緊張するとお腹が痛くなる、忙しくなると便秘がちに…。ストレスと食生活が原因で、そんな症状を引き起こす「過敏性腸症候群」は、20~30代の女性に多く、悩んでいる人も増えています。とくに今年はふだん以上にストレスフルな状況。なんとなく胃腸の調子がよくないなと思う人は、「過敏性腸症候群」とのつきあいかたを知ることが、体調を整えるきっかけになるかもしれません。「過敏性腸症候群」について、消化器治療の第一人者でさくらライフ錦糸クリニック名誉院長の松枝啓先生に、「過敏性腸症候群」とつき合ううえで欠かせない食物繊維のとり方のコツを管理栄養士の金丸絵里加さんに伺いました。
Contents 目次
【目次】
1、「過敏性腸症候群」とは?
2、「過敏性腸症候群」の原因
3、「過敏性腸症候群」の診断基準
4、「過敏性腸症候群」の治療
5、「過敏性腸症候群」のセルフケア
6、「過敏性腸症候群」の改善に役立つ食物繊維
7、便秘or下痢? タイプ別・食物繊維の効果的なとり方
腸に異常はないのに、便秘や下痢をくり返す
「過敏性腸症候群」という病気を知っていますか?
「過敏性腸症候群とは、病院で検査をしても、特に腸には異常がないものの、慢性的に下痢や便秘をくり返すものです。腹痛や腹部膨満感、お腹がゴロゴロ鳴る、おならが出る、残便感などを伴います」(さくらライフ錦糸クリニック 松枝啓先生)
症状によって、便秘型、下痢型、混合型、分類不能型の4タイプがあります。
そもそも、食べたものは、胃で消化されると腸へ送られ、さらに消化吸収されて不要となったものが便として排出されます。便の形を作って、出すのが大腸です。便は、はじめは液状ですが、水分が腸壁から吸収されることで、徐々に固くなっていきます。腸のぜん動運動が3回以上起こると、排便が起こります。
「ところが、腸のぜん動運動が活発になりすぎると、便は消化管をあっという間に通過。水分が吸収されないうちに排出されてしまうため、下痢になります。一方、腸の動きが鈍くなると、便はなかなか消化管を通過できません。すると水分が吸収されすぎるため固い便になるので排出しにくくなり、便秘になってしまうのです」
過敏性腸症候群の原因は、ストレスと食事
では、なぜ過敏性腸症候群が起こるのでしょうか。その原因は、「ストレスと食事」と松枝先生は指摘します。
「現代は、ストレス社会です。ストレスがかかると、自律神経の働きが乱れ、消化管の運動に変調をきたし便秘や下痢そして腹部不快感が起こりやすくなるのです。また、仕事はデスクワークが中心。体を使う機会も少なくなっています。かつての日本は、一家総出で農作業をしていました。体を動かすことは、ストレス解消になっていたのです。とぐろを巻くような“いい便”は、食物繊維をたっぷりととることで作られますが、食物繊維の摂取が減っていることも原因といえます」
さらに、「これは仮説ですが」と前置きしつつ、「衣食住が足りると、過敏性腸症候群のような病気が増えてくるのです」と松枝先生は続けます。
「現代は、成熟社会で衣食住が足り、生活に余裕ができたために自分の健康に関心を持つ人が多くなりました。そこで症状が出ると、何か悪い病気じゃないかという考えにハマってしまい、それが新たなストレスを生み出し、ますます症状がひどくなるという悪循環に陥ってしまう人も少なくありません」
脳で感じたストレスが、腸に影響する「脳腸相関」
過敏性腸症候群は、年代では20~30代と70代以上、性別では男性より女性のほうがなりやすいといわれています。人口の2割はいるとされ、発症には、本人のキャラクターも影響しています。
「繊細で、感受性が豊かな人、そして几帳面な人に多いですね。女性のほうが、ものごとに敏感で、ストレスを感じやすいことが影響しているようです。一方で、感受性が豊かという“才能”のおかげで、仕事でも成果を上げていることが多いものです。過敏性腸症候群に悩む人には、病気を気にしすぎず、感受性の豊かさに自信を持ってもらいたいと思います」(松枝先生)
ストレスに敏感だと、なぜ下痢や便秘をくり返してしまうのかというと、体の「脳腸相関」という仕組みが関係しています。
「胃腸には、大脳と同じ神経細胞が、大脳と同じ数だけ敷き詰められており、自律神経で脳とつながっています。脳と腸のこうした関係が「脳腸相関』で、胃腸は『考える臓器』、または『第二の脳』とも呼ばれています。
自律神経には、交感神経と副交感神経があります。ストレスがない状態では、副交感神経が優位に働くため、消化吸収もゆっくり行われ、排便もスムーズにいきます。ところが、ストレスで交感神経が優位になると、腸のぜん動運動にブレーキがかかって便秘になったり、逆に活発になりすぎて下痢を起こしたりしてしまうのです。腸の不調は、すぐにストレスとして脳に伝わり、『ストレス→便秘・下痢→ストレス』という悪循環も起こってしまいます」
さらに、不安や心配というストレスがかかると、痛みを感じるハードルが低くなり、腸のぜん動運動自体も、痛みとして感じるようになるといいます。脳腸相関という側面から見ても、過敏性腸症候群の人は、とてもストレスを受けやすい状態になっているのです。
過敏性腸症候群の診断基準は?
過敏性腸症候群には、世界的な診断基準(RomIV)があります。
腹痛が、最近3カ月のなかの1週間につき少なくとも1日以上を占め
下記の2項目以上の特徴を示す
(1) 排便に関連する
(2) 排便の変化に関連する
(3) 便形状(外観)の変化に関連する。
最近3カ月間は基準を満たす
少なくとも診断基準の6カ月以上前に症状が出現する
「しかし、この基準を満たさなくても、腸に異常がなく、便通異常と腹痛や腹部不快感があれば、治療の対象となります。下痢や便秘で生活に支障をきたすようなら、過敏性腸症候群にくわしい医師のいる消化器科を受診しましょう。ただし、市販の薬でなんとかしのげていれば、必ずしも病院にかかる必要はありません。過敏性腸症候群は、人口の20%にみられますが、病院で治療を受けるのは、そのうちの5%と考えられています」(松枝先生)
治療は、まず「症状の緩和」を目指す
ストレスに起因する病気であることから、ストレスをコントロールすることが症状をやわらげることに役立ちます。
「過敏性腸症候群の人たちは、もともと感受性が豊かなので、この病気によって学校や会社に行けなくなったり、不安や孤独を感じたりすることも多いです。欧米の調査では、過敏性腸症候群の人たちのQOL(生活の質)は、腎臓病で透析を受けている人よりも低いという結果が出ています。精神的にまいってしまい、うつになることもあります。過敏性腸症候群の改善には、まずどんな病気かを理解して、不安をとり除いていくことが重要です。お腹の調子が悪いことで生活がうまくいかなかったり、精神的な落ち込みを感じたりしたら、過敏性腸症候群にくわしい医師の診察を受けることが大切です。その上で、規則正しい生活、適度な運動でストレスをコントロ-ルしながら、自律神経を整えていきます。食事を工夫して、胃腸の働きを整えていくことも改善のカギです」
必要であれば、薬物療法もとり入れます。
下痢型の治療薬には、松枝先生も開発に携わった「イリボー」があります。
「脳がストレスを感じると、腸からセロトニンという物質が分泌されます。セロトニンが腸内のセロトニンの受容体にくっつくことで、腸は痛みを感じやすくなります。この状態になると、腸のぜん動運動を活性化させるアセチルコリンという物質が活発に分泌されるので、下痢が起こります。イリボーは、セロトニンの受容体にくっつくことで、痛みと腸のぜん動運動を押さえ、下痢を防ぎ腹痛を和らげる効果があります」
一方、便秘型には、便を軟らかくするリンゼスなどの薬剤、そして食物繊維と似た働きをする人工繊維の「ポリカルボフィルカルシウム」などが治療に使われます。
「患者は、完全主義者が多く、症状が完全になくならないと不安になり、それがストレスとなって症状を悪化させることが多くあります。まずは、症状の緩和を目指し、安心することが症状の消失につながります」
市販の下痢止め、便秘薬をのむときの注意
市販薬を使うときは、どのようなことに注意すればいいでしょうか。
「下痢止めは、“レスキューメディスン”として、持ち歩いておくと安心です。大事な仕事や約束があるときに、事前にのんでおくのも、ひとつの方法です。下痢止めの中でも、腸の動きを止める抗コリン作用(ロートエキスなど)のあるものは、尿が出にくくなったり、のどが渇いたりという副作用があります。また、ウイルス性胃腸炎や食あたりによる下痢は、薬で止めてはいけません」
便秘薬も、選び方に注意が必要です。
「センナ、大黄などアントラキノン系の成分を含む便秘薬は、おすすめできません。常用することで、腸の神経細胞が死滅して、腸壁が黒っぽく変色し、ぜん動運動が起こらなくなってしまいます。その結果、服用する量の増加や、下剤乱用のもとになります。欧米では、2週間以上、服用してはいけないことになっています。便秘の解消で服用するなら、酸化マグネシウムなどが成分の塩類系の下剤やビオフェルミンなどの整腸剤を選ぶようにします。そして、薬だけに頼らず、お通じがよくなるように食生活を改善していくことも考えましょう」
過敏性腸症候群のセルフケアは、自律神経と胃腸の両面からアプローチ
過敏性腸症候群のセルフケアは、ストレスマネジメント、自律神経のバランスを整える、胃腸の働きを整える、の3本柱で行っていきます。
●75点主義で、ストレスをマネジメント
「過敏性腸症候群の人は、感受性が強く、几帳面なところがあります。だからこそ、ストレスがたまりやすいのですが、感受性や几帳面さは、才能のひとつです。それをいい方向に生かすために、完璧主義ではなく、75点主義を目指しましょう」
●規則正しい生活と運動で、自律神経を整える
過敏性腸症候群による便秘、下痢は、ストレスによる自律神経のアンバランスが引き金になります。自律神経のバランスを整えるには、起きる時間や寝る時間、食事の時間を一定にするなど規則正しい生活を送ることが大切です。
「休みの日も、ふだんと同じ時間に起きて、活動的に過ごしましょう。寝だめをしたり、家でだらだら過ごしたりすると、自律神経のバランスが崩れてしまいます。」
また、運動も、自律神経のバランスを整えるのに効果的です。
「汗ばむ程度の運動は、交感神経を優位にします。あえて、交感神経が優位な状態を作ることで、自律神経のアンバランスがリセットされるのです。なかなか運動する時間がとれない人や腰痛のある人などは、イスに座った状態で、15分ぐらい足踏みをしましょう。それだけで、うっすらと汗をかいてきます」テレビを見ながらでもできるので、おすすめです。
「ストレスがあると、運動をあと回しにしがちですが、“元気になってからやろう”ではだめ。元気がないときこそ運動することで、腸も元気になります」
●食事は、決まった時間に食べる
過敏性腸症候群では、特に食べてはいけないものはありません。好きなものばかり食べず、栄養バランスがとれていることを大事にしつつ、ふだんから食物繊維を多めにとるように心がけましょう。
食事は、1日3食をできるだけ決まった時間に食べるようにします。食事の時間があくと、腸がぜん動運動を始めにくくなります。また、夜遅い食事、早食いやまとめ食いは、胃腸の負担になるので避けるようにしましょう。
1日のうちで、「とくに朝食を大事にして」と松枝先生はアドバイスします。
「胃と腸は連動しており、『胃結腸反射』といって、食べものが胃に入って拡張したときや、たんぱく質や脂肪が胃に入ったときに腸は動き出します。食事の前後で、腸の動きを調べた結果、朝食のあとがもっともよく腸が動くことがわかっています。特に、便秘型の人は、朝食をしっかり食べると、お通じがよくなります。
一方、下痢型の人は、食べると下痢をするんじゃないかという不安で、ますます下痢をしやすくなります。朝食には、“寒天”を食べるといいでしょう。食物繊維が多く、便を固める効果とともに、便をコチコチにしない作用があり、下痢と便秘の両方に効果があります」
食事が腸の動きのリズムをつくります。なるべく朝食後にトイレに行く時間を作って、排便のリズムを作りたいですね。
●発酵食品などで腸内環境を整える
過敏性腸症候群の人は、腸内環境を整えることも大事なことです。
「腸内には善玉菌と悪玉菌、日和見菌が一定の割合で共存しています。善玉菌が優位な状態では、免疫の働きも正常化され、風邪などの感染症に強くなり、老化も防ぎます。しかし、ストレスがあると悪玉菌が優位になり、日和見菌も悪玉菌に変わり、免疫力も低下し、便秘、下痢を起こしやすくなります。便秘や下痢でも悪玉菌が増えるため、悪循環に陥ってしまいます」
善玉菌を増やすには、乳酸菌がおすすめです。ヨーグルト、みそ、しょうゆ、納豆、ぬか漬けやキムチなどの発酵食品に多く含まれています。善玉菌の餌となるオリゴ糖もおすすめです。食物繊維は善玉菌の働きを助けます。
「おいしく食べて、お腹がいっぱいになれば、気持ちが豊かになり、ストレスにも対応できるようになりますよ」
過敏性腸症候群の改善には食物繊維をしっかりとろう
過敏性腸症候群は、ストレスによる自律神経の乱れで、排便にかかわる腸のぜん動運動がうまくいかなくなることで起こります。ぜん動運動が鈍くなると便秘に、逆に活発化しすぎると下痢になります。このぜん動運動の調整にひと役買ってくれるのが食物繊維です。食物繊維には、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類があります。
「そもそも腸のぜん動運動は、腸に内圧が高くなると起こり始めます。この内圧を高くするのが便で、それにはある程度のカサが必要です。不溶性食物繊維には、便のカサを増やす働きがあり、それが刺激となって、便秘の場合は、便が出るようになります。一方、水溶性食物繊維は、便の水分を吸収して固めてくれるので、下痢に効果があります」(松枝先生)
食物繊維のくわしい効用は次のとおりです。
●便秘型には、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維
・不溶性食物繊維は、便のカサを増やして、腸のぜん動運動を高める効果があります。
・水溶性食物繊維は、水分保持能力によって、便の水分量を増やし、コロコロ状の便をバナナ状の便に変えます。
●下痢型には、水溶性食物繊維
・水溶性食物繊維は、水様性の便の水分を吸収して、半流動状にします。腸における便の移動時間が長くなるため、形のある便にまとまります。
・特に、果物などに含まれるペクチンには、便をかためる働きがあります。
過敏性腸症候群で下痢や便秘に悩む人は、積極的に食物繊維をとるように心がけましょう。
さまざまな食品に食物繊維は含まれていますが、なかでも、松枝先生がおすすめするのは、寒天です。
「不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方が含まれ、便秘にも下痢にも効果があります。ちなみに、私は、毎朝、さいの目に切った寒天にバナナとヨーグルトを加え、メープルシロップをかけて食べています」(松枝先生)
効率のいい食物繊維のとり方は?
18~69歳の女性は、食物繊維は、1日18g以上を摂取することが推奨されています。
「食べものだけで、1日に必要な食物繊維がとれないときは、イヌリン、難消化性デキストリン(いずれも水溶性食物繊維)などが配合されたお茶類を飲んでもいいでしょう」と管理栄養士の金丸絵里加さんはアドバイスします。
食物繊維が多く含まれる食べものと1食あたりのグラム数は以下のとおりです。
不溶性食物繊維が多く含まれる食品
ゆでいんげん豆(60g) 7.1g
ゆで大豆(60g) 3.5g
おから(50g) 5.6g
枝豆 (10さや/50g) 2.0g
エリンギ (1本/30g) 1.0g
水溶性食物繊維が多く含まれる食品
アボカド(1/2個70g) 1.2g
オクラ (4本 40g) 0.6g
菜の花 (1/2束 60g) 0.4g
モロヘイヤ (1/2束 50g) 0.7g
なめこ(1袋 100g) 1.1g
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がバランスよく含まれている食品
ごぼう(1/2本80g) 4.6g
納豆 (1パック40g) 2.7g
焼き海苔(1枚3g) 1.1g
もずく(塩ぬき)(50g) 0.7g
めかぶ(生)(20g) 0.7g
わかめ(生)(20g) 0.7g
松枝先生もおすすめしていた寒天には、主に棒寒天と糸寒天、粉寒天の3種類があります。棒寒天と糸寒天はテングサ、粉寒天はオゴノリが原料です。1食あたりの食物繊維含有量は次のとおり。ローカロリーもうれしいポイントです。
糸寒天・棒寒天(5g)8kcal 食物繊維 3.7g
粉寒天(4g)7kcal 食物繊維 3.2g
寒天というと、みつ豆や牛乳かんといったスイーツを思い浮かべるかもしれませんが、味や匂いにクセがないので、ふだんの食事に手軽にとり入れられます。使いやすいのは、糸寒天や粉寒天です。
「糸寒天は、水でもどして、サラダに混ぜたり、和えものに使ったりできます。また、熱で溶けるので、スープやおみそ汁などには、そのまま入れてもOKです。粉寒天は、コーヒーや水など、毎日飲むものに小さじ1杯程度入れるといいでしょう。ご飯を炊くときに入れるのもおすすめ。もっちりとした食感になります」(金丸さん)
便秘型と下痢型。食事で気をつけたいことは?
便秘、下痢どちらかの症状が強いときには、食事においては、それぞれ次のようなことにも気をつけましょう。
<便秘が強い場合>
●食物繊維のとり方
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよくとることが大事です。基本的に食べてはいけないものはありませんが、「さつまいもは、腸内で発酵しやすいので、控えたほうがいいかもしれません」(金丸さん)
●食事のポイント
「食物繊維を含む食品と発酵食品や善玉菌のエサになるオリゴ糖などを組み合わせると、腸内環境が整い、便秘にはより効果的です」(金丸さん)
代表的な発酵食品は、キムチ、納豆、ヨーグルト、チーズなどがあります。オリゴ糖を含む食品は、玉ねぎやごぼう、アスパラガス、キャベツ、じゃがいもなどです。
<下痢が強い場合>
●食物繊維のとり方
「食物繊維を含む食品は、細かく刻んだり加熱したりして、とるようにします。たとえば、ごぼうなら、きんぴらごぼうのように炒めものにするよりも、だし汁をたっぷり使って煮込む筑前煮や炊き込みご飯にするのがおすすめです。めかぶやもずくなど、繊維が固くて量が多いものは、消化があまりよくないので控えたほうがいいでしょう」(金丸さん)
●食事のポイント
「下痢型の人にも、納豆や漬けものなどの発酵食品はおすすめですが、キムチの唐辛子や冷たいヨーグルトは、刺激になることがあります。油脂も少量にしたほうがいいので、揚げものよりは蒸したり焼いたりする調理法がよいでしょう。腸を冷やさないことも大切なので、スープや煮ものもOK。冷たいものは控えるようにします」(金丸さん)
QOLを左右する過敏性腸症候群。食生活に気をつけることで、症状を軽くすることができるので、試してみましょう。それに加えて、運動をとり入れて、規則正しい生活を送るなど、ストレスをためないようにすることも大切です。
取材・文/海老根祐子 イラスト/クロカワユカリ
監修
松枝 啓 先生
医学博士。さくらライフ錦糸クリニック名誉院長。
国立国際医療センター第一消化器医長、国立国際医療研究センター国府台病院院長などを歴任。消化器治療の第一人者。排便コントロール、過敏性腸症候群の研究で世界的な評価を得ている。現在は、研究活動を続ける一方で、医療の原点に戻り、さくらライフ錦糸クリニックにおいて、訪問医療を中心に、“地域の赤ひげ先生”として地域医療に貢献している。監修書に『食事療法はじめの一歩シリーズ 過敏性腸症候群の安心ごはん』(女子栄養大学出版部)等がある。
金丸 絵里加 先生
管理栄養士、料理研究家、フードコーディネーターとして活動中。栄養価計算(カロリー計算)や栄養指導、そしてその改善メニューの作成など、だれもが家庭で、楽しく、おいしく健康管理ができるような料理を提案したいと日々活動している。