同じ痛みであっても、近くに人がいるかいないかで、その感じ方には違いも出てくるものです。誰かに声をかけてもらったり、手を握ってもらったりすると、つらい痛みもいくらかは和らぎます。このたび恋人同士はそばにいるだけで痛みが実際に軽く感じられると報告されました。恋人の「共感力」が強いほど、痛みは和らげられるそうです。
Contents 目次
異性同士のカップルで調査
これまでの研究によると、痛みの感じ方は単純に身体的な問題で決まるわけではないことがわかっています。心理的な要素も関係していて、誰かが声をかけたり、手を握ってくれたりすると、痛みは軽くなるのです。人がそばにいる、また愛する誰かの写真を見るだけでも、痛みが軽くなるという研究も。それでも、痛みの感じ方には個人差があり、友人がそばにいることで逆に痛みを強く感じた例もあるなど、さまざまな要素が影響してくるようです。
このたびオーストリアとスペインの研究グループは、異性同士のカップル48組を対象に恋人がそばにいることで痛みの感じ方にどのような影響があるのか、また恋人の「共感力」が関係するのかどうかについて調べました。「共感力(empathy)」は、痛みを含めて相手と同じように感じたり、思ったりすることです。
そばにいるだけで意味がある
男女それぞれに、ひとりの場合と恋人がそばにいる場合の2回、指先に少しずつ圧力をかけて、痛みを感じ始めたレベルと痛みに耐えられなくなったレベルを測定。次いで一定の圧力をかけて痛みの程度と不快さを評価してもらいました。恋人がそばにいる場合は、およそ1m離れて同じテーブルについて座ってもらい、目は合わせられますが、話はしないように指示しました。
その結果、男女ともに恋人がそばにいる場合のほうが、痛みを感じにくくなり(痛みを感じ始めるレベルが高くなる)、痛みの許容レベルも高くなりました。同じ圧力をかけた場合の痛みの感じ方(痛みの程度と不快さ)も低下しました。実験後、ひとりずつ別の部屋で質問票を使って共感力を評価したところ、恋人の共感力が高いほど、本人は痛みを感じにくくなり、痛みの許容レベルが高く、痛みの感じ方が低下するとわかりました。
研究グループは「恋人同士の場合、つき合っている間に相手への共感力が高まってくるので、言葉や行動で示さなくても影響するのではないか」と述べ、痛みを和らげるうえで人とのつながりは有益と結論しています。
<参考文献>
Scand J Pain. 2019 Aug 21. pii: /j/sjpain.ahead-of-print/sjpain-2019-0025/sjpain-2019-0025.xml. doi: 10.1515/sjpain-2019-0025. [Epub ahead of print]
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31433786
https://www.degruyter.com/view/j/sjpain.ahead-of-print/sjpain-2019-0025/sjpain-2019-0025.xml