今や私たちの生活とインターネットは、切っても切れない関係。便利なツールである一方で、インターネット依存やスマートフォン依存も社会問題化。このたび国際研究グループが、インターネットの活用が私たちの頭のなか、つまり脳にどのような影響を及ぼしているのかを調べました。どうやら、プラス面とマイナス面がそれぞれあるようです。
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3つの能力に着目して影響を分析
現在のようなインターネットが米国で誕生してからほぼ半世紀。発展はめざましく、私たちの生活にすっかり欠かせないものになりました。人間関係を築くコミュニケーションツールや情報検索ツールなどとして、広く使用されています。しかしその一方で「ネット依存」という言葉があるように、リアルな生活への悪影響も注目されるようになっています。
このたび米国ハーバード大学などを含む、米国、英国、オーストリアの3か国の国際研究グループが調べたのは、インターネットが脳の働きにどのような影響を及ぼすのかについて。「注意力」「記憶力」「社会的なコミュニケーション能力」に注目して、プラス面とマイナス面を分析。心理学、精神医学、脳神経科学の論文データから、生涯を通じて、どのように使いこなすべきかを検討しました。
記憶力にとっては余力を作り出す
今回の分析を経て、研究グループは「十分な医学的な証拠がみつかった」と結論。わかったのは、インターネットの影響にはプラス面とマイナス面があるということです。
プラス面として考えられたのは、記憶力への影響です。ポイントは、インターネットを使う前は、情報を記憶しなくてはならなかったのが、その必要がなくなったことです。研究グループによると、こうした変化によって脳に記憶する余力が生まれたといいます。つまり、記憶力が引き上げられている可能性があるのです。
一方のマイナス面は注意力です。ネットを使うと常に注意が散漫な状態になりがちに。研究グループは「ひとつの課題に集中し続ける能力が弱まっている可能性が見られた」と指摘しています。
また、プラス面とマイナス面の双方があると考えられたのが、社会的なコミュニケーション能力。脳は、ネットでの交流も実際に会うのと同じように処理しているようなのです。研究グループは「孤独に陥りやすい高齢者には救いになるのでプラスの効果がある一方、若い世代などでは、リアルな友人関係と同じように、同調圧力や嫌悪感といった社会的な影響を受けやすくマイナスの影響を及ぼす可能性もある」と説明しています。
今や私たちの生活に必須のインターネット。プラスとマイナスの影響を意識しながら、うまく使いこなすことが求められています。
<参考文献>
The “online brain”: how the Internet may be changing our cognition
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/wps.20617