脂肪肝という言葉を聞いたことはあるでしょうか? ぜいたくな食事をしている人、お酒をたくさん飲む人がなりやすいというイメージがありますが、今、一見、無縁と思われがちな若い女性にも増えているのです。特に、糖質制限をストイックに実践している人は要注意! ご自身も、ダイエット中に脂肪肝になりかけた経験を持つ管理栄養士の豊田愛魅さんに、なぜ、糖質制限で脂肪肝のリスクが高まるのか、糖質制限を行うときの注意点を教えていただきました!
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お酒も飲まず、脂肪もとりすぎてなくても脂肪肝に!
脂肪肝というのは、肝臓に必要以上の中性脂肪がたまったフォアグラのような状態のこと。一般に食べ過ぎ、飲み過ぎなどで起こりますが、今、問題になっているのは「低栄養性脂肪肝」です。これが糖質制限をやりすぎた場合、なりやすい脂肪肝のことです。
「私は3食ごはんを抜く糖質制限をやっていたとき、健康診断で、脂肪肝になる一歩手前と診断されたことがあります。お酒は飲まないし、油もバターとかではなく、オリーブオイルや亜麻仁油など質の良い油をとっていたので、なぜ?という思いでした」と豊田さん。
糖質制限のやりすぎで脂肪肝になってしまう理由
糖質制限でなぜ肝臓に余分な脂肪がつくの?と不思議に思う人も多いでしょう。じつは脂肪分たっぷりの食事をしているから体内の脂肪がつくというわけではないのです。
「最近の研究では、食べ物由来の脂質の8割以上が体脂肪にならずに排出されたり、ホルモンの原料になったりすると言われています。そもそも体内の脂肪の材料となるのは、余分に摂取した糖質なんです。糖質を制限しすぎると、材料の糖質が不足して脂肪がつくれなくなってしまいます。脂肪は、細胞膜の材料になるなど、体にとって必要なものですから、肝臓にも適度な脂肪があるのが正常な状態です。それがなくなると、機能障害を防ごうとして、体中から脂肪をかき集めてくる。それで脂肪肝になってしまうんです」
脂肪肝で肝臓の機能が低下することもあり、基礎代謝が落ちるなどダイエットにとってもマイナスに。ダイエットを頑張っていることが逆効果になっている可能性もあるのです。
肝臓はなかなか、症状が出ないので、糖質制限をやりすぎていると自覚がある人は、バランスのよい食事に戻すことを考えましょう。豊田さんも食生活を戻して改善できたそうです。
まだまだある! 糖質制限に潜む、やせない要因
糖質制限をやりすぎると、ダイエットにマイナスになる。そんなデータがさまざまな研究からわかっているそうです。いくつかご紹介しましょう。
○糖が足りなくなると筋肉を分解してエネルギーに変えるようになる。筋肉が減るので代謝が落ちる。
○糖質制限=穀類の摂取も制限。穀物に含まれる食物繊維などが不足して、腸内環境が悪化。
○血糖値が上がらず、満腹を感じるホルモンが出ない。だから食事をしても満たされない状態が続く。
豊田さんも糖質制限をやりすぎて、脂肪肝になりかける、筋肉がなくなるなど、ダイエット前より悪化した状態に。「やらないほうがよかった」と反省しているそうです。
糖質制限は“ほどほど”だと効果が出る!
糖質制限は、ストイックより“ほどほど”のほうが効果があるそう。こんなちょっとしたことの積み重ねが結果を生みます。
○朝や昼はきちんと主食の糖質を食べて、夜だけ半分の量にする
○毎食、主食をほどほどに調整する
○お菓子を控える、ジュースを減らす
「糖質制限ダイエットはもともと、糖尿病食など患者さんのために考えられたものです。では、糖尿病食でごはんはNGなのかというと、必ずしもそうではないんです。もちろん、患者さんの状態にもよりますが、病院で出される糖尿病食は、ごはん、お肉か魚、そしてデザートまでついてくることだってあります。それでも適正な体重へと減量できています。病気と診断された人でも食べているのになぜ健康な人がごはんを食べないのか。過度な制限をしなくても、きちんとやせるんです」
もっと詳しく知りたい人は
ずぼやせ 「生きているだけで痩せる体」をつくる食事術 (豊田愛魅著/光文社)
ダイエット難民だった管理栄養士がたどりついた、「しっかり摂って痩せる」習慣をつくる食事術。
取材・文/野上郁子<オフィスhana>