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苦しくも楽しんだ節約料理、お弁当作り、夫婦の氷河期も!?「藤井定食」への食のプライベートヒストリー【料理研究家 藤井恵さんの美と元気の秘訣・第1回】

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藤井恵先生

子育て、家事、料理研究家の仕事で猛烈に忙しい毎日を走り続け、さらに夫婦の氷河期や更年期も乗り越えて今年57歳を迎えられた藤井恵さん。そんな藤井さんのプライベートの献立を紹介しているのが『THE 藤井定食』(ワン・パブリッシング)です。トレイにいろいろな小皿のおかずが美しく並び、栄養バランスもとれていて作るのも食べるのも楽しそう! この定食にたどり着くまで、藤井さんにはどんな家族、仕事、食のヒストリーがあったのか、メディアであまり語られることのないプライベートのお話を聞かせていたただきました。

Contents 目次

20代の頃から心の中にあった、小皿のおかずが美しく並ぶ「定食」へのあこがれ

鶏の唐揚げ定食

上の写真は、『THE 藤井定食』(ワン・パブリッシング)で紹介されている「鶏のから揚げ定食」です。

レシピページ

一見、品数が多くて手間がかかりそう…と思いきや、レシピを読んでみると1品1品の材料が少なくて作り方もシンプル! たとえば、野菜、きのこ、海藻の“下ごしらえストック”を活用して時短調理をしていたり、冷やしトマトは切ってバルサミコ酢をかけるだけだったり。また、鶏のから揚げの下味には酢が使われ、薄味でもおいしく仕上げる健康のためのワザもあります。

藤井定食とは

さらに、トレイ(折敷、お盆)やいろいろな形、色の器のコーディネート、見た目にもおいしそうで満足度が高い盛りつけ方など、参考になることばかりです。

「でも、子育てや仕事が忙しいときは、このような定食はできなかったんです」と、藤井さん。

「旅館の朝ごはん、家庭料理のお店のランチ、居酒屋などでトレイにいろいろな小皿や小鉢の料理が並んでいるのが大好きで。あぁ、料理ってこういうのが楽しいんだよね。いつか自分もやってみたいなと、あこがれ続けていました。子どもが小さいときも食事を素敵にしたかったけれど、クロスを敷いてもザッ!と引っ張ってこぼされたりするので(笑)。当時はランチョンマットも敷いていませんでした。でも、いつか子育てが一段落して余裕ができたらやってみたいなと、トレイや器を少しずつ集めていました」

 

超貧乏だった頃の節約レシピが、食材をムダなくおいしく料理する原点に

藤井さんは、大学在学中から恩師のもとで料理番組のアシスタントの仕事をし、22歳で結婚。3年後に長女を出産してからの約5年間は専業主婦でした。料理研究家の仕事をスタートしたのは30歳を過ぎてからで、原点は20代の専業主婦の頃の節約レシピだといいます。

「夫は自営業なのですが、独立したときにバブルがはじけて仕事が減り、貯蓄もなかったので20代の頃は超貧乏だったんです。お金が全然なくなって実家に居候するようになり、ほんの少しの収入でどうすれば食費を切り詰められるかを考えて、毎日の献立や娘の幼稚園のお弁当のレシピをノートに書き続けていました」

安く買える食材をどう料理すればおいしくなって家族の満足感も得られるか? 当時、藤井さんは「いつか料理の仕事がしたい」という夢を持ち続けながら、節約レシピの工夫を楽しんでいました。

「たとえば、食材を3つしか買えなかったらどうするか。食材3つを使って1品作るのではなく、食材1つを1品ずつ別々のお料理に展開していくと3品できます。そうすると、貧しい感じがしないんです。また、安い見切り品や、鶏むね肉、豚の切り落とし肉、もやしなどの安価な食材でも、調理でひと手間かけるとおいしくなります。大根1本を丸ごと買ってきて葉っぱから皮までムダなく使い切るにはどうするか、キャベツも芯までどうやったらおいしく食べ切れるかを考えました。この頃はつらさもあったのですが、節約を半分楽しんでいました。意外にそのときの経験が料理研究家の仕事でとても役立っていて、今ならもっと上手に節約できる気がします(笑)」

 

娘たちのお弁当作りから、気楽に作れる「藤井弁当」が誕生

そして、主婦向けの雑誌に節約料理が取材されたことをきっかけに、30代から料理研究家の仕事をはじめた藤井さん。多忙な日々の中、毎朝早起きをして2人の娘さんが幼稚園から高校まで15年近くお弁当を作り続けてきました。

「“暮らし”の中から、というとおしゃれなんでしょうけど、“生活”の中でどうすればこのつらくて苦しい毎朝のお弁当作りを気楽にできるか考えたんです(笑)。とにかく時短でムダなく作るために、おもな材料は3つ、卵焼き器のフライパン1つでおかず3品を作る『藤井弁当』(Gakken)のスタイルになりました」

はじめに卵焼き器でお湯を温めて副菜の野菜をゆで、次に卵焼きを焼き、最後に主菜(肉か魚)を作るのが藤井弁当の作り方です。

「別の鍋で湯を温める手間なくゆで野菜ができて、フライパンが汚れにくいおかずから作っていくと、そのつど洗う手間がなく、フライパンが温まっているから卵焼きもすぐに焼けるんですよ。作り置きおかずを作る余裕もなかったので、当時から野菜の下ごしらえストックもしていました。次女も節約家なのですが、社会人になってからは自分でお弁当を作って職場に持っていくようになりました」

 

残り物を切るだけ、食卓で座って作れる「鍋料理」の夕食の日々も

撮影のための試作料理が夕食の食卓に並ぶ日、余裕がないときは残りもので作れる鍋料理の毎日が続いたときもあったそう。

「月火水木金まで料理撮影の残りもので作る鍋料理のときもありました(笑)。鍋料理と主食(ごはん、または麺)で、副菜はなし。鍋は材料さえ切ってしまえば座って卓上調理ができて、肉・魚(たんぱく質)、野菜、きのこなどいろいろな食材を使うから栄養バランスもとれます。鍋のベースの味をみそ、しょうゆ、塩のローテーションにしていました」

料理研究家の仕事は撮影で料理を作るだけではなく、試作やレシピ書き、撮影前は食材の買い出しや下準備、撮影後もレシピ書きや原稿校正などの作業もあり、頭も体もフル回転で動かさなければいけません。

「仕事量が多いときは午前3時~4時の暗いうちに起きてレシピを書いて、それから家族の朝ごはんとお弁当を作って、撮影の準備をする…という仕事の仕方をずーっとしてきました。その早朝型の生活にする前は、夜寝ないでリビングでレシピを書きながらウトウトしてベッドで寝ていない時期もあったんです。そんな私の姿をたぶん娘たちが見ていて、毎日、夕食が鍋でも文句が言えなかったのかもしれないですね」

 

インタビュー中の藤井先生

夫婦の氷河期時代を経て、子どもが独立してからは夫と楽しむ「藤井定食」に

「私は不器用で、料理研究家として駆け出しの頃は、仕事がうまく回せなくて子育ても下手で。そのいっぱいいっぱいのときに、夫は掃除も洗濯も、子どもの学校関連のことも一切手伝ってくれない。仕方がないと思い、すべてを“無”にして何も感じないようにして一生懸命、仕事をしていました。今振り返ると、当時、夫も仕事のことで精神的に苦しかったのかなと思います。でも、20年くらい前、私が爆発したことをきっかけに、夫婦で向き合えるようになりました。そのときは私が本音で怒って、“家事は私がするから子どもの学校関連のことを全部やって!”と言ったことです(笑)。それで、教育関連のことを夫にすべてやってもらうようになったら、すごくラクになって、お互いに歩み寄れるようになりました。夫の仕事が復活して、私自身も仕事の仕方も少しずつわかってきて。私が更年期に手湿疹に悩むようになってからは、夫が食器洗いを手伝ってくれるようになりました」

娘さんたちが独立して夫婦の時間が増えてから、藤井さんの食事は20代の頃からあこがれ続けていた、トレイにいろいろな小皿や小鉢のおかずが美しく並ぶ「藤井定食」になっていきました。

「子どもの頃に大好きだった“おままごと”のような感覚で、作ること、器を選んで盛りつけること、食べることのワクワク感を楽しんでいます」

テレビなどのメディアで見る、いつもきれいで元気な藤井さんの姿を知っている人は、今回のプライベートのお話を読むと「そんな過去が!?」と驚き、子育てや夫婦関係、仕事のヒストリーに共感する人もいるのではないでしょうか。それを知ったうえで、『THE 藤井定食』(ワン・パブリッシング)を手に取って読むと、もっと料理研究家の藤井さんのファンになること間違いなしです。

THE 藤井定食の書影

藤井さんのレシピのひとつひとつの工夫は、育児、家事、仕事を一生懸命にしてきた生活の中から生まれたことがわかるプライベートのお話でした。

次回は、藤井さんが40代後半の更年期の不調に悩んでからの食事改革のお話、さらに時短で作れて栄養バランスも整う「藤井定食」の下ごしらえストックについてお話をうかがいます。

 

取材・文/掛川ゆり 撮影/安藤佐也加

【プロフィール】
藤井 恵
1966年生まれ。料理研究家。管理栄養士。女子栄養大学在学中から恩師のもとで料理番組のアシスタントを務める。長女の出産を機に専業主婦となり、節約料理や子どものお弁当のレシピをノートに書き留める。主婦向けの雑誌に節約料理が掲載されたことをきっかけに、30代から料理研究家に。簡単、時短、おいしくてヘルシー、さらにセンスのいい料理にファンが広がり、幅広い世代から支持を受けている。現在は、東京・長野・韓国を行き来し、素材とていねいに向き合いながらレシピを開発中。自身のInstagram(fujii_megumi_1966 https://www.instagram.com/fujii_megumi_1966/?hl=ja)で公開している定食を読みやすいレシピと美しい写真でまとめた『THE 藤井定食』(ワン・パブリッシング)は、発売からすぐに増刷を重ね、現在6刷と大好評。『からだ整えおにぎりとみそ汁』(主婦と生活社)、『藤井弁当』(Gakken)など著書多数。

 

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