男性だけでなく女性から見ても魅力的に映るのは“気品のある女性”。日本文化マナー研究家であり印象戦略コンサルタントの伊東香苗さんによると「気品は、コツコツ修行すれば必ず身につけることができるもの」なのだそう。そこで今回は、ビジネスシーンなどで第一印象を左右する「名刺の渡し方」について教えてもらいました。
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「名刺交換」には日本の文化が凝縮されている
伊東さんは「もともと名刺交換は日本の作法で、日本式のものの受け渡しの文化が凝縮されている」といいます。
「日本には、美しいものの渡し方というのがあるんです。例えば、ちょっとしたものを渡すときでも、片手でパンと渡すのと、両手で渡すのとではまったく印象が違いますよね。ていねいにものを扱うという美しい文化なんです」
名刺を渡すときの作法は、かつて殿様にものを献上するときに、三方というお盆の上にまっさらな和紙を敷いて、その上にものを置いて渡したことが元になっているのだそう。
「ですから、名刺も、きちんとお盆の上に乗せて相手に渡したいわけです。それで、お盆の代わりに名刺入れの上に置いて渡すという作法になったんですね。そして、名刺は大切なものですから、必ず自分の胸よりも上に持ってきて渡します。名刺は相手に自分の名前が見えるように、文字やロゴを指で隠さないように無地の部分を持って渡します。相手の名刺を受け取るときは、一歩下がって受け取ります。卒業式のとき賞状を受け取ったことがあると思いますが、あれが正しい受け取り方の作法なので、あの受け取り方をイメージするといいと思います」
名刺交換は「相手を知る場」と心得て
伊東さんは、若い人たちの名刺交換の様子を見て、気になることがあるのだとか。
「名刺交換というのは、下の者から上の者に差し上げるのが基本です。また、上司と一緒だったら、必ず上の立場の人同士が先に名刺交換します。それなのに、若い人たちは『とにかく名刺を配らないと』という感じで、最初の作業として名刺交換をしているように感じることがあるんです」
「名刺交換は、単にネームカードを交換するのではなく、相手と最初にコミュニケーションをはかる場と考えるべき」といいます。
「例えば海外では、初めて会った人とはまずトークを楽しみます。トークの中で相手のことを知るんですね。でも、日本では、名刺をやり取りしただけで終わりになりがちです。そのせいで名刺に書いてある情報がすべてになってしまうんです。私がおすすめしたいのは、名刺を受け取ったら「○○会社の△△さまでいらっしゃいますね」と復唱すること。名前を読み上げることで自分の頭に入りますし、もし読めない字があったら、その場で聞くようにすれば失礼になりません。ちょっとしたひと言を添えるだけで、その場の空気を和らげる効果もありますよ」
また、伊東さんは「コミュニケーションということでは、名刺に手を加えるのもおすすめ」だそう。
「個性的な名刺は、渡したときに話が盛り上がるきっかけになりますし、あとからその名刺を見たときに思い出してもらえるというメリットもあります。「営業職の人であれば、顔を覚えてもらうために、自分の写真のシールを貼ったり、似顔絵スタンプを押したりするのもいいと思います。名刺の小口(側面)に色をつけたり、ほんのり香りをつけたりといろいろ工夫できますよ」
会社や所属の部署によっては名刺のアレンジはNGということもあるので、周りに確認してからやってみてください。
取材・文/小高希久恵