紫いも、ブルーベリーなどの野菜や果物に、紫色の鮮やかな色を与えている天然色素であるアントシアニン。これはポリフェノールの一種で、抗酸化および抗炎症作用など、体によい効果をもたらします。さらに最近の海外研究により、アントシアニンが糖尿病を予防する可能性があることがわかってきました。しかも、アントシアニンを含む野菜や根茎は、アントシアニンを含む果物に比べて、より強い糖尿病予防効果があるようです。
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種類の違いで予防効果に差?
アントシアニンは植物に含まれるカラフルな色素で、植物に独特の色彩を与えています。アントシアニンにはさまざまな分子構造があり、それが色の多様性を生み出しているのです。さらに、この分子の組み合わせ方や比率が植物によって異なるため、植物の色や性質が多様であることが説明できます。分子構造の違いのひとつは、アントシアニンの化学的性質に影響を与える「アシル化」という化学反応が起こるかどうかです。
アシル化タイプのアントシアニンは紫キャベツや紫いも、なす、黒豆などの野菜・根茎類に多く、アシル化が起きていない(非アシル化)タイプはブルーベリーやいちごなどのベリー類やぶどう、カシスといった果物に多く見られます。
アントシアニンは抗酸化作用と抗炎症作用に加えて、エネルギー代謝と腸の健康によい影響を与えると考えられていて、過去の研究から、糖尿病予防効果も示されています。ただそういった研究のほとんどは、非アシル化タイプのアントシアニンを調べていたものでした。
そこで今回、フィンランドの研究グループは、これまでのいろいろな研究結果にあたって両タイプの違いを詳しく検討。糖尿病を防ぐ効果について調べてみました。
吸収や代謝に違いあり
こうして研究で確認されたのが、アントシアニンの両タイプの間には吸収や代謝のされ方に違いがあり、アシル化タイプのほうが糖尿病を防ぐ効果が強そうということです。
アシル化タイプは非アシル化タイプより抗酸化作用が強く、腸のバリア機能を改善しながら栄養素の吸収をよくする効果がありました。そのうえ、悪玉菌が増えないようにして腸内細菌を正常に保ち、炎症を抑えて、糖と脂質の代謝を調節するという結果でした。
アシル化タイプのアントシアニンは吸収されにくく、腸まで届き、プロバイオティクスとして作用することで糖尿病の予防につながると考えられています。しかし、研究グループは、今回の研究から明確な結論を導き出すことはまだ難しく、特に人間において2種類のアントシアニンの効果を比較するためにさらなる研究が必要であると指摘しています。
以上がアントシアニンの糖尿病予防効果を調べた研究結果です。この研究結果はまだ決定的なものではありませんが、アントシアニンを含む多くの野菜は健康によいことが知られています。ですから糖尿病予防効果の有無にかかわらず、毎日の食事にとり入れるとよいかもしれません。
<参考文献>
Violetteja perunoita korissa, yksi halkaistu puoliksi niin, että violetti sisus näkyy.Purple Vegetables and Tubers Have Antidiabetic Properties
https://www.utu.fi/en/news/press-release/purple-vegetables-and-tubers-have-antidiabetic-properties
Chen K, Kortesniemi MK, Linderborg KM, Yang B. Anthocyanins as Promising Molecules Affecting Energy Homeostasis, Inflammation, and Gut Microbiota in Type 2 Diabetes with Special Reference to Impact of Acylation. J Agric Food Chem. 2023 Jan 18;71(2):1002-1017. doi: 10.1021/acs.jafc.2c05879. Epub 2022 Dec 14. PMID: 36515085; PMCID: PMC9853865.
https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.jafc.2c05879