「血糖値って、健診では異常なしだったから関係ないな」…とスルーするのはちょっと待って! じつは一般の健診では見つかりにくい “血糖値スパイク”が余分な間食や暴食の引き金になり、やせない原因になっているかもしれません。SNSのフォロワー数が計32万人を超える“血糖おじさん”こと、糖尿病専門医の薗田憲司先生に、血糖値とダイエットの深い関係、血糖コントロールダイエットの簡単な方法を教えていただきます。
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血糖コントロールで、ご飯を食べても外食を楽しんでもやせられた!
上は、薗田先生の著書『“血糖値”を制して脂肪を落とす!』(Gakken)の血糖コントロールダイエットの体験談のページ。
厳しい食事制限やハードな運動はしないので、やせる効果はゆるやかでは…?と思いきや、お腹周りが大きくサイズダウンし、約2か月で体重-13.9㎏、ウエスト-16.4㎝、「ジーンズがベルトをしないと落ちてくるほどに」「間食しなくなった」「ドカ食いをしなくなった」など、体験者の声から大きな変化があったことがわかります。 さらに驚くのは、厳しい糖質制限はせず、ご飯もパンも食べ、外食のラーメンも焼き肉も適度に楽しみながら、“自分の生活、食の好みに合った”血糖コントロールの行動でみなさんやせられたこと。
血糖コントロールダイエットでなぜやせられるのか、糖尿病専門医の薗田先生にうかがいます。
血糖コントロール=食欲コントロール、余分な間食や暴食が減る!
血糖値とダイエットは関係があるのでしょうか?
薗田先生「大ありです! 食後の血糖値の変化をゆるやかにする血糖コントロールダイエットをすると、脂肪がつきにくくなり、食欲がコントロールでき、さらにダイエット中の筋肉量の減少も抑えられます。
日常の食事で、次のような“血糖値スパイク”を起こす太る食べ方をしていませんか?
□朝食はパン、おにぎり、シリアルを早食い
□昼食はサンドイッチ+野菜ジュースの軽食
□朝食を抜き、昼食でパスタ、うどんなどの麺類、丼ものの単品をかきこむ
□加糖の飲み物をよく飲む(スポーツ飲料、ビタミン入り飲料、炭酸飲料、果物・野菜ジュース、ミルクティーなど)
血糖値スパイクは、食後、短時間の間に血糖値が急上昇し、その反動で急降下すること。空腹時に糖質に偏ったものを早食いすると起こりやすいのですが、一般の健診では空腹時に採血して血糖値を調べるため、日常の食事で血糖値スパイクを起こしていても見つかりにくいんです。
食後に高血糖になると血中の糖が余って脂肪がつきやすくなり、高血糖の反動で血糖値が急降下すると強い空腹感がやってきて余分な間食、暴食の引き金にもなります。
ほかにも、血糖値とダイエットの関係では、食事を抜く極端なダイエットで血糖値が下がり過ぎると血糖を補うために筋肉が分解され(糖新生)、代謝が低下してやせにくい体になってしまう面もあります。 上のチェックに当てはまる方は、血糖値スパイクを防ぐ食べ方に見直してみてください」
血糖コントロールは簡単! 自分の生活や食の好みに合う小さな行動でOK
やせるためには、食事や運動など生活習慣を大きく変えなければいけないのでしょうか?
「血糖コントロールダイエットはとても簡単で、忙しい中でもできる小さな行動がたくさんあります。ダイエットの理想論通りに100点をとろうとすると継続するのが難しいですよね。だから、自分の生活や食の好みに合う方法を選び、70点をとり続けるぐらいの気持ちでダラダラと継続するほうが健康にもいいんですよ。ダイエットは“マシ”の積み重ねが大事なんです」
血糖コントロールダイエットの簡単な行動がこちら!
ご飯とおかずをいっしょに食べたいなら「半分カーボラスト」
「ごはんを最後に食べる“カーボラスト”の食べ順にすると、血糖値の急上昇が抑えられます。でも、おかずとご飯を交互に味わう食べ方も食の楽しみ。いつもご飯だけ最後に食べていたら食がつまらなくなってしまうと思います。カーボラストが完璧にできないなら、もう食べ順は意識しなくていいやと、止めてしまうのではなく、ちょっとマシな“半分カーボラスト”の食べ順で血糖コントロールをしてもいいんです(僕も実践しています)」
《半分カーボラストの食べ順》
【1】肉や魚のおかず半分、野菜を最初に食べる
【2】肉や魚のおかず半分とごはん半分を交互に食べる
【3】残りのごはん半分を食べる
絶対に玄米!ではなく、量と食べ順を意識すれば白米ご飯もOK
「白米ご飯より食物繊維が多く含まれる玄米ご飯が食後の血糖値を上げにくいといわれていますが、白いご飯が食べたい日もありますよね(僕もあります)。絶対に玄米でなければいけない!ということではなく、白米ご飯を食べるときでも“量”と“食べ順”、ゆっくり食べることも意識すれば、血糖値スパイクを防げて太りにくくなります」
《主食の量と食べ順のポイント》
・自分の茶碗でごはん100gをはかってみる
(コンビニのおにぎり1個分、ごはん100g・糖質約40gを1食の主食の糖質量の目安に)
・たんぱく質・食物繊維ファーストで食べる
(ごはんからかきこまず、肉・魚のおかず、野菜、海藻、きのこのおかずを先に食べる)
コンビニ飯は糖質+たんぱく質+食物繊維を組み合わせる
「コンビニのごはん、外食が中心で忙しい人は、メニュー選びを工夫してみてください。主食の糖質量をほどほどにし、筋肉をつくる材料になるたんぱく質(主菜)、糖の吸収をおだかやかにする食物繊維のおかず(副菜)を組み合わせます。また、外食やお惣菜の揚げ物などは脂質が多くてカロリーがオーバーしてしまいがちなので、糖質オフしてもなかなかやせないという人は、カロリーや脂質の量にも注目してみてください」
ラーメンは味玉や野菜などをトッピングして先食べし、食後に散歩
「外食をしても、糖質に偏らないようメニュー選びを工夫すれば大丈夫。さらに、食前や食後に運動をすれば筋肉に糖が送られて消費され、太りにくくなります。僕はラーメンが好きでたまに食べるのですが、味玉、チャーシュー、野菜、海藻などのたんぱく質と食物繊維のトッピングをし、麺よりも先に食べるようにしています。さらにラーメン店を出たら散歩。上のように、運動は食後血糖値の抑制に効果絶大なんです」
ほかにも、『“血糖値”を制して脂肪を落とす!』(Gakken)には、ハードルが高い食事法ではなく、実生活に落とし込みやすい簡単な血糖コントロールの行動がたくさん紹介されています。
「ダイエットの理想論はわかっていても、仕事、育児、介護などで忙しいと“継続”がとても難しいですよね。理想論をいかに現実の生活、自分の食の好みに落とし込んでコントロールするかがダイエット成功のカギになるんです」と薗田先生。
この本で血糖コントロールの知識を得て自分に合う方法を実践し、継続していけばダイエットや将来の健康にもつながっていきそうです。
取材・文/掛川ゆり
【プロフィール】
薗田憲司(血糖おじさん)
日本内科学会 糖尿病内科認定医。日本糖尿病学会 糖尿病専門医。そのだ内科糖尿病・甲状腺クリニック 渋谷駅道玄坂院院長。日本医科大学卒業後、東京臨海病院初期勤務、東京都済生会中央病院勤務。年間4000件以上の外来を担当。糖尿病患者の父を持ち、自身も学生の頃より食事改善を実践。外来では患者1人にかけられる時間が限られているため、多くの糖尿病患者やダイエットに悩む人に役立つ情報を発信したいとの思いからInstagramで情報発信を始め、SNS総フォロワー32万人を突破(2023年12月時)。血糖値とダイエットの関係性や食事のアドバイス、糖尿病の最新事情などを発信している。
https://www.kettou-ojisan.com/
Instagram:@kettou_ojisan