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甲状腺の超音波検査を受ける女性

甲状腺の病気の中で、甲状腺の働きが過剰になってしまうのが「甲状腺機能亢進症」。この治療には「放射性ヨード(ヨウ素)」という物質を使う方法が一般的ですが、この物質から出る放射線が甲状腺以外の体の部分に与える影響により、乳がんやほかのがんで死亡するリスクを高める可能性があるとの研究結果が報告されました。甲状腺の病気は女性に多いことからも懸念されます。


体内で吸収される放射線量を推算

人体内の甲状腺

このたび研究を報告したのは、米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立がん研究所(NCI)。
そもそも甲状腺の働きが過剰になってしまう「甲状腺機能亢進症」は、多くの場合がバセドウ病(または「グレーブス病」)と呼ばれるタイプの病気です。

甲状腺機能亢進症の治療法は3種類あり、放射能を持つ物質である「放射性ヨード(放射性ヨウ素)」を服用して甲状腺の細胞を破壊して減らす方法のほか、抗甲状腺薬を服用して甲状腺ホルモンを抑える方法、手術で甲状腺の大部分を切除する方法があります。
放射性ヨードを用いる方法は、米国では1940年代から広く利用されてきましたが、最近では減る傾向にあります。放射能に対する懸念から抗甲状腺薬による治療が増えてきているのです。そして最も少ないのが外科手術です。

研究グループによると、放射性ヨードについては、甲状腺がんの治療にも使われていて、体のほかの部分にがんができるリスクが高くなるという報告が出ていました。一方で、甲状腺機能亢進症の治療に使う放射性ヨードは、がんの治療と比べて量が極めて少ないため、がんのリスクについてはほとんど研究されていませんでした。

今回の研究では、米国と英国で甲状腺機能亢進症の治療を受けた3万6000人を1946年から70年近く追跡した大規模な研究のデータを使って、研究開始時にがんではなく、放射性ヨード治療を受けた1万9000人近くについて、がんのリスクを調べました。
放射性ヨードは大半が甲状腺に吸収されますが、治療中に乳房や胃などの組織や器官にも吸収されるため、最新の手法を使って体の各部が吸収する放射線量を推算しました。

吸収する放射線量に応じて死亡率が上がる

甲状腺を診察する様子

対象者1万8805人は大部分(78%)が女性で、93.7%がバセドウ病でした。
分析の結果、体の器官や組織が吸収した放射線量とその器官および組織のがんによる死亡との間には、吸収した放射線量が増えると死亡率が高くなるという関連性が見られました。

統計的に確かな関連性が見られたのは、女性の乳がんです。また、塊をつくる「固形がん」全体で見ても関連していました。
具体的には、各器官および組織が吸収した放射線の量が100ミリグレイ増えるごとに、乳がんでは死亡率が12%高くなり、そのほかの固形がん全体では5%高くなりました。なお、人体に影響がおよび始める放射線量は100ミリグレイとされます。

「乳がんやほかの固形がんによる死亡率の増加はわずかといえますが、米国では人口のおよそ1.2%が甲状腺機能亢進症であり、女性のほうがはるかに多いことを考えると、乳がんとの関連性は重要」と研究グループは述べています。
甲状腺機能亢進症の治療を考えるときには、今後、今回の研究が参考にされることになるでしょう。日本でも一般的な病気ですから、無縁ではなさそうです。

<参考文献>

NIH study finds long-term increased risk of cancer death following common treatment for hyperthyroidism
https://www.nih.gov/news-events/news-releases/nih-study-finds-long-term-increased-risk-cancer-death-following-common-treatment-hyperthyroidism

JAMA Intern Med. 2019 Jul 1. doi: 10.1001/jamainternmed.2019.0981. [Epub ahead of print] https://media.jamanetwork.com/news-item/what-is-association-of-radioactive-iodine-treatment-for-overactive-thyroid-with-risk-of-cancer-death/
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2737319

文/星良孝

星 良孝 <ステラ・メディックス>

星 良孝 <ステラ・メディックス>

ステラ・メディックス  専門分野特化型のコンテンツ創出を事業として、医療や健康、食品、美容、アニマルヘルスの領域の執筆・編集・審査監修をサポートしている。代表取締役の星良孝は、東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BP社において「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年に会社設立。

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