歯茎が細菌に感染して炎症を起こす歯周病。気づかないうちに進行することもあり、影響は歯だけにとどまらず、新型コロナウイルスも含めウイルスに感染しやすくなったり、女性ホルモンへの影響や肥満、認知症などとも関係したりします。このたび海外の研究で食道、胃がんとの関係性も示され、なおさら早めの対策に気をつけるのが重要といえそうです。
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15万人近くのデータを分析
歯周病や虫歯の原因は、口のなかで病原菌が増えてしまうこと。歯と歯茎のすき間から細菌が侵入し歯肉に炎症を起こすほか、さらに進むと歯を支える骨を溶かしてしまいます。もともと口のなかには微生物が存在していますが、歯周病になると口内の微生物の環境が悪化してしまうことになります。こうした状況はがんと関係する可能性が、これまでの研究からわかってきていました。
このたび米国ハーバード大学をはじめとする国際的な研究グループが注目したのは、歯周病と胃がんや食道がんとの関連です。歯周病があると胃がんや食道がんになりやすくなるのかどうか。虫歯などで歯を失っている場合の関連も検証しています。分析に用いたのは米国で医療従事者を対象として行われた長期間の追跡調査のデータで、10万人近くの女性と5万人近くの男性の歯科と医療に関する記録やアンケート結果です。22〜28年の追跡期間中に、199人が食道がんに、238人が胃がんになっており、がんになった人と歯周病との関連性を調べました。
歯を失っている人もリスクが上がる
こうしたわかったのは、歯周病があった人は、なかった人に比べて、食道がんになるリスクが43%高く、胃がんになるリスクが52%高いことです。さらに、2本以上の歯を失った人も歯を失っていない人に比べて、食道がんと胃がんになるリスクがそれぞれ42%と33%高くなっていました。また、それらを合わせて分析すると、歯周病があった人は、歯を失っていてもいなくても、歯周病がなく歯も失っていない人に比べると、食道がんになるリスクが59%も高くなるという結果が明らかになりました。
研究グループは、「レッド・コンプレックス」と呼ばれる、病原性の高い3種の歯周病菌のうち2種が食道がんに関連する証拠があることを挙げているほか、口のなかの衛生状態が悪いと、発がん性が認められている「ニトロソアミン」という物質ができやすいことなどを指摘しています。がんと歯周病との関連性にはまだ未解明の部分も多く残っていると研究グループは述べており、さらに研究を進める必要があるとしています。
<参考文献>
歯周疾患の有病状況(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-004.html
Gum disease may raise risk of some cancers
https://www.bmj.com/company/newsroom/gum-disease-may-raise-risk-of-some-cancers/
Lo CH, Kwon S, Wang L, et al. Periodontal disease, tooth loss, and risk of oesophageal and gastric adenocarcinoma: a prospective study [published online ahead of print, 2020 Jul 20]. Gut. 2020;gutjnl-2020-321949. doi:10.1136/gutjnl-2020-321949
https://gut.bmj.com/content/early/2020/06/30/gutjnl-2020-321949
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32690603/
妊娠、出産にも影響! 歯周病は女性こそ注意したい病気
https://fytte.jp/healthcare/109024/