人の疲れはすべて、脳の疲れです。運動しているときや仕事で集中力を発揮しているとき、ストレスを感じているときなどは、脳の自律神経の交感神経が過度に興奮するため、自律神経が疲れてしまうのです。さらにくわしい疲労のメカニズムを、疲労研究の第一人者で、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身先生に伺いました。
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活性酸素で自律神経の細胞が傷ついて、働きがパワーダウン
「自律神経が疲れる」とは、どういうことなのでしょう。もう少し、疲れのメカニズムを掘り下げてみます。
「交感神経の興奮した状態が続くなど、自律神経の活動量が増えると、細胞は多くの酸素を必要とします。その結果、大量の活性酸素が発生します。すると、活性酸素によって、細胞がさびて傷つくという酸化が起こります。それが疲れの正体。細胞が傷つくことで自律神経の働きがパワーダウンしてしまうのです」
一方で、自律神経の細胞がさびて傷つくと、それを修復するメカニズムも同時に動き始めます。
「自律神経の細胞がさびて傷つくと、疲労物質というものが発生しますが、体内で疲労物質が増えると、それに反応して、疲労を回復させる物質も発生します。それが、細胞のさびをとって、ダメージから回復させてくれるのです。たとえ激しい運動をしても、1~2日経てば、その疲れがとれるのは、この物質が働いてくれるからです。
しかし、仕事や運動などで活動量が多くなれば、細胞が傷つき酸化する量が修復される量を上回り、疲れがたまってしまいます」
疲れた人は、老け顔になりやすいい!?
さて、ここからは、疲れは、美容にも影響するというお話です。
「疲れている人は、なんとなく老けてみえるものですが、実際に老化が進んでいるのです。老化も、細胞の酸化が原因です。活性酸素によって、一時的に細胞が傷つくのが疲れで、その傷が修復されずに傷ついたままになるのが老化です。
疲れがどんどんたまっていくと、傷ついた細胞の修復が間に合わず、肌の新陳代謝にも影響。肌がくすんだりして、老け顔になってしまうのです」
疲労を回復させる物質の出る量やその働きは、加齢とともに衰えていくそうです。年をとって、肌荒れが改善しにくい、疲れがとれにくいと感じるようになるのは、これが原因です。残念ながら、気のせいではないのです。
「自律神経の働きを示す指標に『パワー値』というものがありますが、パワー値と体力は、ほぼイコールといわれています。つまり、自律神経が老化すると、体力も落ちるというわけです」
取材・文/海老根祐子