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「マッチングアプリで知り合った彼。経歴が真っ赤な嘘だった!」~こんなときどうすればいい? おひとりさまが知っておくと役立つ法律相談1~
男女の出会いのきっかけとして、今や珍しくないマッチングアプリ。異性と気軽に知り合えるのが魅力な半面、相手の素性が不明確なことから、トラブルにつながる場合も少なくありません。今回は『暮らし・お金・老後…おひとりさまの心配ごと、すべて解決してください!』(Gakken)より、そんなマッチングアプリにまつわるトラブルを、法律的視点から解説していきます。
Contents 目次
〈相談ケース〉
マッチングアプリで知り合った男性と会うようになったのですが、学歴や職歴など辻褄が合わないことが多く、問い詰めたところ嘘のプロフィールを上げていました。結婚を前提に付き合うつもりだったのでショックでした。このような人は、経歴詐称などの罪に問われないのでしょうか。
〈まずは状況を見てみよう〉
弁護士:その男性は、学歴や職業をどのように偽っていたのでしょうか?
相談者:国立大学卒、ということでしたが、専門学校卒でしたし、職業も大手メーカー勤務ということだったのに、実際は中小企業に勤めていました。
弁護士:何度くらい会いました?
相談者:ランチで会ったのが2回、夜飲みに行ったのが3回です。
弁護士:交際は始まっていましたか?
相談者:まだそこまでの段階ではなかったです。飲んだ後、手をつないで駅まで歩いたくらいで。
弁護士:結婚を前提に付き合おうと思った理由は何でしょう?
相談者:誠実そうだったのと、私の話をよく聞いてくれて、いっしょにいて楽しかったからです。
弁護士:プロフィールが嘘ではないかと感じたのは、どのような点からでしたか?
相談者:彼が卒業したという国立大学には、私の友だちもたくさん通っていたので何度か遊びに行ったことがあるのですが、学食やサークルのことをまったく知らなかったんです。それに、会社や仕事について聞いても答えがあいまいで、おかしいと思って問いただしたんです。
弁護士:嘘をついた理由を聞きましたか?
相談者:プロフィールを盛らないと、女性から選んでもらえないから、と。女性だってプロフィール写真と実物は全然違うではないか、と言われました。
〈法に照らしてみると…〉
学歴や職業を偽った場合、一般的には「詐欺だ」と思われる方が多いと思いますが、刑法の詐欺罪(第246 条)は、金銭などの経済的利益を得ることに向けられた騙し行為が必要ですので、マッチングアプリのプロフィールを偽っただけでは、詐欺罪にはなりません。そのプロフィールで相手に結婚を決意させ、「結婚の準備資金にするから」などと言ってお金を騙し取った場合は、詐欺罪になる可能性があります。
ただし、軽犯罪法に、「官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作った物を用いた者」は、拘留又は科料に処する、という規定があります。
学歴詐称は「学位」を詐称したといえますので、軽犯罪法違反には該当するでしょう。しかし、拘留は1日以上30 日未満の身柄拘束ですし、科料は1,000 円以上1万円未満の財産刑で、とても軽いことから、かなり悪質なケースでなければ立件されることはありません。
マッチングアプリは今や、出会いのツールとしてとても多く利用されています。そこで出会って幸せになる人もたくさんいると思われますが、トラブルが多いのも事実。その特性をよく考えたうえで、上手に利用してほしいと思います。
あなたを守ってくれる法律
軽犯罪法
第一条_ 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。十五 官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作った物を用いた者
法律解説/上谷さくら(弁護士) イラスト/類
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