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使いやすい体になるためには、ヨガ? ピラティス? ストレッチ? 筋トレ? シン・コンディショニングの極意~専門家3名によるクロストーク<後編>~

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ヨガやピラティスのイメージ

前回、コンディショニングの位置づけについて3人のプロに伺った「シン・コンディショニング」対談。まさに時代は“コンディショニング”ということがわかっていただけたかと思います。後編となる今回は、実際にどのように自分の生活にコンディショニングをとり入れていけばいいのか、具体的なメソッドについて教えていただきました。

Contents 目次

お話を伺ったみなさん

日高靖夫さん

日高靖夫さん
㈱Y’S BODY FACTORY代表。フィジカルトレーナー&メンタルコーチ。20年間で1万人以上の指導経験を持つパーソナルトレーニングのスペシャリスト。著書に『“よく動くカラダ”を手に入れる! 張力(フレックス)トレーニング』(BABジャパン)ほか。

広瀬統一さん

広瀬統一さん
早稲田大学スポーツ科学学術院教授。大学で教鞭をとるかたわら、2021年までサッカー女子日本代表フィジカルコーチほかを歴任。著書に『大人女子のすごい体幹トレ&ストレッチ』(Gakken)ほか。

本橋さん

本橋恵美さん
㈱E.M.I.代表取締役。コンディショニングコーチ、スポーツ医学アカデミー主宰。ヨガ、ピラティスを専門に資格の発行や、医療従事者、トレーナーに障害予防や機能不全の回復についての指導にあたる。

背骨の動きや関節の動きを意識すると体が変わる!

いろんなストレッチをする人たち

FYTTE編集部(以下:編集部) 30~50代が中心のFYTTE読者がコンディショニングをとり入れようと思ったとき、どんなポイントを意識すればよいのでしょうか?

日高さん 私がおすすめするのは、筋肉、関節、筋膜を伸ばしながら体を大きく広く動かすことで、筋力、柔軟性、バランス、姿勢の4つを統合して鍛えることができる、張力(フレックス)トレーニングです。これまでのフィットネス業界は、筋力を鍛えたければ筋トレ、柔軟性を高めたければストレッチ、バランスを整えたければバランスボールトレーニングなど、それぞれの運動がバラバラで存在していて、ずっとその点と点をひとつの線にしたいと考えていました。そこで開発したのがこのトレーニング法です。
例えば、背すじを伸ばして立ち、両手を耳の横につけてバンザイしたら、つま先立ちでバランスをとります。わき腹やわきの下、背骨が引っ張られる=張力を感じながらキープ。この動きはひとつの筋肉や関節だけでなく、全身をトレーニングしながら、筋力、柔軟性、バランス、姿勢というコンディショニングのベースになる4つの動きを鍛えることができます。実際にこれを続けているクライアントさんは、体が動きやすくなり、不定愁訴が軽くなったという方が少なくありません。

本橋さん 日高さんのお考えにとても共感しているのですが、やっぱり柔軟性だけでもダメ、筋力だけでもダメなんですよね。複合的に体にアプローチしていくことが大事だと思っています。そういう意味でヨガはメンタル的な効果が高いといわれていますが、実は自分の体を支えたり、バランス力を整えるなど、複合的に体を整えることができるエクササイズなんです。
また、最近人気のピラティスは、体幹を強化するためにとても良い運動だと言われています。でもそれだけではなく、背骨をひとつずつ動かすことで、脊柱のなめらかな動きを促す効果もあるんですね。実際は小さな関節から大きな関節へ少しずつ動かして、全身の協調性を高めることで、動きやすい体をつくりましょう、という考え方がピラティスです。
2つはよく比較されることがありますが、どちらが良くて、どちらが悪いのではなく、どちらにも長所があります。

広瀬さん 日高さんのフレックストレーニングも全身と関節を包括的にアプローチできるすばらしいエクササイズですし、ヨガやピラティスにもそれぞれの良さがあります。どんなエクササイズでも正しく行えば体に変化が起きます。でも、始めなければ何も変わりません。だからこそ、運動が苦手だと敬遠している皆さんには、まずは何でも好きなことから体を動かしてほしいと思います。

どんな運動でも続けていくことで、体と心が整ってくる

編集部 運動を始める第一歩がなかなか踏み出せない方が多いんですよね。一念発起して運動をはじめても、以前ほど結果が出ない自分に嫌気がさして3日坊主で終わってしまうことも少なくありません。それでも運動は続けていくべきなのでしょうか?

本橋さん 特に女性は40代を超えると、そういう悩みを抱える方が増えてきます。女性の場合、ホルモンの影響がとても強くて、更年期を迎える頃になるとやせにくくなったり、関節が痛くなったり、昔、簡単に調整できていたことができなくなってきます。そこで結果が出ないからと、運動をやめてしまうのはもったいないです。
私が現場でお会いする方々の中で、運動を定期的に行っている方は体型維持ができているだけでなく、運動によってストレスが発散されているので心も整っている印象があります。ですからヨガでもピラティスでも、それ以外のどんな運動でも続けていくことは将来の心と体にとって、とても大きなメリットがあると思います。

広瀬さん 年齢とともに体が変わるのは当たり前です。30代を過ぎたくらいから、高いところから飛び降りたり、ボールを遠くに投げるなど、子どもの頃は自然にできていた動作ができなくなってきますよね。
人間は歩いたり走ったりする移動動作、投げたり打ったりする操作動作、立ったりぶら下がったりする姿勢制御(バランス)動作の3つの動作で成り立っているんですが、子どもの頃はその動作をまんべんなく使えています。ところが、大人になってどんどん体を動かす機会が減ると、基本の動作ができなくなり、今まで自然にできていたはずなのに、できない動きが増えてくるんです。読者のみなさんもきっと実感されていると思います。

日高さん 広瀬さんのおっしゃる通りで、年齢とともに体が変わってきます。でも基本の動作ができれば日常生活には困りません。そこで役立つのが、コツコツと続けるコンディショニングやトレーニングです。私のジムではわかりやすいように原始的な10個の動きで表して、それができるように指導しています。
まず最低限の動作が立つ、拾う、座る、歩く。次にしゃがむ、押す、引く、次に踏み込む、ねじる動き、そして最後に走る動作です。この10個の動きができれば、ケガもしづらく、日常生活でラクに体を動かすことができるので、ケガや痛みがなく過ごせるでしょう。年齢を重ねてもこの動作をできるだけ長くできるようにサポートすることも、コンディショニングのひとつの重要な役割ですね。

運藤

広瀬さん おもしろいですね。日高さんのおっしゃる基本動作がいつまでもスムーズにできるようにするためには、心と体と環境を整えるコンディショニングが欠かせません。
先ほど、まずは何でもいいから体を動かすことを始めてほしいとお伝えしました。そのうえで、自分を知り、より的確に効率よく効果を出すためにトレーナーなどに、プロの目でトレーニングを組み立ててもらうこともとても大切なことだと思うんですね。
例えば、風邪を引いたかなと思ったときにまずは市販の薬を飲んでみて、それでも体調が変わらないようなら病院へ行きますよね。トレーニングも同じです。本やYouTubeを見ながら体を動かしてみて思ったような効果が出なかったら、トレーナーに相談をしてみる。そうすると、今まで自分が気づかなかったことに気づくことができます。別に毎回見てもらわなくてもいいです。まずは1回、自分の体はどういう状態かを見てもらう。あとは月に1度など、定期的にプロの目を賢く活用することで、効率よく体を変えていくことができると思います。

トレーナー指導を受ける女性

本橋さん ピラティスやヨガでも、いいインストラクターに教わると何かしらの変化を感じると思います。何を目的に運動をするのかは人それぞれです。そこで、ひとりひとりに合ったアドバイスができるほど、体や動作に関する知識が豊富なトレーナーに指導をしてもらえれば、自分の目的に早く達成することができると思います。
でも、指導者の中には、すごく勉強されている方とそうでない方がいらっしゃるのも事実。教わる側からいろいろと質問を投げかけて、どの程度インストラクターが知識を持っているのかを見極めて、自分から指導者を選ぶことも大事だと思います。

広瀬さん そして、自ら勉強をするような意識の高い指導者の育成も我々の今後の課題です。日高さんや本橋さんのように、高い目標を持ったプロの方々とみなさんで連携して、新しいコンディショニングの仕組みをつくっていけたらいいですね。そして、私たち指導者が発信したコンディショニングやトレーニングで、多くの方に運動をすることの楽しさや大切さを知ってもらえるようになったらうれしいですし。ぜひみなさん、今日から、何でもいいので体を動かすことをはじめてください!

編集部 何だか体を動かしたくなってきました(笑)。先生方のような高い意識を持ったプロが指導してくださるトレーニングジムがあれば、いち早く登録したいと思う方が多いのではないでしょうか。今回はコンディショニングからFYTTE世代の運動との向き合い方まで、詳しく教えていただきありがとうございました。

取材・文/山本美和

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