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プラスチック容器やパウチのベビーフードを電子レンジで温めると…? 海外研究がナノプラスチック問題を報告

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ベビーフード

極めて小さいプラスチックの粒子である「ナノプラスチック」や「マイクロプラスチック」。近年、これらによる生物への影響が問題になっていますが、このたび、市販ベビーフードのプラスチック容器やパウチを電子レンジにかけると、数百万から数十億個ものナノプラスチックやマイクロプラスチックが放出されるという報告がありました。

監修 : 星 良孝 <ステラ・メディックス>

ステラ・メディックス代表取締役社長 獣医師/ジャーナリスト
専門分野特化型のコンテンツ創出を事業として、医療や健康、食品、美容、アニマルヘルスの領域の執筆・編集・審査監修を担っている。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BP社において「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年に会社設立。YouTubeステラチャンネルでもヘルスケアの話題を発信。
YouTube:https://youtube.com/@stellach

Contents 目次

冷蔵や室温保存した場合とも比較

電子レンジ

マイクロプラスチック粒子(1000分の1mm以上)やナノプラスチック粒子(1000分の1mm未満)は、化学繊維も含めて身近な多くのプラスチック製品から、さまざまな状況で発生しています。粒子そのものの影響だけでなく、プラスチックに含まれる添加剤などの化学物質による毒性影響も考えられるため、近年、研究が盛んに進められていますが、人の健康への影響はまだはっきりしていません。

今回、米国ネブラスカ大学の研究グループが調査したのは、ポリプロピレン製のベビーフード容器とポリエチレン製の再利用可能な食品用パウチから放出されるプラスチック粒子について。プラスチック製の哺乳瓶を調べた研究は過去にもありますが、ふつうに店頭に並んでいるベビーフード容器やパウチ製品も、一般的によく利用されている点に目をつけました。

実験としては容器やパウチ製品に、赤ちゃんが摂取する乳製品やジュースの代わりとして3%の酸性水または純水を入れ、1000Wの電子レンジで3分加熱。マイクロプラスチックとナノプラスチックがどれくらい放出されるのかを分析しました。また、それぞれを冷蔵または室温で6か月以上保存した場合との比較も行いました。

乳幼児は多くのプラスチック粒子を取り込みかねない

ベビーフード

こうして研究で確認されたのが、冷蔵や室温保存に比べて、電子レンジで加熱すると最も多くの微小プラスチック粒子が中身に放出されることです。その数は膨大で6か月以上の冷蔵や室温保存でも数百万から数十億個が放出され得るものの、電子レンジによる3分の加熱では、一部の容器で1cm四方の面積からマイクロプラスチック400万個以上、ナノプラスチック20億個以上が放出されました。また、ポリエチレン製パウチのほうが、ポリプロピレン製容器より多くの粒子が放出されました。

実際に放出された粒子の数は、個々のプラスチック容器や中身などの要素によって違いましたが、体重やさまざまな食品の一般的な摂取量に基づいて計算すると、電子レンジで加熱した水性の食品や乳製品をとる乳幼児は、相対的に最も多くのプラスチック粒子を取り込むことになるとわかりました。

また、実際に容器から放出されたプラスチック粒子を使って、乳幼児の体内に数日間に蓄積されると考えられるレベルの粒子濃度をつくり、人間の胎児からとられた腎臓の細胞を接触させてみたところ、2日後には77%の細胞が死滅しました。この数値は、微小プラスチック粒子の毒性を調べた過去の研究結果よりはるかに高いものですが、細胞での実験は初めてなので、細胞のタイプや粒子サイズによる違いが関わっている可能性があると研究グループは考察しています。

微小プラスチック粒子を体内に取り込むことの本当のリスクを判定するには、まだまだ多くの研究を重ねる必要があるものの、健康に脅威となる可能性がある以上は、プラスチック容器の代替品を探る必要があると研究グループは指摘。電子レンジで赤ちゃんの食べものや飲みものを温めることは珍しくありませんから、気になる研究結果です。

<参考文献>

Nebraska study finds billions of nanoplastics released when microwaving containers
https://news.unl.edu/newsrooms/today/article/microwaving-plastic-containers-can-release-billions-of-nanoplastics/

Hussain KA, Romanova S, Okur I, Zhang D, Kuebler J, Huang X, Wang B, Fernandez-Ballester L, Lu Y, Schubert M, Li Y. Assessing the Release of Microplastics and Nanoplastics from Plastic Containers and Reusable Food Pouches: Implications for Human Health. Environ Sci Technol. 2023 Jul 4;57(26):9782-9792. doi: 10.1021/acs.est.3c01942. Epub 2023 Jun 21. PMID: 37343248.
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.3c01942

私たちの暮らしが地球を脅かす!“マイクロプラスチック”の原因・影響・対策
https://fytte.jp/news/lifestyle/70590/

マイクロプラスチック、ナノプラスチックの問題点と対策(ナノ粒子応用研究会)
https://www.nanoparticle.jp/nanoparticles-infomation/microplastics/

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