疲れをとる成分としてときどき名前が挙がる栄養素のタウリンは、アミノ酸の一種。新陳代謝を改善するような効果があるとされますが、その効果は幅広いようです。海外研究から、タウリンを摂取することで、腸内細菌を整えることにつながるという報告が。病原菌を防いで健康につながる可能性があるようなのです。
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タウリンの効果とは?
タウリンは、体の新陳代謝に関係するなどといわれますが、体内では脂肪の消化をうながす役割があると知られています。肝臓から腸に分泌されている胆汁酸とタウリンが結合して、コレステロールの排泄に関係したりするのです。このタウリンは、腸内で腸内細菌に分解されて微量な硫化水素を出し、これが病原体を抑える効果があると考えられていました。逆に、タウリンが少ないと、病原菌が腸内で増えやすくなるという見方もあります。要するに、タウリンが多いと、腸内環境がよくなる可能性があるのです。
米国の国立衛生研究所の研究グループは、タウリンを摂取することで、腸内にどのような変化があるのかを腸内環境で分析しました。動物実験によって、タウリンを摂取させたときに、健康状態がどのように変化するのかを調べたのです。
腸の機能によい影響を及ぼす
明らかになったのは、タウリンの影響によって、病原体の拡大を防ぐことができそうだということ。タウリンがあって、しかも腸内細菌が豊富に存在すると、やはり硫化水素がつくられて、病原体はなかなか増えないようでした。硫化水素は多すぎると毒性が強いのですが、ごく微量出てくることが体にはよい効果をもたらしてくれたのです。
これは裏を返すと、腸内細菌の興味深い役割ともいえます。「腸内細菌があると、病原体が増えづらいとわかっていたものの、そのメカニズムはよくわかっていなかった」と研究グループ。カギとなるのがタウリンかもしれないというわけです。なお、下痢や胃の調子を整える市販薬に含まれているビスマスおよびサブサリチル酸ビスマスを摂取すると、タウリンから硫化水素を生成できなくなります。このため病原体への防御力が弱まることもわかりました。これは薬の思わぬ好ましくない効果といえるかもしれません。
腸内細菌とタウリンが組み合わさることで腸が守られる可能性があるというわけです。栄養素を考えるときに参考にしていいかもしれません。
<参考文献>
NIH Scientists Identify Nutrient that Helps Prevent Bacterial Infection
https://www.niaid.nih.gov/news-events/nih-scientists-identify-nutrient-helps-prevent-bacterial-infection
Stacy A, Andrade-Oliveira V, McCulloch JA, Hild B, Oh JH, Perez-Chaparro PJ, Sim CK, Lim AI, Link VM, Enamorado M, Trinchieri G, Segre JA, Rehermann B, Belkaid Y. Infection trains the host for microbiota-enhanced resistance to pathogens. Cell. 2021 Feb 4;184(3):615-627.e17. doi: 10.1016/j.cell.2020.12.011. Epub 2021 Jan 15. PMID: 33453153.
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(20)31681-0
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33453153/