究グループは説明しています。そのうえで、ただ言葉で伝えるだけではなく、指差しや体を使った指示などさまざまな方法で難聴をカバーすることで行動の変化や認知機能の低下を防ぐことができると考えられる、としています。ペットと向き合うときにはこんな研究結果を参考にしてもよいかもしれません。
<参考文献>
Hearing Loss in Dogs Associated With Dementia
https://news.ncsu.edu/2022/08/hearing-loss-in-dogs-associated-with-dementia/
Fefer G, Khan MZ, Panek WK, Case B, Gruen ME, Olby NJ. Relationship between hearing, cognitive function, and quality of life in aging companion dogs. J Vet Intern Med. 2022 Aug 6. doi: 10.1111/jvim.16510. Epub ahead of print. PMID: 35932193.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jvim.16510