周囲に雑音があると、ほかの音が聞こえにくくなりますが、同じ雑音でも「ホワイトノイズ」─TVの砂嵐画面のシャーッというあの音─は別のよう。このたび、静かな環境よりもホワイトノイズが流れているほうが、音の微妙な違いを聞き分けやすくなるという意外な報告が。雑音は文字通り耳障りと思いきや、耳にやさしいのかもしれません。
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注目される「雑音」効果
雑音の効果がにわかに注目されています。最近も、川が流れるような癒やし効果があるとされる「ピンクノイズ」を寝ているときに聞くと、記憶力を引き上げてくれる効果があると研究報告されたばかり。さらに、さまざまな音が混ざり合う、TVの砂嵐の音に代表されるような「ホワイトノイズ」にも秘められた効果があるのではと、研究が進んでいました。
今回、デンマークとスイスの研究グループは、静かな環境の場合とホワイトノイズを流した環境の場合で動物実験を実施し、純音(発信機などから出る「ピーッ」という人工的な感じの音で、周波数が近い音を同時に聞くと聞き分けるのが難しくなる)を聞き分ける能力に差が生まれるかを比較。併せて、音を処理する脳のエリアである「聴覚野」の神経の反応も調べました。
音を聞きとる能力を高める
ふつうに考えれば、背景に雑音があると、微妙な音の違いが聞き分けにくくなりそうですが、実験の結果は逆に。静かなときよりもホワイトノイズを流したときのほうが、微妙に周波数の異なる純音の聞き分けがよくなったのです。
ホワイトノイズを流すことで、周波数が近い音を聞き分ける能力がアップ。その秘密の一端は、脳内の聴覚野の活動が少なくなったことにあるようです。
雑音があることで聞こえにくくなるのかというとそうではなく、研究グループによると、純音が際立つとのこと。こうした結果から、“耳のために雑音をあえて聞く”という冗談のような話がちょっとしたトピックスとして注目されても不思議ではないかもしれません、
<参考文献>
Good noise, bad noise: white noise improves hearing
https://www.unibas.ch/en/News-Events/News/Uni-Research/Good-noise–bad-noise–white-noise-improves-hearing.html
Cell Rep. 2019 Nov 12;29(7):2041-2053.e4. doi: 10.1016/j.celrep.2019.10.049.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31722216