人は睡眠というメンテナンス時間をもたずに脳をフル稼働させていると、過度な負担がかかり、いつかはオーバーヒートしてしまいます。すると正しい判断や司令、冷静な思考力などが奪われ、精神面、身体面、行動面など、あらゆる方向にダメージが現れてしまうそうです。今回は、睡眠コンサルタントの友野なおさんに「睡眠時間の大切さと最終決定に最適な時間帯」についてを教えていただきました。
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夜に不要な買い物をしやすい理由とは?
睡眠には「脳を作る・脳を育てる・脳を守る・脳を修復する・脳をよりよく活動させる」という重要な役割があります。脳の重量は体全体の約2%しかないにも関わらず、エネルギーの消費量は安静時であっても18%にまで及ぶといわれ、私たちの脳は日中、莫大なエネルギーを使って活発に働き続けているのです。
筋肉疲労であれば、しばらく安静にしていれば一定の回復効果が得られますが、疲労した脳を回復させるためには睡眠以外に方法はありません。人間の脳は高度に発達しているため、毎日7時間程度の睡眠をとらないと充分に脳を回復させることができないのです。携帯やパソコンなども充電せずに使い続けていたら、いつかは電池がなくなって、起動しなくなってしまいますよね。それと同じです。
ちなみに、体長約1.5mもの体を持ちながら、ビー玉程度の脳しか持たないマグロは、夜になると4~5秒のごく短時間、急にスピードを落として眠ります。体重に比べてわずかな重量の脳しか持たないマグロは、人間と違いごくわずかな睡眠時間しか必要ないと考えられているのです。
人間の場合は睡眠というメンテナンス時間をもたずに脳をフル稼働させていると、過度な負担がかかり、いつかはオーバーヒートしてしまいます。すると正しい判断や司令、冷静な思考力などが奪われ、精神面、身体面、行動面など、あらゆる方向にダメージが現れてしまうのです。特に、人間が人間らしくあるための機能の大部分に関与している、脳の「前頭連合野」という部分の働きが低下することは、さまざまな悪影響を及ぼします。
例えば、不必要な行動への抑制が難しくなったり、周囲の空気や他人の感情を読むことや自分の感情をコントロールすることが困難になったり、注意力が散漫になったり、倫理的な思考力ややる気、記憶力が低下したりなど。
身近なところでは、夜になると要らないものをネットショッピングやテレビショッピングで購入してしまうことや、ふだんならスルーできるようなメールの内容にカチンときて強い口調で返信してしまうなど…。皆さんは経験ありませんか? どちらも朝がきたら後悔しかありません。
夜は脳が疲れて冷静なジャッジができていない時間帯なので、適切な意思決定ができなかったり、つい感情にまかせて行動してしまったりしやすくなるものです。少なくとも自分が疲れていると感じているときは、ショッピングもメールの送信も一晩寝かせて、ぐっすり眠った翌朝に最終決定するようにしましょう。