「ダイエット臭」って聞いたことがありますか? 極端なダイエットをした結果、体から不快なニオイが出てしまうことがあるのだとか…。内科医・認定産業医である桐村里紗先生に、その原因とニオイのメカニズムについて伺いました。
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■まちがったダイエットがニオイの原因になる?
「ダイエット臭」として一般的に言われているのが、「ケトン臭」と呼ばれる甘酸っぱい独特なニオイ。ケトン臭は、過激なダイエットや厳格な糖質制限ダイエットで体の代謝が変わり、ケトン体質になることで発生します。
そのニオイに至るまでに皮脂臭や汗臭が悪化している場合や、ダイエット中に食物繊維が不足することで腸内環境が悪化して腐敗臭としてニオう場合も。
まちがったダイエット方法で極端なカロリー制限をしてしまったり、糖質制限ダイエットで肉ばかり食べて野菜不足になってしまうなど、結果的に腸内環境が悪化してしまう人も少なくありません。
■甘酸っぱい独特なニオイの「ケトン臭」は悪者ではない
ケトン臭は、果実のような甘酸っぱい独特なニオイですが、発生すること自体は必ずしも悪いわけではないと桐村先生。
「糖をエネルギーに換える代謝ではなく、肝臓が脂肪を分解して作り出すエネルギー源がケトン体。糖質制限をして糖質ゼロにする『ケトジェニックダイエット』は、完全にケトン体質にしていくものです。
脂肪をエネルギー源にしているのでエネルギー効率がよく、それをあえて狙ったダイエットなので、その結果「ケトン臭」が出ることは悪いわけではありません。ちょっと独特なニオイはしますけど、それを目指しているのであれば、むしろ“成功”と言えますね」(桐村先生)
ただし、毎日サラダやスープだけしか食べないような極端なダイエットでは、体が飢餓状態になります。飢餓状態になることで皮下脂肪が燃えて、ケトン体質へ。
このように、意図せず極端なダイエットでケトン臭が出る場合は、基礎代謝が低下して逆に太りやすくなることも。つまり、この場合のケトン臭はいいものとは言えません。
■注目のたんぱく質も要注意! うっかりニオイの原因に
トレーニングをする人が増えてきて、最近注目されているたんぱく質。肉を食べたほうがいいという傾向もあり、低カロリーでやせるというよりは、たんぱく質をしっかりとるために肉をたくさん食べている人も多いのではないでしょうか?
「たんぱく質は体にとって、とても大事な栄養素ですが、不消化になって腸内で腐ってしまうケースも多くなっています。腸内でたんぱく質がうまく消化されないと、悪玉菌が増えて腐敗してしまうんです。
そこから腐乱臭、アンモニア臭、腐った野菜のようなニオイが発生し、血液に入って汗として出たり、口臭から出てきたりと、全身のあらゆる部位のニオイとして出てきます」(桐村先生)
■自分では気づきにくい、体のニオイをチェック
自分の体臭がキツいかそうでないか、自分ではなかなか気づけないのが、体臭の厄介なところ。そもそも人の体臭にはどのような種類でどのようなニオイがするのか見ていきましょう。
・ケトン臭
甘酸っぱくて独特なニオイ。揮発性の高いニオイなので、全身をまとっているように体のどの部位からも出ている。近寄ったときにツンとニオう。
・皮脂臭
揚げ油が酸化したようなニオイ。皮脂が分泌されやすい、背中や頭皮など上半身からニオイやすい。
・汗臭
汗をかいて、皮ふの常在菌が分解するときに発生するニオイなので、汗をかきやすい部位からニオうことが多い。
・口臭
腸内環境が悪化して呼気として腐った野菜のようなニオイに。虫歯や歯周病、ドライマウスなど、口内環境の悪化でニオイが発生する場合もある。
「お通じがクサくなったら要注意。腸内環境が悪化しているサインです。自分の体臭は気づきにくいので、気になる人は便臭で確認するのもおすすめです。普段よりも便臭があるということは、腸内環境が悪化しているということ。それはニオイとして汗臭や口臭につながるので、便臭を確認するとわかりやすいですよ」(桐村先生)
■食事制限と運動をバランスよくとり入れるのが◎
また、運動しないで食事制限だけでダイエットを行うとニオイが発生する可能性が高いそう。
「食事制限だけのダイエットで代謝が落ちてしまうと、エネルギーの生産工場であるミトコンドリアの機能も低下してしまいます。脂肪を分解してもミトコンドリアでエネルギーとして燃えないため、余った脂肪酸が皮脂臭の原因になってしまいます」(桐村先生)
元気なミトコンドリアを増やすためには、有酸素運動を行うのが効果的。数が増えるだけでなく、質もよくなるそうです。ミトコンドリアの機能が高まると、抗酸化力もアップします。有酸素運動と食事が、ヘルシーな体を作るためには大切なのです。
「最低でも週1回の有酸素運動を行えるといいですね。しっかり酸素をとり入れながら運動することで、元気なミトコンドリアが増えてくれます。軽くおしゃべりしながらできて、少し息が上がる程度の運動がいいでしょう」(桐村先生)
文/高野瞳