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日本発の技術でハワイ諸島に流れ着くペットボトルを資源として完全循環?! 炭化技術が海洋プラスティック問題解決の糸口に
環境問題やSDGsに対する関心の高さで知られるハワイですが、ハワイ諸島に流れ着く海洋プラスチティック問題はとても深刻です。そのような中、日本で開発した「炭化技術」をハワイで活用し、漂着ペットボトルを「炭」というエネルギー源に変え、資源循環を可能にするプロジェクトに挑戦が始まっています。倉田 郁子さんと(ハワイマコアオーナー) 佐藤 昌平さんに(自然教育ガイド)に取材を行いました。
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ハワイに流れ着く海洋プラスティックの4割を占めるペットボトルを資源として循環
ビーチクリーンナップをする団体やそれに協力する人々も多く、環境問題への意識の高さで知られるハワイ。背景には、ハワイ諸島に漂着する大量の海洋プラスティック問題があります。その問題の深刻さは、ハワイ周辺の海がゴミのベルト地帯と言われることからもうかがい知ることができます。
今回、お話をうかがった倉田さんは、ハワイ島の大自然、オフグリッド(電気、水道、ガスなどの線がつながっていないところ)に位置する宿泊施設「Hawaii-Makoa(ハワイマコア)」のオーナーであり、自然と一体となった生き方を実践するとともに、自然の大切さと、自然に敬意を払うハワイアンの叡智、生き方を伝えています。
倉田さんは「ハワイでは、埋め立てきれないゴミをアメリカ本国に移送しています。またペットボトルをリサイクルために、新しいペットボトルを作るよりも多くの石油などの燃料を使ってしまうという問題もあります。そして、使用済みの古いソーラーパネルや電気自動車は開発途上国に安く売られ、やがてスクラップゴミになります。このように、環境の問題は非常に深刻です」と話します。
そんなときに日本の有限会社 「紋珠(もんじゅ)高槻バイオチャーエネルギー研究所」が開発した「炭化技術」を知ったそう。ハワイに流れ着く海洋プラスティックの4割がペットボトルです。この技術を使ってペットボトルを炭化し、エネルギーとして循環させることができれば、ハワイの海洋プラスティック問題解決の糸口になるのではないかと考えたそうです。
ただ、製炭炉やボイラーの製造にかかる費用やハワイへ運ぶための輸送費など大量の費用がかかるため、クラウドファンディングによる資金調達を試みていました。その結果、目標金額の700万円を大きく上回る1127万円の資金が集まり、プロジェクトが成立しています。人々の関心の高さが現れた結果だとも言えるでしょう。
化石燃料を使わずにペットボトルをエネルギーに
炭化技術の具体的な仕組みは、以下の4ステップです。
1、 地域の漂着ペットボトルを回収する
2、 紋珠(もんじゅ)の密閉式炭化ユニットで、未使用の間伐や伐採材のほか、農業残渣(ざんさ)を炭化する
3、炭化時に生まれる熱エネルギーを活用し、漂着ペットボトルを炭化する
4、3による炭化物を新たな燃料として生まれ変わらせ、地域で活用して循環させる
ペットボトルを炭化できたとしても、炭化するために化石燃料などを使うのであれば本末転倒、有効な循環資源とは呼べません。この製炭炉が画期的なのは、炭を作るために化石燃料を使わない点です。着火するときだけライターのようなものを使用しますが、その後は木材などが炭化される熱を利用して、ペットボトルなどのプラスティックゴミを炭化することができます。
ハワイには、コーヒー、マカデミアナッツ、バナナ、パパイヤ、紫いもなど、農業残渣(ざんさ)が発生する小農家が数多くあります。また、グアバ、ユーカリ、竹など活用されていない木の林が数多くあるため、こうした林の間伐材が豊富にあります。これらがペットボトルを炭化する際、エネルギーとして活用できるというわけです。
さらにハワイには、「炭(バイオ炭)」の需要が幅広いという特徴もあります。たとえばバイオ炭には小さな穴がたくさんあり、そこが微生物の住み処となるため、土壌改良剤として有効活用できます。一般家庭でも広い敷地内で作物を育てている家が多く、土壌改良剤の需要が高いため、ペットボトルを炭化して再利用するのにふさわしい土地と言えます。
今回、炭化炉を設置する予定のマコアでは、これまでも生ゴミを鶏のエサにしたり、牛、ロバのフンを堆肥にしたりして循環させてきましたが、高槻バイオチャーエネルギー研究所の製炭炉を導入することで、一切のゴミを出さずに、全てを循環させることのできる理想的な土地に近づきます。予定では、年内に製炭炉がハワイ島に到着。来年2月ごろまでに稼働させたいと考えているそうです。
取材・文/堀内章子