FYTTEウェブで薬膳・中医学の記事を担当している岡尾知子です。新しい年、新しい元号になる1月、「何か新しいことを始めようかな」と考えている方も多いのではないでしょうか。そんな方に向け、今回は私が歩み入れた「学び」のことについて、書かせていただきます。
題して「東洋医学を始めよう!」。
学びのテーマは東洋医学。初回の今回は、大人になって学ぶ医学の意義、そして、東洋医学の核にある「未病を治す」という考え方についてです。
Contents 目次
現代人に足りないのは「体の声を聴く力」
私は、長年にわたり、女性誌や単行本の編集・執筆を仕事とし、主に美容や健康に関連するテーマに取り組んできました。その中で、最近、特に感じるのは、人々の健康志向と美容意識の高まりです。今、若い女性向けの雑誌を見ても、人気なのは美容と健康の記事。テレビでも健康やダイエットを扱う番組を見ない日はありません。その影響もあり、「美と健康は一体」「元気でなければキレイになれない」という感覚がすっかり定着してきました。
世の中にある健康・美容・ダイエット情報は、次々と新しいブームがやってきます。「体のことにブームがあるのか?」と感じますが、研究が進めば、これまでの常識が古いものになることがあって当然。「次に来るのはどんなテーマなのか」。それは、多くの人々の関心事となっているようです。
そんな情報社会において感じること。それは、私たちが情報収集に夢中になり、何もかも頭で考えて生きているということです。
たとえば、いつもはないのに、珍しく朝から頭痛がするとします。頭が痛いけれど、仕事を休むのは難しい。そんなとき、多くの人は「キーワード検索」するのではないでしょうか。検索し、出てきた結果が大丈夫そうなら「病院に行く必要はないな」と判断する。私たちは、そんなことを無意識のうちに行い、毎日毎日、くり返しているような気がします。
こうした日々の行動に欠けているものは何か。それは、自分の体の声を自分で感じることです。じつは、「忙しい時期に以前も似たような頭痛がある」とか「そういえば、頭痛だけでなく血色もすぐれない」とか「頭の痛みだけでなく足の冷えもひどい」とか、そんな症状があったかもしれません。でも、私たちはつい、体の声を聴くことを忘れ、手に入る情報を探すことに一生懸命になってしまう。
これって、情報過多社会の問題点なのではないかな…。
あるときふと、私は疑問を感じ始めたのです。
みんな「自在名医」になれる
そんな私に、真の美と健康を考えるヒントを与えてくれたのが東洋医学でした。取材を通じて知った漢方や鍼灸、薬膳の知恵。その根本にあるのは、「体を部分ではなく全体でとらえる」「自然界と人間は一体である」という東洋医学独特の概念でした。
東洋医学のひとつ、中医学が始まったのは、今から二千年以上前のことです。X線も血液検査もなかった当時は、検査ではなく五感を使った診断法で、体の中の状態を推察しました。また、病気になる前の予防や養生が大事だと考え、季節の変化が体にどんな影響を与えるか、感情の変化で内臓の働きがどう変わるかなどを分析。健康状態を知るヒントにしました。今、私たちが利用している漢方薬や鍼灸治療にも、こうした古来の知恵が脈々と受け継がれています。
最近は、東洋医学専門外来を持つ病院が増えています。でも、じつは東洋医学って誰でも勉強できるもの。もちろん、漢方薬を処方したりはできませんが、医学部を出たドクターでなくても、理系の勉強が苦手だった人でも、知っていればすぐに使える知恵がいろいろあります。自分の体の声に耳を傾け、生活の変化や季節の移り変わりを気にかけ、それに合わせて自分自身を少しだけケアしてあげれば、病気や不調を予防できる。そんなヒントにあふれているのです。これって、健康・美容情報であふれる昨今に、役立つ学問なのではないか……。そんな気がしませんか?
「自在名医(名医は自分自身にある)」という言葉がありますが、東洋医学を学ぶことはまさにそれを実践すること。ならば、まずは自分自身が学んでみようではないか。それが、私の「学び」の始まりでした。
つづいて、実際どのように学んでいるかについて、お話します。