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家族の支えが力の源! カヌースプリント日本代表・多田羅英花選手の食事法 #アス女

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多田羅英花選手のカヌー姿

アスリート女子。彼女たちは栄養素をバランスよく摂取しながら、食事量をうまく調整して体づくりを行い、競技に臨んでいます。そんなアス女の皆さんに健康的な食生活を送る秘訣を教えていただこうという企画『アス女飯』。第19弾はカヌースプリント日本代表・多田羅英花選手にお話を伺いました。

監修 : 青柳 愛

フリーアナウンサー。野菜ソムリエ、日本スポーツコーチ&トレーナー協会JASCATスポーツ栄養アドバイザー。日本テレビ系列静岡第一テレビ時代に農業番組を担当したことから「食」に興味を持ち、フリーアナウンサーに転身後は、イベント司会業、アナウンス業を行いながら、スポーツ取材の経験を活かしスポーツ栄養を専門としたライター・アドバイザーとしても活動中。著書『監督たちの高校サッカー』(東洋館出版)。
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Contents 目次

マリンアクティビティとしても人気。「カヌー」の魅力

多田羅英花選手のカヌーうしろ姿

海、川、湖などでパドルを使って漕いで進むカヌー 。ふだん味わえない風景を水上から満喫できる競技であり、マリンアクティビティとしても親しまれています。
競技としては19世紀中ごろにイギリスのテムズ川でレース競技が行われたのが最初だと言われており、1936年の第11回ドイツベルリン大会からオリンピックの種目として採用されました。

今回はカヌースプリント日本代表・多田羅英花(たたら・ひでか)選手(28歳)をご紹介します。
東京オリンピックに向けて、厳しい練習に励んでいる多田羅選手にとって心の支えとなり原動力になっているものは何なのでしょうか?
今回ご紹介するアス女飯は競技者として体づくりで食べている食事とともに、自身を今も支え続けている思い出の食事についても伺いました。

第18弾・ゲートボールプレイヤーの久保香菜絵さんの記事はこちら。
世代を超えて楽しめる! これから注目のスポーツ「ゲートボール」の楽しみ方 #アス女飯

カヌーとカヤックの違いとそれぞれの魅力

長い歴史のあるカヌーとカヤックですが、それぞれの違いを知らないという人も多いのではないでしょうか?
ひとり乗り(シングル)、2人乗り(ペア)、4人乗り(フォア)などそれぞれ種類が分かれていますが、大きく分けるとカヌーには甲板がなく、片方だけに水をかくためのブレードがあるシングルブレードパドルを使用して船を漕いで進む一方、カヤックは漕ぎ手が両足を前に伸ばした長座の姿勢で座り、両側にブレードがついたダブルブレードパドルで左右を漕ぎながら進みます。

さらに、カヌーは激流を下りながらゲートを通過していくスラロームと、湖などの静かな水面に設けられた直線コースのタイムを争うスプリントに分けられており、カヌーの形状によってカヤック、カナディアンと種目が分かれておりオリンピックにある競技だけでも16種類も競技が存在します。
多田羅選手が今回日本代表入りをしたのはカヌーの中のカヤックスプリント、シングルという競技です。

多田羅選手が生まれ育った香川県はおだやかな気候と、讃岐山脈から流れるおだやかな川が点在する地の利からカヤックはお家芸と言われています。そんな環境で育った多田羅選手は13歳からカヌーをはじめました。まずは多田羅選手にカヌー の魅力について伺いました。

「朝早起きして、誰も漕いでいないフラットな水面を漕ぎ始める時間が大好きです。おだやかな心持ちになれるんですよね。レースはシビアですが、座った体勢から見える自然の風景は非日常。さらにスリリングな雰囲気も楽しめるので、たくさんの人たちに競技の魅力を知っていただきたいです」(多田羅選手)

多田羅選手は中学3年で全国優勝後、カヌーの強豪校である香川県高瀬高校へ。その後、武庫川女子大学でさらに力をつけ、日本選手権ではカヤックシングルで準優勝、ペアで優勝するなど輝かしい成績を残しました。大学4年時には5種目を制覇し2年連続MVPを獲得。妹・彩花さんとカヤックペア500mの部門で頂点もつかみました。

このころから日本代表に選ばれるようになり、4年時にアジア競技大会でフォア4位に入賞し日本から世界へと活躍の場を広げ、社会人になってから2018年のジャカルタアジア大会カヤックペアで銅メダル。2020年3月の国内代表選考でカヤックシングルで1位に入り、東京オリンピックの出場権をかけたアジア予選で代表入りを決め、同年9月の日本選手権では2度目の優勝を果たしました。

多田羅英花選手と男性のカヌー姿

苦しいときこそ支えてくれた家族の存在

鍛え抜かれた体と凛とした強さを持ち合わせながら、謙虚でていねいな口調で話すのが印象的な多田羅選手。

輝かしい成績とは裏腹に、じつはレース前は自信をなくすことも多いそうで、ご自身のタイプについて次のように話しました。
「じつはため込みやすい性格で、レース前は深刻に悩んでしまうことが多いです。負けたらどうしようとか、不安になることも多く泣きながら信頼できる人に相談してしまいます。悩みぬくとある程度落ち着いてきて、吹っ切れる瞬間があるんです。もういいや!って。そうなれると力が出せるタイプだと思います」(多田羅選手)

多田羅選手曰く競技の特性上、孤独に自分との闘いになることが多いそうでプレッシャーや不安をひとりで抱え込むことも多く、母・光代さんに相談することも多かったそうです。
「母は自分以上に、自分のことのように悩んで、自分以上に悲しんでくれる存在です。15年の競技人生を同じように苦しみ、悩んでくれた母がいたので強くなれましたね。母だけでなく、父、兄、妹も大事な局面で支えてくれたから今もカヌーが続けられています。私の心の主柱にあるものは”家族”です」(多田羅選手)

多田羅選手の15年余りに及ぶ競技人生の中で、自身が最も苦しかったと振り返るのが2017年。社会人となって現在のチームに移籍したところ結果を早く出さなければいけない中で大事な友人を亡くされ、カヌーに専念できなく苦悩した時期があったそうです。そのときも、家族のおかげで乗り越えたといいます。

「1歳下の妹(彩花さん)は試合前になると、いつもメッセージをくれるので本当に心強いです。兄(晃広)はふだんはそこまでがんばれとか頻繁には口にしないのですが、過去に1度だけLINEをくれました。”大事な友だちのぶんまでカヌーをがんばれ”というメッセージでしたね。ふだんそんなことを言わない兄が、送ってくれた言葉は今でも思い出すと力になりました。家族それぞれが見守ってくれているからこそ、今私はここにいます」(多田羅選手)

それぞれの距離感でめいいっぱいの愛情で見守ってくれる人がいることを多田羅選手はいちばん誇らしく思っているようでした。

愛の詰まった料理が力の源

そんな家族愛のエピソードを照れながら語ってくれた多田羅選手が家族の愛を感じたエピソードとして過去に作ってもらったある食事を教えてくれました。

「思い出の料理といえば山盛りのミートソースパスタです。今もてんこ盛りになったパスタを思い出すと涙が出そうになります。高校時代に本気でカヌーで勝ちたいという思いになって両親にも話したとき、父が保護者会で“試合前の食事に炭水化物をとったほうがいい”と顧問の先生から聞いてくれて大皿にいっぱいのパスタを作ってくれました。高校時代に食べたあの山盛りのパスタが今も心に残っています。私にとって食事とは愛を感じるものですね」(多田羅選手)

また、多田羅選手は昨年からヘルシー・糖質制限の食事宅配サービス専門のサポートを受けています。管理栄養士と専属の料理人が監修した、糖質30g以下・塩分2.7g以下の高たんぱく質の食事を冷凍で届けてもらって合宿中でもお弁当が届くそうです。新鮮な食材にこだわった食事は温めるだけで手軽に栄養の管理が可能な環境が整えられて、食事に関しても遠征先で悩まずに済むようになったそうです。

ヘルシー・糖質制限の食事宅配サービス専門の食事

冷凍とは思えない豊富な献立ですね!

「栄養については自分で調べてとことん試していくのが好きです。スポーツ問わず活躍している選手が何をどのように食べているか知りたく、本やYOUTUBEで栄養学を学んだりしました。テニスのジョコビッチ選手がグルテンフリーを続けていることを知って私も試してみると感覚がよくなったので基本的にパンは食べなくなりました。
最近はボディビルで活躍されている野沢SHOWさんのアドバイスもとり入れたりしています。ネットで調べて気になることはスポンサーの方にも聞いて知見を深めるのも好きです。お弁当は糖質制限や栄養バランスが管理された食事なので安心して続けられています」(多田羅選手)

レースに向けたコンディショニングの整え方

多田羅選手が東京オリンピックに出場するのはカヤックシングル500m。だいたい1レース目は朝9時に行われることが多いそうです。
なので、朝3時半に起床して、4時にしっかりとした朝食をとりその後1時間のウォーミングアップ。5時半に簡単な補食をとったのち6時には水上で体を慣らすのがルーティンになっているそう。

「レースではもちろん周りの選手の様子も見ながら、そのときの風の状況を見て仕掛けるタイミングをいろいろ考えながらレースをしています。どんなレースになるか、そのときの気候も体に感じてからレースに臨むようにしています」(多田羅選手)

自然の中で微少な空気を感じながら研ぎ澄まされた感覚こそが持ち味。ここぞというタイミングを逃さずに一気に仕掛けていく感覚は、常に細やかにさまざまなことを感じ、悩み、ぶつかりながら自身でしっかりと受け止めて乗り越えた多田羅選手だからこそできることなのかもしれません。

愛する家族のために挑戦するオリンピック

最後に、多田羅選手にオリンピックに対する想いを率直に伺いました。

「先ほども話しましたが私の原動力は家族。やっぱり家族にとって自慢できる自分でありたいです。海外にも行ったことがない祖父や祖母も、代表で海外に行くと喜んでくれました。海外に簡単に行くことができない家族も、今回は日本で開催されるので日の丸をつけてカヌーを漕ぐ姿を見てもらいたいです。オリンピックが開催されることを信じて、今は邁進するだけ。一緒に悩み、乗り越えてきてくれた家族への感謝の気持ちがあるからこそ、迷わず自分を信じてがんばります」(多田羅選手)

家族愛を力にしてまっすぐ夢の大舞台へ!
水上を誰よりもさっそうと漕ぎきる多田羅選手の活躍にご期待ください。

たたらひでかさんの顔写真

【取材協力】多田羅英花(たたら・ひでか)
1992年9月2日、香川県坂出市生まれ。中学からカヌーを始める。白峰中3年時に全国優勝。高瀬高3年時でジュニアの日本代表、武庫川女子大学2年からはシニアの日本代表に選ばれる。大学3、4年時には全日本大学選手権で複数種目を制し、2年連続MVPを獲得。18年にインドネシア・ジャカルタでのアジア競技大会カヤックペアで銅メダルに輝いた2020年3月の国内代表選考でカヤックシングルで1位に入り、東京オリンピックの出場権をかけたアジア予選の代表入りを果たした。同年9月の日本選手権では同種目で初優勝を果たす。

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