ふわふわのオムレツ、とろとろの親子丼、ケーキにクッキー、おいしい料理にたまごは欠かせない存在です。また、たんぱく質補給として筋トレやダイエット中の方にも好まれていますね。一方では「たまごを食べすぎないように気をつけている」という話をよく耳にします。理由を尋ねると、「コレステロールが高いから」という答えが返ってくるのです。今回はたまごとコレステロールの関係について食品成分表を用いて調べてみました。そして1日何個まで食べてもよいのか、という気になる疑問について考えていきます。
Contents 目次
コレステロールとは?
そもそも、コレステロールとはどんな栄養素でしょうか? コレステロールは脂質の1種であり、動物性食品のみに含まれているというのが特徴です。
コレステロールの働きは主に4つとされています。
<1>体の細胞膜の原料となる
<2>代謝に関わるホルモンの原料となる
<3>脂肪の消化吸収に役立つ胆汁酸の原料となる
<4>体内でのビタミンDの合成の原料になる
これらの働きを知れば、コレステロールはわたしたちにとって必要不可欠であるということがおわかりかと思います。しかし、コレステロールは体内で合成することができるというのもポイントです。もし食事からの摂取量が多い場合は合成を調整しバランスをとる仕組みがわたしたちの体には備わっているのです。
コレステロールの不足と過剰
体内での合成を調整することができるとはいえ、やはり食事バランスが崩れた生活が続くと体も対応しきれなくなってしまいます。コレステロールが不足すると細胞膜や血管が弱くなったり、免疫力が低下したりする可能性が考えられています。
一方で、とり過ぎは脂質異常症や心筋梗塞などのリスクが高まります。ただし、コレステロール「だけ」たくさん摂取しているのではなく、飽和脂肪酸(※1)のとり過ぎや野菜不足、運動不足などの多くの要因がこれらの疾病を引き起こすと考えられます。
(※1)飽和脂肪酸……血液中のコレステロール上昇に関与する栄養素です。動物性食品のうち、ラードやバターなど家畜由来のものに多く含まれています。
たまごに含まれるコレステロールは?
たまご1個当たりのコレステロールは約223mg、卵白にはまったく含まれていません。そのほか、たまごと同等程度含まれる食材を一覧にしました。
いかがでしょうか、これらの中ではたまごが最も身近な食品ではありませんか? たまごにはコレステロールが多く含まれるというのは事実といえますね。
世界中で行われている研究でも、食事由来のコレステロール摂取量を調査する際に試料としてたまごが多く用いられています。「ししゃもを毎日5本食べる」よりも「たまごを毎日1個食べる」ほうが実施しやすいからでしょうか。
たまごは1日何個まで?
さて、数ある研究の中でたまごの摂取量を1日に2個以上とした研究はほとんどなく、具体的な摂取量を示すことができないというのが現状です。厚生労働省が定める日本人の食事摂取基準(2015年版)以降ではコレステロールの目標量が撤廃されました。これは、目標量を定めるための明確な科学的根拠がないことが理由と示されています。同時に「許容されるコレステロール摂取量に上限が存在しないことを保証するものではないことに強く注意すべきである」とも記されています。
【上限を決めるのは難しいが、どこまでも許容されるというわけではない】というのが現在の答えなのです。1日何個まで、の答えがでるのはまだ先のことになるでしょう。
1個以上食べてはいけない、という決まりはありません。体の調子や前後の食事で調整しながらおいしく召し上がってください。“コレステロール値が気になる方”は、たまごだけではなく、どのような食品にコレステロールや脂質が多く含まれているのかを見直してみるのもいいかもしれません。
<参考>
・日本食品標準成分表2020年版(八訂) 文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html
・日本人の食事摂取基準(2020年版) 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
・栄養の基本がわかる図解辞典,中村丁次,2020,成美堂出版
・データ栄養学のすすめ,佐々木敏,2018,女子栄養大学出版部