1980年に発表された村上龍の傑作『コインロッカー・ベイビーズ』。コインロッカーに捨てられたハシとキクが、閉ざされた世界を破壊するため「ダチュラ」を求め、やがて「生きる」ための音を見つけます。
センセーショナルなストーリーにのせて、若者の爆発するエネルギーを表現したこの作品は、2016年に舞台化されて話題を呼び、そして今年7月に再演が決定しました。
山下リオさんが演じるアネモネは、キクに影響を与える大きなワニと暮らす不思議な少女という、難しい役どころ。キャスティングが決まったときは、どんな気持ちだったのでしょうか。本番を目前に控えた山下リオさんにお話を伺いました。
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大役にうれしさ半分、とまどい半分
「初めて舞台化されたときに、ハシとキクを演じたお2人(橋本良亮さん、河合郁人さん、ともにA.B.C-Z)のお芝居が衝撃的と話題になっていたので、再演のアネモネ役が私だと聞いたときに、うれしさ半分、とまどい半分で受け止めながらも、大きな責任を感じました。初演から同じ役を引き継いで演じられる人が多い中に、新アネモネである私が入るのは緊張でしかありませんが、今回は日によってハシとキクの演者が入れ替わる試みがあるように、新たなステージに挑むのは私だけではありませんから、今はあまり先のことは考えずに楽しもうと、日々稽古に励んでいます」
自分をぶつけるつもりで、アネモネを演じたい
村上龍さんが描く世界観は独特です。そこに登場するアネモネもミステリアスな雰囲気で、捉えどころがありません。山下さんはアネモネにどんな気持ちを抱いたのでしょう?
「不思議な存在感を放つアネモネですが、共感できる部分があります。実は私、思春期の反抗期がすごかったんですよ(笑)。少女から大人になるときの特有の感情かもしれませんが、大人や世間に対して鬱屈としたものを抱えてて、それをどこにぶつけていいかわからないエネルギーみたいなものが自分の中に渦巻いていました。そんな自分がアネモネをどう演じるべきか、演出家の木村信司さんに相談したところ、『そのままでいい』と。だから今回はその言葉を信じ、思春期のころの自分を振り返りながら、感情をむき出しにして舞台にぶつかっていこうと思っています」
アネモネに対しては、不思議な縁を感じているのだそう。
「これは偶然なんですけど、アネモネの役をいただくずっと前から原作本を持っていたんです。こういうこともあるんだと、この作品に縁のようなものを感じています。原作のアネモネファンもいらっしゃるように、私自身アネモネのことが大好き。キクに対して激しい感情や愛情を抱くシーンを完全に理解して演じるのは難しいことですが、アネモネのマイペースな性格は私と似ているので、飾ることなく演出家さんの言葉を信じて、みなさんの想像の中のアネモネに近づけたら、と思っています」
3人のエネルギーがぶつかり合う舞台を、感じて欲しい
山下リオさんの新しい魅力が弾ける舞台に期待が高まります。見どころは?
「ハシとキク、そしてアネモネの3人は、よくも悪くもピュア。それゆえに愛し合ったり、傷ついたりします。エネルギーの集合体がぶつかり合うたび、演じている私も舞台で殴られたような気持ちになります。演じている側も激しいだけに、観た人に何かインパクトを残せる作品です。多くの人にその瞬間を体感して欲しいですね」
次回配信のニュースでは、体力勝負の舞台に向けて、山下リオさんが普段から心掛けている健康法や美容法について伺います。
(舞台情報)
音楽劇『コインロッカー・ベイビーズ』
東京公演2018年7月11日(水)~29日(日)( TBS赤坂ACTシアター)
大阪公演2018年8月11日(土)・12日(日)(大阪府豊中市立文化芸術センター 大ホール)
富山公演2018年8月18日(土)・19日(日)(富山県 オーバード・ホール)
●東京公演はチケットぴあ、ローソンチケット、イープラス、ACTオンラインチケットで取扱い
撮影/我妻 慶一 取材/平川 恵