うつ病や不安症などの気分障害は日本を含めて世界的に多く、誰もがかかる可能性のある病気といわれています。精神への負担が重くなり過ぎないよう、気分転換に気をつけているという人もいるでしょう。最近のさまざまな研究結果の分析から、健康によい善玉菌「プロバイオティクス」を摂取することがうつ病に効果がありそうという報告がありました。ひとつの工夫として参考にできるかもしれません。
Contents 目次
乳酸菌やビフィズス菌などの効果は?
腸と脳は深く影響し合っているため(「脳腸相関」や「脳腸軸」などと呼ばれます)、腸内の環境は心にも影響すると考えられています。腸が「第2の脳」と表現されることも。実際に研究も進められています。
今回、英国の研究グループは「うつ病」と「不安障害」と食との関係が注目されていることに着目し、プロバイオティクスやプレバイオティクスの影響を調べた研究(15年以内の間に報告されたもの)を集め、あらためて分析してみました。プロバイオティクスは、善玉の腸内細菌を摂取するもので、プレバイオティクスは腸内細菌が育つように腸内細菌のための栄養素を摂取するものです。腸活という言葉がありますが、まさしく腸内環境をよくするための活動が心にどんな影響を与えるかに注目したのです。
研究グループは、多数ある研究のなかから、うつ病や不安障害と診断された人に対するプロバイオティクスなどの有効性を点数評価するなどの選択基準に照らし、7件の研究を選びました。研究の構成や方法はそれぞれかなり異なるものの、すべてが主に乳酸菌やビフィズス菌などに属するプロバイオティクス1つ以上の効果を調べており、そのなかの1件はプレバイオティクスと組み合わせた場合を、もう1件ではプレバイオティクスのみの場合も分析していました。
うつ病の傾向が改善する
分析で確認されたのは、プロバイオティクスの摂取によって、うつ病の傾向が改善すること。プロバイオティクスは単独で摂取した場合、あるいはプレバイオティクスと一緒に摂取した場合において、うつ病の程度を示す点数に改善が見られると、7件の研究すべてで結論。またストレスに関係している検査値(血液中のコルチゾール値など)も明らかによくなるという結果になり、研究に含まれたプロバイオティクス12菌種のうち、11菌種が有益でした。プレバイオティクスについては、単独ではうつ病への明らかな効果はないものの、プロバイオティクスと組み合わせることで効果が現れるようでした。
この結果から研究グループは、プロバイオティクス及びプレバイオティクスとの併用がうつ病や不安症状をもつ人にとって有益だと指摘しています。プロバイオティクスは、腸内の炎症を減らす効果や、脳腸相関で重要な役割を果たす必須アミノ酸「トリプトファン」への影響が認められています。過敏性腸症候群など、ほかの病気ももっている場合が多いうつ病や不安障害の人では、ダブルの効果がありそうとのこと。効果のメカニズムが解明されるにつれて、個人に合った治療法にもつながるかもしれないようです。ふだんから、ビフィズス菌や乳酸菌を意識して摂取していると、知らないうちに心の健康も保たれているのかもしれませんね。
<参考文献>
腸の働きは消化吸収だけではない! “第2の脳”といわれる腸のヒミツ
https://fytte.jp/healthcare/64668/
Probiotics alone or combined with prebiotics may help ease depression
https://www.bmj.com/company/newsroom/probiotics-alone-or-combined-with-prebiotics-may-help-ease-depression/
Noonan S, Zaveri M, Macaninch E, et alFood & mood: a review of supplementary prebiotic and probiotic interventions in the treatment of anxiety and depression in adultsBMJ Nutrition, Prevention & Health 2020;bmjnph-2019-000053. doi: 10.1136/bmjnph-2019-000053
https://nutrition.bmj.com/content/early/2020/06/09/bmjnph-2019-000053