肌寒さを感じる季節。背中や脚、腕……体のあちこちがむしょうにかゆくなることはありませんか。この時期のかゆみと対策について、ひふのクリニック人形町の上出良一院長にうかがいました。
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■かけばかくほどかゆくなる理由
寒い季節に、体に感じるかゆみ。原因は、ズバリ肌の乾燥です。肌の表面にある角層は、刺激やアレルゲンから肌を守るバリアの役目を果たしていますが、空気が乾く季節は、角層の水分も蒸発してしまい、乾燥してカサカサになりがち。バリア機能も低下してしまいます。
人間の体にとっては、肌がカサカサになることも“異常事態”。そこで、関係してくるのが、かゆみを脳に伝える「c線維(シーセンイ)」というかゆみ神経です。
「肌が乾いて角層が荒れ、バリア機能が低下すると、“異常事態”を察知して、本来、表皮の下にいるはずのかゆみ神経が、肌の表面近くまで伸びてきます。それによって、汗、衣服のこすれ、温度差など、ちょっとした刺激でもかゆみが起こるようになるのです」
いったんかきはじめると、どんどんかゆくなって、かけばかくほどかゆくなる、という悪循環に陥ることもあります。かゆいところをかくのは気持ちいい反面、肌を傷つけています。そのとき、細胞から炎症を促す物質やかゆみ物質が出てくるのです。これが、かけばかくほどかゆくなる理由です。肌バリアも壊れてしまうので、刺激物やアレルゲンが侵入しやすくなり、傷がジュクジュクするなど炎症が起こることもあります。
■がまんできないかゆみには、冷やすより保湿
では、肌の乾燥が原因で、がまんできないかゆみを感じたときは、どうすればいいのでしょうか。
「保湿剤を塗るといいですね。ボディローションやボディクリームがおすすめですが、なければハンドクリームでもOKです。虫さされのかゆみなどは、一時的に冷やすと収まりますが、乾燥によるかゆみは水分を奪ってしまい、逆効果になることもあるので、冷却は避けましょう」(上出院長)
日頃の肌ケアも大切。ボディローションやボディクリームを塗って、乾燥を防ぐことも大切です。「朝とお風呂上がりの一日2回つけるのがポイント。入浴時はお湯が皮脂を流してしまうので、お風呂上がりは必須です。ローションやクリームは汗と混じると肌トラブルを起こすことがあるため、汗が引いてからつけるようにします」と上出院長。
保湿以外の乾燥・かゆみ対策をまとめると―――
・体を洗うときは、ナイロンタオルなどでごしごし洗わない。
「肌を傷つけ、バリアが壊れてしまいます。石けんをよく泡立て、その泡で体をなでるだけで、洗浄効果は十分です」(上出院長)
・ひざ下のムダ毛処理の後にも保湿を
「ひざから下は、血行がよくないため、乾燥が気になる箇所。ムダ毛をかみそりで剃る場合は、剃毛後にボディローションやボディクリームでしっかり保湿を」
■あったか下着もかゆみ原因に
また、かゆみで注意したいのがブツブツを伴うときです。「近年、カビ菌の増殖によるマラセチア毛包炎(癜風)がみられる女性が増えています。もともと毛包に常在するカビ菌ですが、高温状態が続いたりすることで増殖して、発症します。よくできるのは背中で、赤いニキビのようなブツブツが特徴です」(上出院長)
その原因として、保温効果の高い機能性下着の影響が考えられるそうです。
「屋外で着用する分には一枚でも温かくて便利ですが、人によっては室内では過剰な保温になってしまいます」(上出院長)
あったか下着は冬のマストアイテムですが、下着ゆえに暑くなっても着脱による温度調節がしにくいのが難点。屋外から屋内へ入ったら着替えられるのがベストですが、なかなかそうもいきません。「せめて、寝る時の着用は控えましょう」と上出院長はアドバイスします。
取材・文/海老根祐子