紫外線はシミやシワ、毛穴の開きなどあらゆる肌老化につながります。日々のUVケアは、健康で美しい肌を保つためには欠かせません。しかし、日焼け止めの過剰な使用が肌ダメージの原因になることも…。今や一年中、必須といわれる紫外線対策について、形成外科専門医の西嶌順子先生と暁生先生に、肌にやさしい紫外線ケアについてお聞きしました。
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日常使いなら「紫外線散乱剤」の日焼け止めがオススメ
紫外線によって発生する活性酸素は、肌のコラーゲンを減少させ、メラノサイトの活動を促します。これによってメラニン色素が増え、DNAが紫外線から受けるダメージを防いでいますが、沈着するとシミになるそうです。紫外線は、細胞に直接ダメージを与える作用もあります。A波は真皮まで到達し、コラーゲンやエラスチンを変性させ、シワやたるみの原因となります。B波は表皮に届き、赤くヒリヒリするような炎症を起こし、シミやそばかすの原因となります。
「紫外線対策として日焼け止めの使用が挙げられますが、肌のためには『どんな成分を選ぶか』が重要です。日焼け止めの成分は『紫外線吸収剤』と『紫外線散乱剤』の二種類に分類され、肌への負担の軽さで考えるなら、『紫外線散乱剤』の使用がオススメです」(順子先生)
「紫外線散乱剤」は、金属を酸化させた粉や細かい粘土質の粉などが用いられた日焼け止めのこと。物理的に紫外線を跳ね返すことで、肌を紫外線から守ってくれます。ノンケミカルなので、かぶれなどの症状が起きにくく、肌の弱い方に向いているそうです。
一方で「紫外線吸収剤」は、化学物質が紫外線のエネルギーを取り込み、熱などの別エネルギーに変換する働きがあります。場合によっては、かぶれやアレルギー反応が出ることもあるため注意が必要です。
「SPFとPAの数値が高くなるほど、日焼け止めとしての効果は強まります。しかしその分、化学成分の含有量も高くなるため肌の負担もアップ。日常使いなら、SPF20〜30のものを選ぶといいでしょう」(暁生先生)
日焼け止めを選ぶときは、「肌によい成分」と「肌によくない成分」が含まれていることを理解し、シーンに合わせた強度のアイテムを使うようにしましょう。また、口コミや話題性に惑わされず、成分表示をしっかりチェックして選ぶのが、肌のためには賢い選択と言えそうです。
【紫外線散乱剤の代表例】
・酸化亜鉛
・酸化チタン
・酸化鉄
「汗に強いウォータープルーフタイプの日焼け止めは、落ちにくく、クレンジングの際に肌を傷めてしまうため普段使いにはなるべく使用を控え、帽子やサングラスなどで紫外線を避ける物理的対策を基本にするのがオススメです」(順子先生)
日焼け予防にはパウダーファンデーションの使用も効果があり、ファンデーションの色粉が、紫外線散乱剤と同様の働きをしてくれるそう。ちょっとした外出時には、パウダーファンデーションと日傘や帽子の対策のみでもいいそうです。
週一回、10分間のスペシャルケア!「ヨーグルトパック」で美肌菌を育てよう
肌へのダメージを回復させるためにも、肌の常在菌のバランスを整えることが大切と話す西嶌夫妻。特に美肌菌と呼ばれる「表皮ブドウ球菌」を育てることがポイントだそうです。オススメの方法として、ビフィズス菌を活用した「ヨーグルトパック」を紹介してもらいました。
「ヨーグルトパックの方法は、無糖のプレーンヨーグルトを肌に塗り、5〜10分置いてからぬるま湯で洗い流すだけ。ピーリング効果もあるため、週1〜2回程度で行いましょう」(順子先生)
ヨーグルトが腸内環境にいいことは知られていますが、肌の常在菌にもいい効果を発揮してくれるそうです。また、ヨーグルトの上澄み「ホエイ」を利用する場合は、美容成分などが配合されていない、乾燥したシートフェイスマスクに染み込ませて使いましょう。
シミ対策は「美白」よりも「ターンオーバーの改善」が鍵!
30代後半になると、「シミが急に増えてきた」と悩む人も少なくないでしょう。若い頃にシミができにくいのは、新しい肌に生まれ変わる「ターンオーバー」が整っているから。しかし、加齢や間違ったスキンケアによる肌ダメージが、ターンオーバーのリズムを乱し、シミを定着させてしまうそうです。
「紫外線によってできたシミは、肌のターンオーバーが正常であれば、徐々に薄くなっていきます。しかし、紫外線などで細胞がくり返しダメージを受けたり、加齢によってターンオーバーが滞ってくると、シミとして局部的に残ります。シミをケアしたいのなら肌のターンオーバーの改善に力を注ぐことをオススメしたいです」(暁生先生)
「肌を構成するほとんどが表皮や真皮、皮下脂肪であるにもかかわらず、表面の角質層のケアしかしていない人が多いです。保湿剤や美容液などのスキンケアが影響するのは表面の角質層のみ。それより深い層には浸透しません。肌本来の健康のためには、インナーケアやマインドケアで、表皮の深い層や真皮にアプローチすることも大切です」(順子先生)
肌細胞のターンオーバーは、20代では「約28日」といわれていますが、加齢とともに徐々に延びていき、30代後半になると「約40日」になるそうです。ターンオーバーのリズムを正常に保つためには、スキンケアの見直しだけでなく、腸内環境や生活習慣の改善も必要とのこと。美肌は1日にしてならず。さまざまな角度から、健やかで美しい肌を目指していきましょう!
次回は、腸内環境の改善から美肌づくりを目指す「インナーケア」についてお話を聞いていきます。
監修
西嶌順子(にしじま じゅんこ)
形成外科専門医。「恵比寿形成外科・美容クリニック」院長。シミやたるみなどの美容の悩みから美容婦人科系の悩みまで幅広く対応。女性医師として、また2児の母としての経験から、患者の気持ちに寄り添った治療を行う。著書に『「無駄なケアをやめる」から始める 美肌スキンケアの新常識大全』(宝島社)などがある。
西嶌暁生(にしじま あきお)
医学博士、形成外科専門医。筑波大学附属病院形成外科で、創傷治癒、外傷、再建、美容外科及び美容皮膚科を専門とする臨床医として従事。2019年、「恵比寿形成外科・美容クリニック」の副院長に就任。翌2020 年、株式会社ZAIを設立。著書に『だから夫は35歳で嫌われる~メンズスキンケアのススメ~』(光文社)などがある。
取材・文/佐藤有香