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さまざまなライフスタイルの女性とピンクリボンのシルエット

乳がんと診断されたら―。早期発見・早期治療が大切だとわかっていても、実際に乳がんとわかったとき、戸惑いや不安を感じたり、病気と向き合うのが怖いと思う人は多いのではないでしょうか。そこで、今回は乳がんと診断されたときの留意点や治療のポイントについて、昭和大学医学部乳腺外科教授の明石定子先生にうかがいました。

監修
明石 定子

「標準治療」は現状のベストな治療法

患者の手を握り励ます女性医師の手元

乳がんはがんの大きさや広がり具合、リンパ節やほかの臓器への転移状況などによって0期~Ⅳ期までの5つのステージに大きく分類されます。

明石先生は「乳がんの大半はⅠ期、Ⅱ期の早期発見なので、きちんと治療すればがんを抑えられる可能性が高いものがほとんどです。一刻一秒を争うというよりは、状況をしっかり把握して、適切な治療を選ぶことで、10年生存率を伸ばすことができます。乳がんとわかったときはみなさんショックを受けますし、それは自然のことだと思います。でも、医療は日進月歩で、さまざまな治療法や選択肢があります。落ち着きを取り戻し、担当医を相談しながら治療方針を決めていきましょう」とアドバイスします。

主な治療法には手術療法、放射線療法、薬物療法の3つがあります。乳がんの最も基本的な治療は手術によってがんを取り切ることですが、患者さんの状態や年齢、がんの進行段階などに合わせて、それぞれの治療を効果的に組み合わせていきます。

「手術は乳房温存手術(部分切除)、全摘出手術があります。放射線療法は乳房温存術後、小さながんを根絶し、温存した乳房内の再発を防ぐために、手術後の乳房に放射線をかけていく場合や、骨転移の痛みをとるためにかける場合があります。薬物療法に関しては、乳がんがどのタイプかによって大きく違います。担当医と相談しながらご自身に合ったもので治療を行っていくのがいいでしょう」

ところで、よく聞く「標準治療」という言葉。患者さんのなかには誤解もあるようです。

「標準治療というと、『平均的』という意味にとらえ、高額な治療のほうがよいと誤解している方もいるようですが、標準治療は臨床試験のデータがしっかり蓄積されていて、“現状でいちばん最善だと考えられる治療法”を指します。だからこそ、保険適用にもなっているのです。治療方針を決める際は、標準治療を基本に考えていくのがベストです」

温存手術と全摘出手術、再建手術って?

胸のしこりをチェックする女性

ここでひとつ注意しなければいけないのが、必ずしも“早期発見=乳房を残せる”というわけではない場合もあるということです。

「がんが乳管という母乳を運ぶ管のなかにとどまっている場合は0期といって完全に切除すれば、ほぼ完治できる状態です。しかし0期で早期発見できたとしても、乳管に沿って広く広がっている場合は、全摘が必要なケースがあります。逆にII期であったとしても、乳管に沿った広がりがなければ、部分切除で乳房を温存できる可能性もあります。乳がんは手術の前後に再発転移予防として抗がん剤やホルモン剤を使う場合がありますが、もちろん、早期発見であればあるほど、これらの薬は不要となる確率は高くなるので、治すという観点、治療負担という観点からも早期発見は大事です」

また、部分切除でも乳房の変形が大きい場合や全摘手術を行った場合は「再建手術」を受けることが保険診療として可能になっています。再建手術にはシリコンバッグを入れる方法や、自分の体の一部から移植する方法などがあり、明石先生によると、全摘出手術をした人の半数程度が再建手術を受けているそうです。

授乳中や妊娠希望でも治療は可能…?

乳がんは若い世代でも発症リスクがあるため、授乳中や妊娠について不安を覚える人も少なくないはず。その際、考えておくとよい選択肢はあるのでしょうか。

「もし授乳中に乳がんが見つかっても、授乳でがんが赤ちゃんに転移するということはありません。ただ、抗がん剤やホルモン剤の治療を行う場合、薬の成分が母乳に混じってしまうため、授乳の継続はできません。また、これから妊娠を希望される方の場合には、抗がん剤治療で生理が止まることもあるので、パートナーがいる方は受精卵保存、パートナーがいない方は卵子保存という選択もあります。どうしても将来的に子どもを授かりたいという方は、医師と相談して検討してみてもよいかもしれません」

よりよい治療のために…

ピンクのTシャツにピンクリボンのバッチをつけた女性たち

乳がん治療は患者さんそれぞれの状態やライフスタイルなどに合わせて、さまざまな選択肢があるので、医師としっかり相談し、納得して治療を受けることが大切です。とはいえ、ほかの医師の見解を聞きたいと思うときもあるかも。そのようなときは「セカンドオピニオン」を受けてみることも可能です。

その際に大切なことは、何を聞きたいのか質問項目をまとめておくこと。

「自分が何を聞きたいのかきちんと整理していないと、せっかくのセカンドオピニオンの意義が半減します。また、自分の聞きたい答えをいってくれる医師と巡りあうまでショッピング的にあちこちの病院に行くということになると、時間だけがすぎ、治療が遅れてしまうことになります。いつかは病気と向き合い、決断しなくてはならないことなので、ご自身でもしっかりと乳がんへの理解を深めることが大切です」と明石先生。

インターネットにはたくさんの情報があふれていますが、なかには不安につけ込んだ根拠のない情報もあるため、やみくもに収集するのは禁物。

「いろいろな情報にふりまわされず、まずは乳がん学会や国立がん研究センターといった責任ある機関の情報サイトや出版物で情報を得ることをおすすめします。今は乳がんといっても仕事を続けながら治療もできる時代です。必要以上に不安にならず、担当医と相談しながら、ご自身に合う治療を見つけていきましょう」

イラスト/森 千章  取材・文/浜津樹里

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明石 定子

明石 定子

昭和大学医学部乳腺外科教授。1990年東京大学医学部医学科卒業。同大学医学部附属病院第三外科、国立がん研究センター中央病院外科などに勤務後、昭和大学病院乳腺外科准教授を経て、2019年より現職。日本外科学会指導医・専門医、日本乳癌学会乳腺専門医・指導医・理事、検診マンモグラフィ読影認定医師。

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