ランニング、ウエイトトレーニング、スイミング、ヨガなど、自分を変えられると思えばつらい運動も頑張れますし、実際に体が変わればやってよかったと思えるものです。最近では、こうした運動の効果がどんなものなのかも研究によって明らかになってきました。「アンチエイジング」の観点からその詳細を調べた研究が発表されました。
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心肺機能と筋肉を実際に比べてみたところ…
運動は、美容やフィットネス、さらには健康のために大切だというのはもはや言うまでもないでしょう。2017年度に行われたスポーツ庁のアンケートによると、週に1回以上運動をしている日本人はほぼ2人に1人、週に3日以上という人も4人に1人に上っていました。1年間に行った運動で多いのは、男性だと、ウォーキング、トレーニング、階段の上り下り、自転車の順で多く、女性では、ウォーキング、階段の上り下り、トレーニング、エアロビクス・ヨガの順で多くなっていました。
運動することで、老化が防げるとされますが、そうした効果をくわしく調べた研究がこのたび米国から発表され、注目されています。
その研究とは、生涯にわたって運動をして70代に達した人と、そんなに運動をしていない人、さらに20代の人とを比べて、体がどれくらい違うかを心肺の機能や筋肉の状態から調べるというものです。
この研究では、それぞれの人に自転車をこぐ運動をしてもらって心臓や肺の能力を調べたほか、筋肉の状態については実際に筋肉の組織を針で取り、その中に含まれる酵素の状態から筋肉の働きを比べました。
なお、運動をしていると70代とは、50年近くにわたり、週に5回、合計で7時間ほどの運動にずっと取り組んできたという人で、かなり積極的に運動に取り組んできた人を選んでいます。
定期的に1日30分程度の運動を
この研究の結果から、運動をしている人は、心肺機能や筋肉の機能が若く保たれていることが確認されました。本来であれば、低下していくはずの心肺機能や筋肉の中の酵素の働きが運動していない人ほどには下がっていなかったのです。
研究グループが注目した数字のひとつは、「最大酸素消費量(VO2 max)」です。体がどれくらいの酸素を使うかを示した値です。一般的に30歳を過ぎると、10年ごとに10%ずつ低下していきます。それが、運動をしている70代は、20代の水準とまではいかないまでも、座りがちな生活を送っている70代よりも明らかに高くなっていることが確認されました。
さらに、筋肉の働きを筋肉の組織を実際にとり、そこに含まれている酵素の働きから調べましたが、運動をしている70代は20代と変わらないことがわかりました。
心肺能力が高く保たれ、筋肉の働きも維持されているというのが、研究によってはっきりしたのは大きな発見です。
また、今回、男性についてはハードな運動に取り組んできた人と、より穏やかな運動に取り組んできた人で分けて比べており、ここから必ずしもハードな運動でなくてよいこともわかりました。研究グループは、毎日、35分から40分程度の運動することが大切なのではないかと結論づけています。
運動に取り組むことが、いつまでも元気に過ごすためのいわば「処方箋」になっているといっていいかもしれません。研究も参考にしながら、日ごろの運動の取り組み方を考えてみるといかがでしょう。
<参考文献>
J Appl Physiol (1985). 2018 Nov 1;125(5):1636-1645. doi: 10.1152/japplphysiol.00174.2018. Epub 2018 Aug 30.
https://www.physiology.org/doi/abs/10.1152/japplphysiol.00174.2018
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30161005