新型コロナウイルス感染症の拡大により、4月8日、7都府県に「緊急事態宣言」が発令されました。これまでも、不要不急の外出を控えるよう要請されてきましたが、今回の緊急事態宣言の発令で、よりいっそうの「自粛」が求められることになります。感染の恐れに加え、長期にわたって行動が制限される状況に、「コロナ疲れ」を感じている人も多いのではないでしょうか。しかし、ここが正念場。新型コロナ感染症の収束まで、もうしばらくガマンが必要です。そうはいっても……疲れをためない秘訣はない? 日本における疲労研究の第一人者、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身先生に、「コロナ疲れ」とつき合っていく方法を伺いました。
Contents 目次
気分転換の「外出」で、私たちはよけいに疲れていた!?
新型コロナウイルスへの感染者数が増え続けるなか、ライブや演劇などの娯楽、会食や飲み会なども自粛の動きが続いています。感染におびえながら、気分転換もできず、「コロナ疲れ」で、うつうつとした気分になっている人も多いのでは? しかし、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身先生は、“今こそ、疲れをとるチャンス”とアドバイスします。
「感染拡大の影響で、経済的に大変な思いをしている方も多いと思いますが、そういう状況ではないのであれば、自粛生活は、家でゆっくり休める機会ともいえます。
ふだんから会社に8時間以上もいるというのは、そもそも異常事態です。野生動物は、えさを求めて、アウェイに出る時間はせいぜい2~3時間です。平日は、出社で疲れ切っているのに、そのうえ、休日にも出かけることは、むしろ疲労を悪化させる要因になります。疲れを癒すなら、家でのんびり過ごすほうがいいのです。自粛生活は続きますが、これまでのように外出できないことにイライラするより、発想の転換で、『この機会にゆっくり休んでおこう』と考えてみてはどうでしょうか」
疲れは、脳で感じている!
では、「コロナ疲れ」の正体は、何でしょうか。
その前に、「疲れとは何か」について、みていきましょう。私たちは、疲れは体で感じるものだと思っていますが、「じつは、疲れの正体は、脳の疲れなのです」と梶本先生は話します。
「運動して疲れたといっても、多少の運動では、筋肉や臓器はダメージを受けません。激しいスポーツをしたり、1日中歩き回ったりして足腰が痛くなるのは、筋肉の痛みであって、疲労とは別ものです。
運動中の人間の変化を観察すると、もっとも変化が激しいのは、心拍や呼吸です。運動時は、0.01秒単位で、心拍や呼吸を調整しています。また、体が熱くなったら汗をかくなど、体温調節機能もフル活動しています。これらを司るのが、脳の自律神経です。つまり、自律神経の使い過ぎが、疲れの原因なのです」
「コロナ疲れ」は、いわばメンタル的なストレスです。ストレスがかかった状態も、自律神経の交感神経を刺激します。コロナ疲れも、自律神経の疲れというわけです。
在宅時間が長くなり、スマートフォンやパソコンで、新型コロナ関連のネットニュースを見続けてしまう人もいるのではないでしょうか。あるいは、SNSや動画、ゲームが気分転換になっている人もいるかもしれません。
「じつは、スマホやパソコンによる眼精疲労も、自律神経の疲れです。本来、目のレンズは近くを見るときには副交感神経、遠くを見るときには交感神経が優位になるよう設計されています。獲物を狩る交感神経優位な状態では遠くを、赤ちゃんをあやすような副交感神経優位なときは近くを見るのが自然なのです。しかし、興味・関心が尽きないスマホやパソコンは交感神経を刺激します。その結果、脳は交感神経優位にもかかわらず、目に対しては近くを見るために副交感神経の刺激が必要なります。その矛盾した状態に、自律神経が疲れるのです」
もしかしたら、スマホの見過ぎも、コロナ疲れを加速させているのかもしれないので、要注意です。
コロナ疲れを解消する3つの秘訣
コロナ疲れを解消するには、自律神経を必要以上に疲れさせないことが重要です。
主な対策は、次の3つです。
●質のいい睡眠をとる
「ベッドにスマホを持ち込まないこと。寝る30分前には、スマホを使うのは終わりにします。また、夕方以降は、カフェイン入りの飲みもの(コーヒー、紅茶、緑茶など)を控えます。寝る前の飲酒も、途中で目が覚める原因になるので控えましょう」
●疲労回復に効く食材をとる
「“抗疲労成分”として注目されているのが、イミダペプチドです。鶏むね肉に豊富に含まれています。1日100gを2週間続けて食べると、疲れにくい体になります。コンビニなどで売っている“サラダチキン”1パックが約100gです」
●適度な運動
「体を動かすことで、疲労を回復させる物質が分泌されるため、適度な運動をすることで、疲れがとれます。ただし、激しい運動は逆効果。ジョギングも、疲れをとるという意味では、やり過ぎです。汗をかかない程度のウォーキングや散歩がおすすめです」
屋外を歩くことは、感染リスクも低いとされています。人との距離を保って、歩きましょう。
コロナ疲れを解消しながら、この難局を乗り切っていきたいですね。
取材・文/海老根祐子