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「情けは人の為ならず」が科学的に証明! 専門家が教える、人生の幸福感を高める3つのライフハック
ストレスや疲労がたまる現代は、幸せを感じにくい生活といえます。幸福感は人生の充足や心身の健康にも大きく影響するもの。今回は、明治大学教授の堀田秀吾先生の『誰でもできるのにほとんどの人がやっていない 科学の力で元気になる38のコツ』から、習慣にしたい幸福感を高める3つのハックをご紹介していきます。
Contents 目次
情けは人の為ならず、が証明
「情けは人の為ならず」ということわざがあります。意味は「他人のためを思った行動は、その人にとってだけではなく、まわりまわって自分にも返ってくる」ということです。
「このことわざが、幸福度が低い状態から脱却するよいヒントになります。ヒューストン大学のラッドらが行った実験によると、人は自分のために何かするよりも、ほかの人のためによいこと(「向社会的行動」といいます)をして、それを達成できるとハッピーになるということがわかりました」(堀田先生)
「具体的に人のためになるような行動」をとると、自分自身のハッピー度も上がるということ。ただ「他人の幸せのため」「地球環境のため」といった抽象的なレベルにしてしまうと、実現度合いがはっきりしなくなって、ハッピーと感じる度合いが低くなる結果が出ているそう。
「カリフォルニア大学のリウボミルスキーらによるこんな研究もあります。知らない人のコインパーキングの料金を払ってあげる、献血をする、友人の問題を解決する、昔お世話になった先生にお礼状を書く、といった具合に6週間にわたって週に何かしら5回よいこと、すなわち“一日一善”ならぬ“一週五善”をした人と、特に何もしない人を比べた場合、前者の人の幸福度が高くなりました。しかも、1日にまとめて5回やった人がもっとも幸福度が高かったそうです。 “週に一回一日五善”がベストということです」
さらに、モローハウエルらの研究では、ボランティアなどに従事している人はうつになる確率が少なく、またボランティアを長時間やればやるほど、幸福に感じる度合いが高くなる結果も出ているといいます。
恩返しによって自分が幸せになるというよりは、人のための行動は即効的に自分をハッピーにしてくれるということのようです。
食事で幸せホルモンを出すには
政治家や経営者が仕事相手と会食するというのは一種の交渉術。
「ニューヨーク市立大学のラズランが提唱した“ランチョン・テクニック”というものがあります。人は食事をしているとき、おいしいものを食べながら話していると、気分がよくなり、説得や交渉を受け入れやすくなるというものです。食事中は人の意見を受け入れやすくなり、ついつい乗せられて、相手の話を受け入れてしまうというわけです」
堀田先生のオススメは、いつもの仲よしメンバーではなく、「この人と仲よくなりたいなぁ」と思っている人と食事することです。
「“幸せホルモン”とも呼ばれるセロトニンは、対人コミュニケーションに非常に大事な役割を果たす脳内物質です。一時的な感情に左右されることなく、自分と他人との関係を見つめて、現実に何が必要かを前向きに考えることができるようにしてくれます。このセロトニンを活性化させるには、できるだけ人と接触すること、そして、人と話すときに相手がどんなことを考えているのか、どういう感情なのかを考えながら話すことが大事なのです」
旧知の仲の人もいいけれど、幸せ感が足りないというときは、これから仲よくなりたい相手との食事がよさそうですね。
言語を学ぶことのメリット
外国語の学習をしている人も多いですが、最近の研究では、外国語を話すことで脳の老化を遅らせられるという報告があるそうです。
「スウェーデンにあるルンド大学のマルテンソンらの研究ですが、13か月間、朝から晩まで言語以外の勉強をさせたグループと、アラビア語やロシア語などの外国語を勉強させたグループでは、言語を勉強したグループにのみ、海馬と大脳皮質の発達が見られた、つまり脳が成長したという報告があります」
また、エジンバラ大学のバクらの研究チームは、外国語を学んだ人と、そうでない人で、学力や記憶力、認知症の発症率などに差があるかを長期にわたって調べました。この実験では、被験者たちに一般的な知能テスト、記憶力、情報処理の速さ、語彙力、読解力などさまざまなテストを行わせるのですが、これを「被験者たちが11歳のとき(1947年の記録)」、そして時間が経った2008年~2010年の間でテストを受けさせて比較などをしました。
その結果、複数の言語をあやつる人ほど明らかに高いパフォーマンスを示し、さらに2言語よりも3言語あやつれる人のほうが、結果がよかったといいます。
「バイリンガルはマルチタスクにすぐれ、多面的に物事を考えることにも長けているという報告もありますし、バイリンガルはそれぞれの言語を話すときに違う脳の回路を使うため、仮に脳の障害などでひとつの言語の回路を失っても、言葉を失わないということも示唆されています。こうした結果からわかるのは、外国語を学ぶというのはちょうど筋トレのように、脳の運動としてかなりよいものだということです」
旅行の際に役立つという実益以外にもさまざまなメリットがある言語習得。学ぶ達成感によってドーパミンが放出されますし、毎日“脳トレ”を続けることで幸せも感じやすくしてくれるのです。
すぐにできそうな幸福感を高める習慣。こうしたことで得られる幸せは、買い物をしたり、おいしいものを食べたりする一時的な“プチハッピー”以上に、心を満たすことができるでしょう。
参考書籍/
『誰でもできるのにほとんどの人がやっていない 科学の力で元気になる38のコツ』(アスコム)
堀田秀吾
ほった・しゅうご 明治大学法学部教授。言語学博士。熊本県生まれ。シカゴ大学博士課程修了。ヨーク大学修士課程修了。言葉とコミュニケーションをテーマに、言語学、法学、社会心理学、脳科学などのさまざまな学問分野を融合した研究を展開。専門は司法におけるコミュニケーション分析。研究者でありながら、学びとエンターテイメントの融合をライフワークにしており、「明治一受けたい授業」にも選出される。『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』 (サンクチュアリ出版)、『図解ストレス解消大全 科学的に不安・イライラを消すテクニック100個集めました』(SBクリエイティブ)など著書多数。
文/庄司真紀