体を極限まで駆使し、超人的なパフォーマンスでつねに私たちに感動を与えてくれるアスリートやダンサーたち。
ゲストに、日本を代表するトッププリマの上野水香さん、プロフィギュアスケーターの浅田真央さん、元バレーボール女子日本代表の栗原恵さんを迎え、日々のたゆまぬ努力に裏打ちされた、美ボディをつくる秘訣をご紹介します。
前回の「食生活」に続き、今回は、しなやかな筋肉がついたすっきりボディを維持するために行っているエクササイズや運動について伺いました。
新型コロナウイルスやインフルエンザの蔓延により、外出することもままならない状況ですが、おうちに居ながらとり入れられるものもたくさんあるので、ぜひ参考にしてみてくださいね!
Contents 目次
上野水香さん(東京バレエ団 プリンシパル)
ジムでインナーマッスルを強化。
踊りがより安定してきたのを実感しています
――<食生活編>では、ジムに通われているとおっしゃっていましたが、ジムではどのようなトレーニングをされているのでしょうか?
基本的には、まずウォーキングマシンで歩いて、そのあとダンベルを使ったトレーニングをしています。
ダンベルは、腕を鍛えるというよりも、インナーマッスルを鍛えることが目的です。その際に注意しているのが、腹筋を意識しながら行うこと。ダンベルを持って腕を上下に動かそうとすると、腕の動きにつられてわきや腰まわりに力が入り、上半身が動いてしまいます。そうなると、インナーマッスルに負荷がかからなくなってしまう。
そこで、できるだけ上半身を固定し、腹筋あたりに力を入れるよう意識して、腰まわりの筋肉をなるべく使わないよう心がけています。
――ダンベルは二の腕を鍛える動きが多く、あまりインナーマッスルに負荷をかけられるイメージがないのですが、どのようにすれば負荷をかけられるのでしょうか? 私たちでもできる方法があればぜひ教えていただきたいです!
ひとつ、白鳥の湖のアームスの動きでやってみましょうか。
ダンベルを持って、白鳥の羽ばたきのように腕を前後に腕を動かします(上野さん実演中)。もちろん、ダンベルの重さで二の腕を引き締める効果もありますが、お腹の中あたり(丹田付近を指して)を意識すると、インナーマッスルを使うことができます。
その際、ダンベルを肩より上の高さまで持ち上げてしまうと、肩や腕に筋肉がつくため、肩より低い位置で上下に動かすのがポイント。
常に、背すじをまっすぐ保ち、ひじを使う感覚でダンベルを持って、腕を上下に動かしたり、腕を動かしながら、腰をゆっくり少しずつひねったりすることで、お腹の奥の部分に力が入る感覚がつかめると思います。
――ほかにジムで行っているトレーニングはありますか?
ウォーキングマシンとダンベルにプラスして、ときどき、バランスボールに座って上体を徐々に横に倒していく動きで体幹を鍛えたり、床の上でピラティスの動きをしたりすることもあります。ピラティスは、以前何度かレッスンを受けて動きを覚えたので、今はひとりで行うようになりました。
あとは、最近とり入れているのが、バランスボードに乗ってバランス感覚を鍛えること。ボードの上で、パッセ(※1)やデヴェロッペ(※2)、アラベスク(※3)などをするようにしています。
※1…バレエの動きのひとつ。軸脚をまっすぐに伸ばしたまま、動かす脚はひざを曲げながら真横に上げていき、上げた脚のつま先を軸脚のひざにつけて、脚で三角形を作った状態でバランスをとるポーズ。正確には、パッセ・ルティレ。
※2…上の写真のように片脚で立ち、もう片ほうの脚を上げながら前後に伸ばす動き。
※3…軸脚をまっすぐに伸ばし、動かすほうの脚はひざを横に向けたまま、後方へまっすぐ上げていくポーズ。(プロフィール写真を参照)
――バランスボードの上で、ですか!?
はい、ボードの上で(笑)。でも、なかにはかなりすごい方がいて、ルルヴェ(※4)やポアント(※5)で乗るんですよ(笑)。Instagramなどでもすごい写真がアップされていてびっくりします。
私の場合、そこまではしませんが、毎回、パッセ、デヴェロッペ、アラベスクの3つは行うようにしています。
そのようなバランスをとりにくい場所で、バランスをキープするような動きを続けていると、コアが鍛えられて、レッスンや稽古でも踊りがこれまで以上に安定するようになりました。
※4…つま先立ちした状態。
※5…トウシューズをはいて、つま先で立った状態。
――ジム以外で行っているものはありますか?
お散歩が好きで、家の周りをよく歩いています。近所に坂や階段がとても多いので、ちょうどいいエクササイズになるんです。家に帰るためには必ず坂道を通るので、家と駅を往復するだけでもかなりの運動に(笑)。
基本的には毎朝30分くらい歩きます。ジムとはまた違い、景色を眺めながら歩くのが楽しくて。時間があるときは、夕食後にお散歩がてらお茶をしに出かけることもあります。
つねに「軸」を大切にしています。
軸が定まることで、踊りもボディラインも精神もいい状態に
――つねに体の声を聞きながら、食事をとられているというお話がありましたが、体づくりにおいても、日々ご自身の体と向き合っていらっしゃると思います。美しく踊るために、気をつけていること、もしくは大切にしていることがあれば教えてください。
私は、自分の「軸」というものをとても大切にしています。
例えば、スッと片足で立ったときに、少しでもフラフラすると、「あ、今は軸がない」ということがわかります。
そういうときは、踊っていてもバランスをうまくとれないので、動きが冴えないですし、「今日はなんだか軸が定まらないな」と思うだけで、気持ちの面でもパワーダウンしてしまいます。
なので、踊りにおいても、精神的な部分においても、自分の「軸」をしっかり持つことがとても大事です。
軸がある・ないということは、ボディラインにも影響してきます。
軸がブレているときは、外側の筋肉を使って無理にバランスをとろうとするので、その状態で踊り続けると、あまりついて欲しくない部位に筋肉がついてしまいます。バレエは美しく踊ることも大切ですが、目線や手脚の角度、ボディラインなども含めて「芸術」なので、筋肉のつけ方もとても重要です。軸をしっかり定めることができれば、余分な筋肉を使わずにすみますし、ボディラインをキレイに見せる部分に筋肉がつきます。
「軸」というのは、踊るうえでも、精神面でも、体型をキープするという点においても、私にとって重要なバロメーターのひとつになっています。
――ちなみに、「軸があるか、ないか」というのは、踊る前にわかるものなのでしょうか?
もちろんです。私の場合は、ただ単に片足で立つだけでわかります(笑)。
朝起きてすぐに、片脚を軽く持ち上げた状態でしばらくキープすると、だいたいその日の自分の軸の状態がわかります。少しぐらぐらしてしまうときは、先にお話ししたトレーニングをとり入れて自分で調整し、きちんと安定する状態にまでもっていきます。
これは私だけではなく、みなさんにも当てはまる確認方法だと思うので、とくに軸や体幹を意識されている人は実践してみることをオススメします。
毎朝、右足だけで立ってみたり、左足だけで立ってみるというのを、10秒ずつでもいいので行ってみてください。これをくり返していくうちに、軸がある・ないだけでなく、「あ、軸はココにあるんだな」という自分の「軸」の感覚がつかめてくるようになり、体幹のトレーニングにもなりますよ。
くり返しになってしまいますが、私の場合、軸がしっかり定まると、ムダな力や筋肉を使わずにいろいろな動きがとれますし、余計なところに筋肉もつきませんから、心身の安定につながります。
上野水香さんの美ボディの秘訣<フィットネス編>
- ウォーキングマシンで歩く
- ダンベルでインナーマッスルを強化
- バランスボールやピラティス、バランスボードで軸トレ
- 毎日30分程度は自宅の近くを散歩する
- 毎朝片脚で立ち、その日の軸の強度を確認する
上野水香(うえの・みずか) profile
5歳よりバレエを始める。1989年埼玉全国舞踊コンクール、ジュニアの部第1位。93年、15歳でローザンヌ国際バレエコンクールにてスカラシップ賞を受賞した後、モナコのプリンセス・グレース・クラシック・ダンス・アカデミーに2年間留学。主席で卒業後、帰国し、古典全幕作品やローラン・プティ作品に数々主演。2004年、東京バレエ団に入団。『ドン・キホーテ』キトリ、『白鳥の湖』オデット/オディール、『眠れる森の美女』オーロラ姫、『ラ・バヤデール』ニキヤ、『ジゼル』ジゼルなど、数々の作品で主演。故モーリス・ベジャールの名作『ボレロ』では、日本人女性でただひとり“メロディ”を踊ることを許されたダンサーとしても知られる。著書に『上野水香―バレリーナ・スピリット』『MIZUKA バレリーナ上野水香のすべて』(ともに新書館)などがある。
撮影/松橋晶子 取材・撮影協力/チャイコフスキー記念東京バレエ団 取材・文/FYTTE編集部
次は浅田真央さんの美ボディづくりのフィットネス事情をご紹介!