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マラソンなど持久系スポーツのし過ぎはかえって悪影響? 海外研究でわかった意外な事実とは

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定期的な運動は美容やダイエットに欠かせません。もちろん健康の面でも、高血圧や肥満といったリスク要素を防ぐと考えられています。ところが、このたび発表された海外研究によると、マラソンなど持久力が必要な激しい運動やスポーツを長く続けていると、逆に心筋梗塞や狭心症といった心臓の病気になりやすくなるという報告がありました。ほどほどがよいのかもしれません。

監修 : 星 良孝 <ステラ・メディックス>

ステラ・メディックス代表取締役社長 獣医師/ジャーナリスト
専門分野特化型のコンテンツ創出を事業として、医療や健康、食品、美容、アニマルヘルスの領域の執筆・編集・審査監修を担っている。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BP社において「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年に会社設立。YouTubeステラチャンネルでもヘルスケアの話題を発信。
YouTube:https://youtube.com/@stellach

Contents 目次

運動のし過ぎがよくない?

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年齢を重ねるにつれて体内に不健康なコレステロールが増えるなどすると、動脈硬化と呼ばれる状態になることがあります。この場合、血管の内側に脂肪などがかたまった「プラーク」と呼ばれる物質がたまり、さらには血管がかたくなる「石灰化」という状態に進むことがあります。そうなると心臓の病気のリスクが高まります。

一方で、従来の研究から、ウォーキングやサイクリングあるいは家事などの身体活動を行っている人は、心臓に血液を供給している冠動脈の「石灰化」のリスクが低いことがわかっています。具体的には、心臓の健康のためには150分の中強度の有酸素運動や75分の高強度の有酸素運動といった一定の運動が推奨されています。

ところが、最近、運動と心臓の健康との関係について意外な発見がありました。激しい運動によって、むしろ健康への悪影響が懸念されるというものです。熟練したアスリートや持久系スポーツの選手は、心臓の石灰化が進んでいることがわかってきました。

そこで今回、ベルギーとオーストラリアの研究グループは、健康的なライフスタイルを送り、心臓や血管の病気のリスクも低い男性を対象に、3つのグループを比べる研究を行いました。これらのグループに含まれたのは、「持久系スポーツを長く続けてきた熟練アスリート」「30歳を過ぎてから持久系スポーツを始めたアスリート」「アスリートではない人」。研究グループは、心臓の石灰化の程度を評価し、また心肺持久力を示す最大酸素摂取量も調べました。心肺持久力が高いほど、心臓や血管の病気のリスクが低いと考えられています。

熟練アスリートで目立った「プラーク」

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こうして研究で確認されたのが、持久系のスポーツに長く取り組んできたアスリートでは、心臓の石灰化まではいかないまでも、その前段階のプラークが目立っていたことです。

具体的には、特に熟練アスリートは、アスリートではない人に比べて、心臓の血管にプラークが多く見られました。熟練アスリートと30歳以降に持久系スポーツをはじめたアスリートは、最大酸素摂取量がより高いレベルにあり、心肺持久力は高いのですが、このような心臓や血管の病気につながるプラークが多く見られたのは意外な結果といえます。

このように長時間の持久系スポーツを行うことが意外なデメリットにつながる可能性があるわけです。一般的に体によいと思われるスポーツも、やり過ぎには注意するとよいかもしれません。

<参考文献>

De Bosscher R, Dausin C, Claus P, Bogaert J, Dymarkowski S, Goetschalckx K, Ghekiere O, Van De Heyning CM, Van Herck P, Paelinck B, El Addouli H, La Gerche A, Herbots L, Willems R, Heidbuchel H, Claessen G; Master@Heart Consortium. Lifelong endurance exercise and its relation with coronary atherosclerosis. Eur Heart J. 2023 Mar 6:ehad152. doi: 10.1093/eurheartj/ehad152. Epub ahead of print. PMID: 36881712.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36881712/

De Bosscher R, Dausin C, Claus P, Bogaert J, Dymarkowski S, Goetschalckx K, Ghekiere O, Belmans A, Van De Heyning CM, Van Herck P, Paelinck B, El Addouli H, La Gerche A, Herbots L, Heidbuchel H, Willems R, Claessen G. Endurance exercise and the risk of cardiovascular pathology in men: a comparison between lifelong and late-onset endurance training and a non-athletic lifestyle – rationale and design of the Master@Heart study, a prospective cohort trial. BMJ Open Sport Exerc Med. 2021 Apr 16;7(2):e001048. doi: 10.1136/bmjsem-2021-001048. PMID: 33927885; PMCID: PMC8055127.
https://bmjopensem.bmj.com/content/bmjosem/7/2/e001048.full.pdf

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