気品のある人は、仕事の場でもプライベートの場でも魅力的。自分を品よく見せるには、第一印象が重要。そこで、「気品はコツコツ修行すれば必ず身につけることができます」という日本文化マナー研究家・印象戦略コンサルタントの伊東香苗さんにインタビュー。今回は、「挨拶」について教えてもらいました。
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「挨拶」「お辞儀」の基本をおさらい
よく「挨拶はコミュニケーションの第一歩」といわれますが、やはり「とにかく必ず挨拶をする」ということが大切なのだそう。
「挨拶というのは『心と心が近づいて、心を伝えること』『自分の心を開いて気持ちを伝えるもの』です。お互いが挨拶を交わすことによって、『元気だね』と確認し合ったり、仲間意識を感じたり、『今日も1日がんばろう』という気持ちを送り合ったりします。例えば、『おはよう』と挨拶したとき、『おはよう』と返ってくるとうれしいけれど、何も返ってこなかったら寂しいですよね? 『おはよう』というたったひと言なんですけれど、とても大事なコミュニケーションなのです」
伊東さんは「挨拶でいい印象を与えるためには『明るく』『自分から先に』『続ける』のが大事」といいます。
「『自分から先に』というのは、相手に対する自分の謙虚な気持ちを表すことになるからです。そういう気持ちを表し続けるのが大切、ということなのです。また、日本では、言葉での挨拶とともにお辞儀も大切です。お辞儀というのは相手に心を伝えようとするときに伴うもので、敬意、感謝、謝罪などによってお辞儀の仕方が違います。挨拶は自分の心を開いて伝えるものなので、心を伝えるために“形”があるのです」
お辞儀の仕方は、大きく分けると「会釈」「敬礼」「最敬礼」があります。
・会釈…角度は15度。軽い挨拶
・敬礼…角度は30度。ビジネスの場でのスタンダードな挨拶
・最敬礼…角度は45~90度。謝罪や感謝を伝えるときなど、改まった場での挨拶
「品のある挨拶にするには、TPOに応じたお辞儀をするということが大切です。例えば、謝罪しなければいけないときに軽い会釈では心が伝わりません。逆に、すれ違うときにいちいち深いお辞儀をしていたらおかしいですよね? TPOに応じてきちんと対応するということが気品につながります」
挨拶は品格を保つための「心の修行」
挨拶の角度による意味について教えてもらいました。伊東さんは「形を知っておくことは大事ですが、それよりも心が大切です。形だけのお辞儀では相手に伝わりません」といいます。
「挨拶」は、禅問答の「一挨一拶(いちあいいちさつ)」からきている言葉で、相手の悟りの深さを試すために丁々発止の問答をして、自分と相手の心を押し合うことを指すそうです。それがのちに略されて「挨拶」になり、一般的に交わす儀礼的な言葉や手紙のやり取りなども指すようになったのだとか。
「これは私の考えなのですが、もともと挨拶というのは修行のひとつなので、挨拶は自分を磨くための修行だと思うんです。挨拶は、自分を磨くためにも、周りの人とのコミュニケーションのためにも、第一印象アップのためにもとても大事なこと。ですから、挨拶をおろそかにして魅力的な人間になんてなれないと思うのです」
「どんな相手に対しても、自分から先に、明るく挨拶すること」が修行になるのだそう。
「そうやって自分から挨拶をしたのに『相手から返事が返ってこなくて落ち込む』ということもあると思います。でも、挨拶は自分にとっての修行なので、相手がどんな反応であってもクヨクヨ気にしてはダメなのです。挨拶を返してもらえなかったのは、相手が忙しかったからかもしれないし、気がつかなかっただけかもしれません。そんなことを気にするより、きちんと挨拶をしたことで自分がひとつ修行を積み、1歩先に進んだと考えることが大切。挨拶は、自分自身をブラッシュアップして、品格を保ち続けるための心のエクササイズと考えて、実践してみてください」
取材・文/小高希久恵