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ボディメイクは“鍛える”から、体と心と環境を”整える”シン・コンディショニングの時代へ~専門家3名によるクロストーク<前編>~

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コンディショニング

最近、筋トレでもストレッチでもなく、「コンディショニング」という言葉が身近になってきています。でも、いざ「コンディショニングって何?」と聞かれると、答えに迷ってしまう人も多いのでは? そこで今回は、ボディメイクや健康のための体づくりがご専門の3名のプロに、今の時代に合った「コンディショニング」=「シン・コンディショニング」についてお話を伺ってきました。ジムでの運動でも、セルフメンテナンスでも、シン・コンディショニングの考え方をとり入れて、美しく健康なボディを手に入れましょう!

Contents 目次

お話を伺ったみなさん

日高靖夫さん

日高靖夫さん
㈱Y’S BODY FACTORY代表。フィジカルトレーナー&メンタルコーチ。20年間で1万人以上の指導経験を持つパーソナルトレーニングのスペシャリスト。著書に『“よく動くカラダ”を手に入れる! 張力(フレックス)トレーニング』(BABジャパン)ほか。

広瀬統一さん

広瀬統一さん
早稲田大学スポーツ科学学術院教授。大学で教鞭をとるかたわら、2021年までサッカー女子日本代表フィジカルコーチほかを歴任。著書に『大人女子のすごい体幹トレ&ストレッチ』(Gakken)ほか。

本橋さん

本橋恵美さん
㈱E.M.I.代表取締役。コンディショニングコーチ、スポーツ医学アカデミー主宰。ヨガ、ピラティスを専門に資格の発行や、医療従事者、トレーナーに障害予防や機能不全の回復についての指導にあたる。

フィットネスのトレンドは“鍛える”よりも“リセットする”こと

FYTTE編集部(以下:編集部) 「コンディショニング」は、以前は専門家が使う言葉でしたが、最近はずいぶんなじみのある言葉になってきています。専門家のみなさんの考える「コンディショニング」とは一体どんなものなのかをお伺いしたいと思います。まずは大学でコンディショニングを研究されていらっしゃる広瀬先生、いかがでしょうか?

広瀬さん コンディショニングというと、多くの方は体を整えることが頭に浮かぶと思います。でもコンディショニングの意味はそれだけではありません。ある人が自分の掲げる目的に向かって最大限のパフォーマンスを発揮するために必要な体、心、環境など、すべての要素を整えることを指すんですね。例えば、プロのアスリートであれば国際試合に勝つためかもしれませんし、一般の方なら週末のマラソン大会を完走することかもしれません。または、運動に限らず、仕事の成果を上げることも目的になるかもしれません。それぞれの目的によってアプローチの方法は違いますが、体を整えることと同時に、プレッシャーに負けないメンタルや、天気や気温、あるいは動くときの靴などの環境を整えることもコンディショニングのひとつです。

本橋さん 広瀬さんのおっしゃるように、体、心、環境など複合的なコンディショニングが大切なことは、プロのアスリートの方のトレーニングを担当させていただいたときによく実感しました。普段のパフォーマンスがよくても、環境の変化やプレッシャーによってベストコンディショニングが保たれず、本来の力が発揮できなくて残念な結果に終わってしまう選手がいます。一方で、いつも通りのパフォーマンスを発揮できる選手は、目的に向けて心と体と環境のコンディショニングを調整する能力が高いのかなと感じています。

日高さん 私が指導しているのは、40~80歳くらいの一般のクライアントさんがほとんどです。カウンセリングする中で、最近のエクササイズのトレンドが体を「リセットする」「ゼロにする」という、まさにコンディショニングの本質に近づいてきているのを感じています。クライアントさんの意識も「筋肉を鍛えたい」から「筋膜を整え、リリースしたい」に変わってきたのを、ちょうど実感していたところです。

“エクササイズは薬”。関節の可動性を高めて美しく健康に!

編集部 みなさんのお話を伺うと、今まさに新しいコンディショニングの時代「シン・コンディショニング」がブームになり始めているように感じました。では実際にコンディショニングを始めてみようと思う読者が意識すべきポイントは、どんなことなでしょうか?

日高さん そうですね、私は背骨の状態を重要視しています。背骨が柔軟でしなやかに動くことがすべての動きの基本です。そこで、骨盤や背骨を中心とした筋膜リリースを行った後に、ヨガのアニマルストレッチをとり入れています。具体的には、ウサギ、猫、犬、コブラ、カエルの5つの動物のポーズです。脊椎動物の真似をすることで、背骨まわりをしなやかにすることができます。これなら、家でもできますよね。

アニマルストレッチの動物たち

本橋さん 私も日高さんと同じような考えです。やはり適切な体の動きを獲得にするためには背骨はもちろん、関節の可動域を改善することが大事。体が硬いまま無理にストレッチをするとケガにつながってしまいますから。だからといって体が柔らかければいいのではなく、自分のできる範囲で関節を動かせるようにするのが大切です。
関節には股関節や肩関節のように可動性を求めるモビリティ関節と、腰椎や膝のように安定性を求めるスタビリティ関節があります。例えば、本来可動域の広い股関節の動きが悪いと、腰を反って動きを代償してしまうことで腰痛の原因になります。そこでコンディショニングを考えるなら、関節の動きを意識した「モビリティファースト」、次に安定性を重視したスタビリティ関節のまわりを意識したトレーニング「スタビリティネクスト」を軸に進めていくのが良いと思っています。

スタビリティとモビリティの説明図

広瀬さん 私が注目しているのは、その人の持っている体を使ってできるだけ大きく体を動かせること、しっかり自分の体を支えられることです。そのためには、モビリティ関節がしっかり使えていないといけません。
例えば、転びそうなときに手足を出して体を支えようとします。そのとき肩やひじ、手首のモビリティつまり関節の可動性を上手に使うことができるから、とっさに体を動かすことができるわけです。
そこでコンディショニングを念頭に置いたトレーニングは、本橋さんのおっしゃる通り、最初はモビリティを意識したエクササイズで体をリセットし、その上でランニングやスクワットなど、みなさんがよく行う体をアクティブに動かす運動をしていくのがよいとお話しています。

日高さん 私も広瀬さんがおっしゃるように、アクティブに体を動かす前に、関節や筋肉、筋膜を整える3つのステップを大事にしています。まず「体をやわらかくするストレッチ」。次に「ゆがみを整えるチューニング」、そして3つ目のステップが「体を強くするトレーニング」です。このはじめの1、2ステップがコンディショニングの要素。ここを飛ばして体を強くするトレーニングをしてしまうと、ボディメイクも思い通りできませんし、何よりケガの原因になります。

コンディショニングとトレーニングの考え方の図

本橋さん ケガといえば、私は医療従事者の方と一緒に運動療法の指導をしているのですが「エクササイズ イズ メディスン」=「エクササイズは薬です」という言葉が、ずいぶん浸透してきていることを感じています。レントゲンに写らないような機能障害を起こしている方には、適度な負荷のエクササイズが薬になることを、医師が患者さんに伝えるようになりました。運動は体を鍛えるだけのものでなく、体の機能を高めるコンディショニングであるという考え方が、医療現場でも広がってきていますね。

広瀬さん それはうれしいですね。皆さん運動をする以前に日常生活のクセで関節の可動性は落ちています。例えば、1日中ずっとパソコン作業をしていたら、巻き肩で首が前に出て、猫背にもなりますよね。その状態で運動をしても、結局その範囲でしか体を動かすことができないので、思ったような効果は上がりません。ランニングやスクワットなどの運動をする前に、関節の可動性=モビリティを高めて、体を大きく動かしていくトレーニングやコンディショニングがこれからの主流になると思います。

次回は具体的に、どうやって私たちの生活にコンディショニングをとり入れればよいかについてご紹介します。

文/山本美和

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