最近、夜のイベントなどに出かけると比較的若い世代の親が幼児を連れているのを見かけます。幼児健康度調査でも大人の生活リズムに引きずられて、子どもたちの夜型化が進んでいると報告が出ています。今回は、子どもの睡眠習慣について睡眠コンサルタントの友野なおさんに教えていただきました。
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子どもの健やかな成長と明るい未来を守る「睡眠習慣」の重要性
世界17か国で0~36か月児の養育者29,287名に行った睡眠に関するアンケート調査では、世界のどの国よりも日本の子どもたちの睡眠時間は短く、昼寝の時間も最短であることが明らかになりました。さらに、平成22年度幼児健康度調査報告によると、就学前の3人にひとりが22時を過ぎても起きているという報告があり、子どもたちも大人の生活リズムに引きずられて夜型化が進んでいるのです。
睡眠時には成長ホルモンが盛んに分泌され、脳内の神経ネットワーク形成や細胞の修復と育成、骨や筋肉形成が行われるため、幼児期の夜ふかしや睡眠不足は脳、体、精神の発育に悪影響を及ぼすと考えられます。
ひとつ例をご紹介しましょう。
都内近郊の幼稚園、保育所の5歳児クラスに通う幼児222名を対象に、2週間の睡眠記録と養育者へのアンケート、さらに、通常5歳時の課題としては妥当なレベルであると考えられている三角形模写を課す調査が行われました。
調査の結果、模写できた幼児は184名、描けなかった幼児は34名で、その後、睡眠・覚醒リズムの正常・乱れと三角形模写可能・不可能との関連をみるための解析が行われました。その結果、睡眠・覚醒のリズムが乱れている幼児は正常な幼児と比べ、三角形模写不可能のリスクが5.9倍も高かったのです。
さらに、3~5歳児の睡眠記録と養育者へのアンケート、担当保育者との面談調査を行った結果、睡眠が乱れている幼児は保育者が「気になる子ども」としてエピソードをあげた例が多いということがわかりました。
具体的には、「理由のない攻撃性」「無表情」などの情緒面の問題や、「机にひじをついて体を支える」「体操座りが長続きしない」などの姿勢、集中力、持続力、理解力に欠けるという問題、こだわりが強く人の気持ちに無関心などの問題との関連性がみられています。
また、アメリカの高校生における学業成績と睡眠習慣の関係について調べた結果では、就寝時刻の遅い子どもほど、また睡眠時間の短い子どもほど成績が悪いことが報告されているのです。
都内の保育園に通う2~5歳児クラスの保護者を対象とした調査によると、母親の起床・出勤・帰宅時刻が子どもの就床時刻の遅延に大きく影響していることが明らかになっています。
幼児期を過ぎて青年期に入ったあとも、子どもの生活基盤は家庭であるため、まずは親である自分自身が適切な睡眠スケジュールを守る生活を維持したうえで、子どもに対して睡眠習慣と睡眠衛生の指導をしっかりと行うことが、子どもの健やかな成長と明るい未来を守るうえで非常に重要です。
アメリカ国立睡眠財団は適切な睡眠時間として、新生児(0〜3か月)では14~17時間、乳児(4〜11か月)では12~15時間、1〜2歳では11~14時間、3〜5歳では10~13時間、6〜13歳では10~11時間、14-17歳では8.5~9.5時間を推奨しています。
ぜひ参考にしてください。