私たちの生活において、Facebookに、InstagramやTwitterなどのS N S(ソーシャル・ネットワーク・システム)はますます身近な存在。ユーザー数は年々増えて、常に投稿が気になっている人も多いでしょう。このたび海外の研究グループが、S N Sのやり過ぎでメンタルヘルスが害されてしまう可能性を報告。問題となるのは、睡眠や運動が邪魔されることと指摘。時折、距離を置くのは大切かもしれません。
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シェアに夢中になっていると…
総務省の2018年の調査によると、自らS N Sで積極的に発信している人の割合はLINEが17.0%、Twitterが7.7%、Facebookが5.3%、Instagramが3.9%など。決して割合は多くはありませんが、他人の書き込みを見るだけの人も含めると、それぞれのサービスについて3~4割の人が日常的に使っていると見られます。最近ではSNSによる「匂わせ」が話題になりますが、ストレスになっている人も少なからずいそうです。
このたび英国インペリアル・カレッジ・ロンドンとロンドン大学の研究グループが、10代を対象に調査を行い、SNSの日常生活への影響について分析しました。対象となったのは、英国にある1000校の学生およそ1万人。継続的にアンケートをしており、ソーシャルメディアの使用頻度のほか、ネットいじめの経験、睡眠時間、運動時間、生活の満足度、幸福感、不安感を質問。それぞれSNS利用との関連を調べました。
女子学生の6割に気分の落ち込み
判明したのは、S N Sを使っている人で、メンタルの問題を引き起こしてしまう人がやはりいること。S N Sそのものには害はないかもしれませんが、頻繁に使用することでたとえば睡眠や運動といった活動が邪魔されがちになることが関係しているとみられました。ネットいじめなどの被害を受けているケースも。
研究の結果を詳しく見ると、2013年に1万3千人の生徒にインタビュー。1日に頻繁にS N Sを使用していたのは、男子生徒43%。女子生徒51%。2014年にはその数はそれぞれ51%と68%に増加。2015年はそれぞれ69%と75%にまで増えていました。
メンタルとの関連では、頻繁にS N Sを使用していた生徒では、男女ともに精神的な苦痛を感じている人が多くなっていたのです。女子生徒では使用すればするほど、精神的苦痛が大きい結果に。2014年には使用頻度の多い女子生徒の28%が精神的な苦痛があると回答。週に1回以下の頻度の女子生徒では20%ほど。原因は約6割が睡眠不足とネットいじめによるものでした。ただ、男子生徒では女子生徒のような影響の大きさははっきりと示されませんでした。
2015年のアンケート調査でもその傾向は顕著。使用頻度が高い女子生徒は、生活の満足度や幸福感が低く、不安感も強いことが示され、ネットいじめ被害に加えて、睡眠不足や運動不足が原因であることもわかりました。しかし、それとは対照的に男子生徒にはそのような関連性はみられませんでした。
男子生徒のメンタルへの影響に関しては、今回の研究では明らかにならなかったと研究グループはいいます。S N Sを頻繁に使用することが原因のネットいじめ被害、睡眠不足、運動不足は、男子生徒の場合、12%程度しか影響していませんでした。研究グループは男子生徒には女子生徒とは違う、何かほかのメカニズムがあると考えています。
今回は10代の研究ですが、S N Sの利用で睡眠や運動への影響が及ぶのは、もっと上の世代でも関連する可能性はあります。使い過ぎと思えるときには、距離を置くのも大切かもしれません。
<参考文献>
総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018)
Study uncovers how heavy social media use disrupts girls’ mental health