日本では働き方改革が注目され、来年4月から日本でも働き過ぎになっていた形を本格的に変えていこうと動き始めています。ワークライフバランスを重視する考え方はますます尊重されそう。そんな中で東京理科大学の研究グループが、こうしたワークライフバランスを改善するときに、男性と女性にとってどういった要因が影響するのかを分析。そこには男女差があるようです。
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ワークライフバランス、日本全体で進行中
「ワークライフバランスを大切にしましょう」といわれることが増えてきました。日本全体でそうしたことが推進されるようになっています。
そもそもワークライフバランスが日本で最初に打ち出されたのは2007年と12年も前のこと。「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が作られて、働き過ぎの生活から脱し、本人が望まないのに仕事をやめなければならなくて済むようにしようと検討が始まったのです。働き方を変えていこうという動きはまずここから活発になりました。
その背景には、働き過ぎによる過労死の問題をはじめとして健康を害する人を減らそうという考え方もあります。日本でも、2019年4月から大企業、2020年4月からは中小企業も含め、原則的に月45時間、年360時間までに収めるように義務づけられることになりました。働き過ぎに歯止めがかけられることになるわけです。
今回、東京理科大学の研究グループは、ワークライフバランスを進めていくとき、男女で生活のどのあたりが満足度につながってくるのかを分析しました。
男性と女性で違いも
日本の分析からわかったのは、女性よりも男性のほうがワークライフバランスを改善すると生活の満足度は高まるということ。東京理科大学の研究グループも、ワークライフバランスは女性にとって大切なのではという考えもあったようですが、意外にも男性のほうが満足度の改善が大きかったのです。
研究グループによると、ワークライフバランスの改善が専攻する欧米などのデータでは、仕事の生産性を高めて、生活の充実につながる対応として筆頭に上がったのは、家族を大切にできるような取り組みでした。
家庭を顧みずに仕事をするということが日本でもよく見られてきましたが、かえって仕事にマイナスになるというのです。働く場所を自由にするような対策をとると、ワークライフバランスの改善につながることもわかってきているようです。日本は欧米と比べると、男性は働き、女性は家庭に入るという固定観念が強いのがネックと説明。
研究グループは、生活の質について0~10点までの点数でスコアをつけてもらい、ワークライフバランスの改善でどのように生活の満足度が改善するかを分析しました。すると、先述のように、女性にとっての関心事という見方に反して、じつは男性こそが個人の時間や余暇の時間をとれるかどうかから受ける影響が大きかったのでした。
「個人の生活の満足度を高めることで、仕事の生産性とウェルビーイングをより改善することができる」と研究グループは指摘。日本でも働き方は大きく変わってきそうですが、思わぬよい結果も現れてくるのかもしれません。
<参考文献>
厚生労働省「仕事と生活の調和の実現に向けた取組の推進」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouzenpan/tyouwa/index.html
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf
New study reveals surprising gender disparity in work-life balance
https://www.tus.ac.jp/en/mediarelations/archive/20190718001.html
文/星良孝