「何をしているわけでもないのに、毎日疲れてしょうがない」「疲れの原因が思い当たらない」と正体不明の疲労に悩んでいる人が多いかもしれません。正体不明の疲れの原因、それはずばり「体を動かしていないこと」だというのが、さかいクリニックの酒井慎太郎さん。「でも疲れているのに体を動かすなんて、無理」という人もいますよね。そんな体を動かすのが苦手な人でも習慣化できるほどの簡単なストレッチが酒井さんおすすめの関節のケア。ぜひ、トライしてみませんか?
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しつこい疲れの解消には、“筋肉”ではなく“関節”のケアが有効!
疲れていればいるほど、体を動かすのが面倒になる気持ちはよくわかります。でも、しつこい疲れを解消し、絶対に疲れない体になるためにも、「疲れているから動かない」は絶対NG! なぜなら、動かないでいると、さらに疲労がたまってしまうからです。
「たとえば、イスに座って同じ姿勢でパソコン作業を続けた後、ふいに立ちあがったときに体が硬くなったと感じたことはありませんか? その感覚こそ、動かさないことで疲労がたまった証拠。そのままにしていると、疲れやだるさがやがて痛みにつながってしまいます」(酒井さん)
では、どんな風に体を動かせば、疲れやだるさが消えるのかと言うと、ポイントは“関節”にあります。多くの人が“筋肉”だと考えがちなのですが、じつはそうではないのです。
「筋肉がカギを握るのならば、マッサージでケアすれば疲労は消えるはずです。でも、マッサージを受けても、その瞬間しかラクにならなかったり、すぐにまた疲れてしまうのであれば、それはすでに筋肉レベルではない疲労。筋肉のさらに奥にある“関節”に異常が起こっているサインなのです。また、筋肉が少ないから疲れやすいんだと考えて、筋トレをするのも逆効果です。なぜなら、筋肉量と慢性疲労には関係がないから。筋肉ムキムキの男性でも慢性疲労に悩まされる人はいますし、あなた自身も、今よりも体格が小さく、筋肉量が少なかった子どもの頃は、疲れに悩まされていなかったはずです。あなたを悩ませる疲れやだるさの原因は、“関節”にありそうだとわかっていただけたでしょうか。『関節を動かさない=体を動かさない』ということなのです。関節が固まってくると、筋肉の機能低下も起こり、血流も悪くなります。すると、冷えや自律神経の乱れまで起こります。しつこい疲れを撃退し、健康な体を手に入れるためにも、いますぐ関節のケアを始めましょう!」
では早速、そのつらい疲れを解消してくれる関節のストレッチをご紹介します。
肩こり知らずの美姿勢になれる「背骨の関節ストレッチ」
背骨の関節ストレッチは、ふたつの動きをセットで行います。ひとつめの動きは背骨を後ろに反らし、もうひとつの動きでは背骨を前に反らせます。なぜふたつの反対の動きを組み合わせるのかというと、背骨に沿った部分にある脊柱起立筋という筋肉もバランスよく動かすため。関節を前後に動かせば、筋肉もそれに合わせて縮んだり伸びたりするため、より効果的に疲れを解消できます。
実際にストレッチをした人からは、「すぐに体が軽くなった!」「猫背になりやすかったけれど、いい姿勢がキープできるようになった」「つらい肩こりがなくなった」「腰のハリ感が解消された」など、喜びの声が届いています。
ストレッチはいつ行ってもいいですが、おすすめは「入浴後」と「起床時」。
入浴すると、固まっていた関節がほぐされるので、その状態でストレッチを行えば効果が出やすいのです。起床時に行えば、1日を最高のコンディションでスタートできます。
「オットセイストレッチ」→「ネコストレッチ」→「オットセイストレッチ」の順で、実際に行ってみましょう。
背骨の関節ストレッチ(1) オットセイストレッチ
オットセイストレッチは、背中の関節を反らせることを意識して行いましょう。
1 硬い床にうつぶせになる
フローリングや畳などの硬い床の上にうつぶせになる。手のひらが首の横にくるように両手を床につけて、大きく息を吸う。
2 上体を起こして背中を反らす
息を吐きながら、おへそが床から離れるぐらいまで、ゆっくり腕を伸ばして上体を起こす。その体勢を1分間キープする。
背骨の関節ストレッチ(2) ネコストレッチ
ネコストレッチは、背中の関節をひとつひとつ丸めるような意識で行います。
1 硬い床に正座をする
硬い床の上に正座をして、大きく息を吸う。
2 上体を倒して背中を丸める
息を吐きながら両腕を前に伸ばしていき、体をゆっくり丸めて上体を前方に倒す。その体勢を1分間キープ。
「オットセイストレッチ」→「ネコストレッチ」→「オットセイストレッチ」を1セットとして、1日に1~3回行いましょう。習慣にすることで、絶対に疲れない体が手に入ります!
O脚・X脚や腰痛をケアできる美姿勢ウォーク
関節疲労を解消するためには、「姿勢よく歩く」ことが一番です。そんな簡単なことでいいの?と思われるかもしれませんが、正しく歩けば効果的な全身運動になります。でも、実際には正しく歩けている人はごく少数。歩くことは前に進む動きなので、どうしても前方に重心をかけがちで、前傾姿勢になってしまうのです。速く歩くと、その傾向はさらに強まります。そうなると、せっかく歩くという最高の運動をしているのに、その効果は半減してしまうのです。
姿勢よく歩く際の最大のポイントは、「体重の約7割を後ろにかけるような感覚で、できるだけいい姿勢を保ちながら歩く」ことです。
ほかにも、4つのポイントがあります。
(1) あごを引く
(2) 肩を開いて、胸を張る
(3) 腰を少しだけ反らす
(4) 後ろ脚で地面を蹴るときに、ひざを伸ばす
同時にたくさんのことを意識して歩くのは難しいでしょうから、まずは体重の7割を後ろにかけるというイメージで、美姿勢ウォークにトライしましょう。
現在、疲れとともに、腰の痛みを感じている方には、とっておきのテクニックがあります。
それは、美姿勢ウォークをしながら、腕をよく振ること。痛みが出やすいほうの腕を後方にしっかり振ることで、関節にひねりを加えると、痛みがしだいに消えていきます。美姿勢ウォークの際には、靴底が少し曲がるようなやわらかいもので、重さも軽い靴のほうがベターです。
また、靴底のかかと部分が5mm以上減ってきたら、新しい靴に変えるか、靴底を取り替えましょう。そのままはき続けていると、特にひざの関節疲労が起こり、O脚やX脚がひどくなり、疲れやすい脚になってしまうので要注意です。
以上、簡単な3つの関節ケア、いかがでしたか? これらの動きに加えて、疲れには冷えも厳禁ですので、しっかり湯船にも浸かりましょう。入浴のポイントは、39度ほどの少しぬるめのお湯をバスタブに張り、首までつかって全身をじっくり温めることです。全身浴はのぼせやすいので、1回の入浴で10分程度の入浴時間が目安です。入浴中に両脚を曲げたり伸ばしたりするのも、おすすめです。全身の血行がよくなって、関節や筋肉もゆるんでリラックスできます。
在宅が続くなかで、疲れがとれないと感じている人はぜひこの機会に手軽な関節ケアで少しずつ体を動かす習慣をつくってみませんか?
撮影/玉井幹郎 文/出雲 安見子 イラスト/クロカワユカリ
『絶対に疲れない体をつくる関節ストレッチ』(KADOKAWA)