リモートワークの増加に伴い、連日のデスクワークで目を酷使している人も多いのではないでしょうか? そんな今、気をつけたいのが目の疲れや乾き、不快感といった症状の原因となる“涙液トラブル”。放っておくと、日々の仕事や暮らしに影響が及んでしまう可能性もあるといわれています。
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「気づいて! 涙液トラブル啓発委員会」が発足
2020年8月17日、現代社会で起こりうる目のトラブルに警鐘を鳴らす目的で「気づいて! 涙液トラブル啓発委員会 supported by 参天製薬の発足カンファレンス」がライブ配信で行われました。カンファレンスに参加したのは、東邦大学医療センター大森病院眼科・堀裕一先生、順天堂大学医学部付属順天堂医院眼科・猪俣武範先生、ケイシン五反田アイクリニック・内野美樹先生、東京歯科大学市川総合病院眼科・山口剛史先生。最近増えている涙液トラブルとは一体どんなものか。どうしたら予防・治療できるのか、先生たちのお話からわかってきたことをお伝えします。
“涙液トラブル”って何?
目の乾き、疲れ目、かすみ目など、私たちにとって身近な目の不調。その原因と考えられているのが“涙液トラブル”です。
そもそも涙には以下のように、目を守る大切な役割があります。
◎角膜など目の表面の組織をうるおし、乾燥から守る
◎目の表面の組織に栄養や酸素を供給する
◎外界から侵入する菌や異物から目を守る
◎角膜の表面の凹凸をなめらかな曲面にすることで、きれいな画像を脳に届ける
涙の機能がきちんと働いている人の目は涙が目を均一に覆っています。しかし、涙液トラブルを起こした目は、涙が目を均一に覆うことができず、「涙が乾きやすい」「うまく分泌されない」「涙の成分がきちんと生成されない」といった不安定な状態になります。そして、目の乾きや疲れ目、かすみ目などさまざまな不快な症状が現れるのです。
最近では、涙液トラブルが原因で視力の低下が起こることもわかっており、視力検査では1.5などのA判定でも、実際に見えている視力は低下している場合もあるといいます。とくに、車を運転している人は注意が必要です。
また、涙液トラブルが発生する頻度が多くなったり重症化したりすると、ドライアイや角膜の傷、目の炎症などの病気を引き起こす可能性も。放っておくと肩こりや頭痛が引き起こされ、生産性が低下してストレスを覚える、などの不調が現れることもあります。
こんな症状があったら、あなたも涙液トラブルかも?
つい見過ごしがちな涙液トラブルですが、大切なのはふだんから目の健康を意識して、ケアしていくことです。以下の生活習慣・症状に5つ以上当てはまったら、あなたも涙液トラブルの可能性があります。
□パソコンを毎日連続1時間以上見る
□通勤時にスマートフォンを見る
□スマートフォンで動画をよく見る
□平均睡眠時間が5時間以下
□寝ても疲れ目が解消しない
□朝から目がかすむ
□コンタクトレンズを使用している
□光がまぶしい
□目がショボショボする
□目が痛いことがある
□目を10秒以上開けていられない
□目が重たい感じがする
パソコンやスマートフォンを長時間使用する人や睡眠時間が少ない人、コンタクトレンズ愛用者に加え、アイメイクをしっかりしている人も要注意。
さらに、女性が気をつけたいのがメイク。つけまつ毛の接着剤やアイメイク材がまつ毛の生え際より内側入ると、皮脂が分泌される穴がふさがり、涙が蒸発しやすくなってしまいます。それにより、目の乾燥や違和感を感じることがあります。
在宅勤務で目を守るたにの注意点とは?
今後、在宅勤務がますます普及していくなかで、涙液トラブルを予防するにはどうしたらいいのでしょうか。トラブルを起こさない、悪化させないために次のことを注意しましょう。
・パソコン作業中は意識的にまばたきを行い、1時間作業したら15分休憩をとる
・パソコンの画面に照明や太陽の光が写り込まないように注意。画面の輝度は500ルクス以下とし、輝度やコントラスを調整する
(ルクス=照明の明るさの程度を表す単位)
・部屋の明るさは300〜1000ルクスに調整する
・体型に合った高さの机や椅子を選ぶ
・室内では空調の風が直接顔に当たらないように注意し、乾燥している場合は加湿器などを利用する
・目の疲れを感じたら、温めた蒸しタオルをまぶたの上に乗せ、5分ほど休憩する
・コンタクトレンズの使用中に目がゴロゴロする、充血するなどの症状が出る場合は、短時間使用にしてメガネと併用する
(※参照:厚生労働省「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備」)
上記に気をつけていても症状が改善しない場合は、ドラッグストアで購入できる市販の点眼薬を使ったケアも有効です。市販薬は処方薬と比べて副作用が出にくいよう、成分の種類や濃度が調整されています。また、開封後も長く保存できるように防腐剤が入っているものもあるので、用法用量を守った使用を心がけましょう。
涙液トラブルはアレルギー性結膜炎などを併用する場合も多くみられます。また、違う病気が隠れている場合もあるので、軽視するのは危険。自己判断せずに、必ず眼科を受診しましょう。
文/渡辺裕希子