母親というものは、親としての責任感から、どうしても自分に厳しくなりがち。そうした厳しさは、ほかの母親にも向けられているかもしれません。このたび米国のグループが行った研究によると、母親同士、お互いに母親像についての「ステレオタイプ」をもち、タイプ別の評価をしているといいます。それは母親の幸福感とも関係しているようです。
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ママ同士、お互いにどんなふうに見ている?
子どもをもつと、母親としての理想の姿をそれぞれがもつようになるでしょう。米国アイオワ州立大学の研究グループは、そんな「あるべき姿」に近づけていないと感じて、自尊心をなくしてしまう母親が少なくないと指摘します。仲よしのママ友が近くにいて、相談ができれば理想的ですが、頼れる相手がおらず、社会的に孤立しているケースもあるといいます。自信を失った母親は不安やうつ症状が出て、その影響は家族にまで及ぶことも。
今回、研究グループは、母親像をタイプに分けて、母親同士のコミュニケーションへの影響を分析しました。分類されたタイプとして挙げられたのは、すべてを完璧にこなせているような「理想的な母親像を実現しているタイプ(以下、理想タイプ)」、文字通りの「怠け者タイプ」のほか、「家事を一生懸命しているタイプ」や「家族を中心に考えるタイプ」などです。529人の母親を対象に、それぞれのタイプにどんな思いを寄せているかを調べました。
働くママVS専業主婦!?
わかったのは、母親がそれぞれのタイプに応じてポジティブおよびネガティブな感情を抱いているという実態です。専業主婦、働く母親の両方が軽蔑的に見ていたのが、「理想タイプ」と「怠け者タイプ」でした。そうしたタイプの母親は仲間はずれの対象になっていたり、悪口の対象になっていたりしていました。一見するとよいイメージのありそうな育児をがんばる母親も、ポジティブに見られているばかりではなく、ネガティブな気持ちももたれていました。育児をがんばるタイプとは、「理想タイプ」のほか、「家事を一生懸命しているタイプ」と「家族を中心に考えるタイプ」です。
さらに、さまざまな感情がタイプに応じて存在しています。「家事を一生懸命にしているタイプ」は同情を得ており、助けてあげたいと思われる傾向に。さらに、「理想タイプ」は批判の対象になりがちな一方で、働く母親にとっては憧れの気持ちも。「キャリアも育児もがんばる自分を代表してくれていると考えているからでは」と研究グループ。
興味深いのは、一見プラスに見える理想タイプが、ネガティブな感情を抱かれやすいことかもしれません。研究グループは、メディアがつくり上げる理想的な母親像のために、母親がプレッシャーを感じてしまっているためと指摘します。研究グループは、母親同士が批判的に見る状況は変えられないにしても、自分が周りにどう見えるかの印象をコントロールすることは可能と解説。共通点を探しながら、お互いに興味がある話題を見つけるほか、初対面のママには、すぐに自分の子育て話や、子どもの写真を見せるのではなく、関係が深まるまでゆっくり待つといった対応が効果的だといいます。
研究グループが提案するのは「お互いを比較し批判し合うのではなく、協力し合う仲間と考える」ということ。個々に理想的なタイプを目指すのではなく、楽しみや子育ての喜びを、お互いに共有し合う関係を築いていくことがいいのかもしれません。
<参考文献>
Bad behavior between moms driven by stereotypes, judgment
https://www.news.iastate.edu/news/2019/10/09/momwars
Ambivalent Effects of Stay-at-Home and Working Mother Stereotypes on Mothers’ Intergroup and Interpersonal Dynamics
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/15267431.2019.1663198?journalCode=hjfc20