外食やお店で買ったお惣菜はおいしいですが、ヘルシーかというと、どうなのでしょう?──。海外ではこうした食品をちょっとの工夫でヘルシーにできるということが科学的に研究されています。気をつけるべきポイントは、行動経済学で「ナッジ(nudge)」と呼ばれるものだそう。ベストのナッジを選ぶと、1日に角砂糖32個分のカロリーを減らす効果があるといいます。
Contents 目次
ナッジを科学的な研究から導き出す
不健康な食事を食べていると、ダイエットにも美容にもよくないですし、病気にもつながります。研究によると、そうしてかかってしまう生活習慣病のおかげで、寿命が縮んでおり、20年間でみると日本円で3000兆円ほどの費用がかさんでしまうという計算もなされているようです。
そのためヘルシーな食事をどうとれるようにするかが、国を挙げて検討されています。こうした中、注目されているのが、行動経済学で「ナッジ」と呼ばれる方法だといいます。
直訳すると「軽く突く」といった意味で、2017年にノーベル経済学賞を受賞したR・セイラー博士が生み出したものです。簡単にいうと、どんな選択もできるようにしたまま、どうやったら望ましい行動をとれるようにできるかという考え方です。
健康的な食事でいえば、レストランやお店でついついヘルシーな選択をしてしまうように仕向けるのです。
例えば、食料品店で果物を目の高さに置くのは「ナッジ」ですが(目に入りやすくする)、ジャンクフードを禁止するのは「ナッジ」ではありません(選択肢は残します)。
このたびフランスの研究グループが、ヘルシーな食事をとるために必要になるナッジについて分析しました。
ナッジを3つに分類
ついついヘルシーな食事を選んでしまうナッジには大きく3つのタイプがあるそう。
ひとつは、「認識を促すタイプ」で、カロリーや糖分、脂肪分などの成分をきちんと示すこと。また、健康的な食品であれば緑、不健康であれば赤といったカラーで健康的かどうかをわかりやすくすること。ヘルシーな食品を棚の手前に置くなどして、目につきやすくすること。
さらに、2つ目は、「感情に訴えるタイプ」。お店やレストランのスタッフがお客さん対して、果物や野菜はどうかとすすめるのはこのタイプになります。カウンターやメニューでヘルシーな食品が特に魅力的に見えるように工夫するのも大切なようです。
3つ目は、「行動を予想して対応するタイプ」。セットメニューに必ず野菜を加えたり、不健康な食品を棚の奥の手が届きにくいところに置いたりすること。不健康な食品はパッケージやひと皿の分量を減らし、ヘルシーな食品は分量を増やしたりすること。
こうした工夫を試した研究によると、1日のエネルギー摂取量が124 kcal少なくなったそう。角砂糖1個で約10 kcalとすると12個分以上。特に効果的だったのは、行動を予想してサイズを変えること。角砂糖32個分を減らす効果がありました。ヘルシーな食品を増やすよりも、不健康な食品を減らす効果に優れているようです。
<参考文献>
Study identifies the best healthy eating nudges
https://www.insead.edu/newsroom/2019-insead-study-identifies-the-best-healthy-eating-nudges
Which Healthy Eating Nudges Work Best? A Meta-Analysis of Field Experiments
https://faculty.insead.edu/pierre-chandon/documents/Articles/Cadario%20Chandon%20Healthy%20Eating%20Nudges%20Marketing%20Science%202019.pdf
文/星良孝