長時間労働が何かと問題になる昨今。翌日の仕事までに十分な回復時間がないと、疲労や睡眠障害の原因になることが、これまでの研究でわかってきています。こうしたなか、スウェーデンで仕事時間を実際に25%短縮してみる(回復時間を増やす)というほぼ初めての研究が行われ、その結果、仕事中の眠気やストレスが減ったという結果が報告されました。
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“サラリー”を変えずに時短
日本人は働き過ぎといわれてきましたが、徐々に変化も生まれてきています。厚生労働省の統計によると、日本人の労働時間は月平均148.4時間(2017年の30人以上の事業所での総実労働時間)。出勤日数は18.7日なので、1日当たりの労働時間は8時間。2019年に働き方改革関連法が施行されたことから、今後、さらに労働時間の削減が注目されるのはたしかでしょう。
今回、スウェーデンの研究グループは労働時間を4分の3に短縮したときに、健康にどのような影響が及ぶのかを報告しました。対象としたのは、役所などの公共機関33か所で、時短グループ(17か所、フルタイムの従業員354人)と従来通りのグループ(16か所、同226人)に分けて、18か月にわたって睡眠やストレスなどの変化を見たのです。参加者には、研究開始時と9か月後、18か月後の3回、睡眠やストレスなどについて1週間日誌をつけてもらいました。
重要な点として、労働時間を短くしてもサラリーは同じにしたこと。時短グループの機関では業務量が過多にならないように、増員費用などのための補助金も出しています。
年齢や性別にかかわりなく、睡眠が改善
こうして得られたデータを分析してわかったのは、労働時間を短くしたグループで睡眠やストレスが改善したこと。睡眠の質がよくなって、睡眠時間が平均23分も長くなり、昼間の眠気やストレス、不安なども減りました。また仕事のある日だけでなく、休日にも同じような効果が。年齢や性別、子どもの有無などにかかわりなく同様の結果で、18か月後も持続しました。
研究グループも指摘していますが、給与を変えずに労働時間を短縮するのは難しいかもしれません。しかし、仕事中に眠かったりストレスを感じていたりしては、事故やケガ、病気の増加、成果や生産性の低下のもとに。健康に有益で、しかも生産性やコストにもプラスとなるならば、戦略的に労働時間を短縮するのはひとつの手となりそうです。
<参考文献>
厚生労働省「毎月勤労統計調査」
Scand J Work Environ Health. 2017 Mar 1;43(2):109-116. doi: 10.5271/sjweh.3610. Epub 2016 Dec 12.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27942734