夏の気配が少しずつ薄れ、秋の訪れを感じる季節になりました。これからだんだんと日が短く、寒くなっていくにつれ、自然と家の中で過ごす時間が増えていくでしょう。在宅時間を快適に、前向きな気持ちで過ごすためにも、インテリアにこだわって心地よい空間をつくりたいもの。そこでお手本にしたいのが、インテリアに手をかけることで日照時間の短い冬を乗り切ってきた「北欧」のスタイルです。
インテリアに北欧スタイルを上手に取り入れるコツを、インテリアコーディネーターの住吉さやかさんに教えていただきました。
Contents 目次
人によってイメージが違う? 実は幅広い「北欧スタイル」のイメージ
そもそも「北欧スタイル」とはどういうものなのでしょうか? 住吉さんは「北欧のどういったブランドやデザインに興味を持つかで、イメージするものが大きく異なります」といいます。
「私が10年ほど前にインテリアコーディネーターの仕事を始めたときから、北欧スタイルはすでに日本国内でも人気でした。近頃では通販やインテリアショップなどで、北欧スタイルのインテリアを手軽に手に入れることができるようになりましたね。
しかし、北欧スタイルといっても思い浮かべるものは人それぞれ。マリメッコのように色鮮やかなパターンを思い浮かべる一方で、Yチェアに代表される北欧家具ブランドのようなシンプルなインテリアをイメージする方もいるかもしれません。最近ではグレイッシュなニュートラルカラーに和の要素を取り入れた『ジャパンディ』と呼ばれるスタイルも北欧スタイルの一部として人気です」(インテリアコーディネーター・住吉さやかさん、以下同)
デザインや素材にも注目! 北欧スタイルの共通テーマを押さえよう
このように、幅広いイメージを持つ北欧スタイルですが、その中でも共通するテーマがあるのだそう。
「ベースとなるのは『ロングライフデザイン』ではないでしょうか。機能的で、飽きがこない美しいデザインで、普段の生活に馴染んで長く使えるモノを好むという考え方は、どのような北欧スタイルのインテリアでも、共通していると言えます。こうした考え方は、日本人の暮らしやモノの価値観にも似ているので、北欧スタイルが日本で人気なのではないかなと思っています」
北欧スタイルのテーマを踏まえた、北欧スタイルと呼べるインテリアの特徴も教えてくださいました。
・形
「形の特徴としては、直線的でシンプルなものや、自然と調和するデザインであることが多いですね。華美な装飾や、驚きのあるデザインというよりも、それらを引き算していって残ったシンプルな形に美しさが宿っています」
・柄
「水彩画や写実的なグラフィックではなく、抽象的でデフォルメされたパターンや、幾何学的な模様が北欧スタイルの代表的な柄になります。特に自然や植物をモチーフとした柄が好まれています」
・素材
「素材は木材やウールといった、自然素材が多いです。自然素材は、肌触りがよいことはもちろん、時を重ねて素材の味わいの変化を楽しめるところも魅力のひとつです。経年変化を楽しめる素材とロングライグデザインは相性バツグンです」
・色
「北欧は日照時間が短く、少しでも気分を明るくするため、部屋の中に明るくて柔らかい色味のものを取り入れて楽しんでいます。お部屋全体はシンプルなカラーにしておき、その中にブルー・グレーやダスティピンク、くすみオレンジなどをプラスするのがおすすめです」
北欧スタイルを取り入れた部屋作り成功のコツ 3
北欧スタイルに共通するテーマやデザインを知れば知るほど、ぜひ実践的にインテリアに取り入れてみたいと思うもの。しかし、実際に自分の部屋でコーディネートしてみると、なんとなく思っていたイメージと異なってしまう……ということもしばしば起こります。そこで、夜時間を心地よく過ごすためのお部屋作りのコツや、上手な北欧スタイルの取り入れ方をお聞きしました。
1.部屋作りのメインは「照明」
「北欧スタイルをお部屋に上手に取り入れ、心地よい夜の時間を過ごしたいなら、何といっても照明選びにこだわりたいところです。光源が目に入らない形状のシェードで、柔らかい光で室内を照らせるような照明を選ぶと、心地よく過ごせます」
「北欧では、一部屋に複数のライトを設置する『一室多灯』の考え方がスタンダードです。賃貸のワンルームなどでは天井の照明コンセントが1つしかなく、シーリングライトがメイン照明になっていることが多いと思います。その場合、メインの照明を少し暗くして、食卓にテーブルライトを置いたり、部屋の角にフロアライトを設置すると、ワンルームでもおしゃれな一室多灯を実現できますよ」
「お部屋が広く、照明コンセントが2カ所設けられている場合は、ダイニングスペースにペンダントライトを設置するとぐっと雰囲気が良くなります。ペンダントライトを上手に設置するコツは、ダイニングテーブルの真下に、天板から60cm~70cmの高さまで下げること。椅子に座ったとき、電球の光が直接目に入らない位置まで下げて設置するのがおすすめです」
さらに、夜の時間を雰囲気良く演出するためには、照明の形状だけでなく、照明に取り付ける電球にもこだわりたいところ。住吉さんがおすすめするのは、スマホアプリやリモコンなどで操作が可能なスマートライトです。
「スマートライトは、光源の色や明るさを操作できて、シーンに応じた設定にすることでお部屋の雰囲気を簡単に変えることができます。朝は昼白色の爽やかな光で過ごし、夜は落ち着いた雰囲気のなかでリラックスできるように電球色に切り替えるなど、シチュエーションによって手軽にコントロールできるところがメリットですね」
2.自然素材にこだわった家具選びと、ゆとりある配置にも気を配って
「北欧スタイルの家具といえば、木製のシンプルなデザインが特徴です。寒い場所で育つ木は色味が薄いので、明るい色味の木製家具を選ぶと良いでしょう。家具によって色味が多少異なっていても大丈夫です」
「家具の配置については、快適なお部屋を作るために、程よい余白を設けることを意識してみましょう。例えばダイニングテーブルなら、ダイニングスペースの中央に設置することで、空間にゆとりをもった配置になります。
お部屋が狭いと、ダイニングテーブルを壁に寄せて置きたくなりますが、それだと通路が広くなるだけで、行き来しづらかったり、座る場所が窮屈すぎたりするケースもあります。壁からの距離を椅子の後ろは壁から70cm 以上、それ以外は50cm~60cm程度確保できるなら、壁から離してスペースの中心に置いてみてください。回遊動線が生まれ、室内の移動がスムーズになり、見た目にもほどよいゆったり感がでます」
「一人暮らしで空間に限りがある場合、いろいろな家具を置こうとせず、必要なものを厳選しましょう。勉強や仕事はダイニングテーブルで行う、ソファは置かずにベッドでくつろぐといったように、家具を兼用することで、ゆとりある空間を作れます。
また、一人暮らしでもこだわりの家具を手に入れたいなら、ダイニングチェアがおすすめです。引越でお部屋の大きさが変わっても使えなくなる心配がなく、例えば新しいダイニングセットを買ったらこれまでのチェアは書斎で使うなど、ライフスタイルが変わっても長く使えます。椅子を探すときには、実際に座って座り心地を確かめることがとても重要です。ぜひ、お気に入りの一脚を見つけてくださいね」
3.クッションカバーやファブリックパネルで上手に北欧スタイルを取り込む
「大きな家具や照明を買い替えるのは難しいですが、クッションカバーやファブリックパネルなら、手軽にお部屋の雰囲気を変えられます。北欧スタイルのインテリアには、幾何学模様やパターン化された柄が合いますよ。秋冬なら、暖色系の色を選んだり、もこもこした手触りのものを選ぶと、見た目にも手触りも温かく秋の夜長を楽しめます」
シンプルな機能美が魅力の北欧スタイルを上手くコーディネートできれば、夜のおうち時間を心地よく過ごせて、QOLも高まりそう。クッションカバーやファブリックパネルなどでも手軽にイメージチェンジができるので、実践できそうなところから取り入れてみてはいかがでしょうか。
Profile
インテリアコーディネーター / 住吉さやか
Class S interior design代表。大手ハウスメーカーにて新築戸建てのインテリア提案を3年間で100件担当、展示場のコーディネーションなどを経験した後、2018年7月に独立。現在は個人向けのインテリアコーディネーターとして、リビング・ダイニングや寝室などのトータルコーディネートを提案している他、アートライフに関するセミナー講師活動も行っている。
GetNaviがプロデュースするライフスタイルウェブマガジン「@Living」