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CATEGORY : ヘルスケア |オーラルケア

妊娠、出産にも影響! 歯周病は女性こそ注意したい病気

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歯ブラシを歯に当てる女性画像

歯周病は、歯周病菌による感染症。じつは、歯周病はウイルス感染のリスクを高めるほか、妊娠・出産にも影響。女性こそ気をつけたい病気といえます。歯周病について、歯科医の照山裕子先生にうかがいました。

監修 : 照山 裕子

歯学博士。東京医科歯科大学非常勤講師。日本大学歯学部卒業、同大学院歯学研究科にて博士号取得。口腔および頭頸部のがん手術などによって失われた機能を回復させる「顎顔面補綴」を専攻した臨床経験から、予防医学の重要性を提唱する。「日本人の口腔ケアへの意識を変えるにはどうしたらいいのか?」という課題の答えのひとつとして考案、推奨している「毒出しうがい」が書籍化され、13万部のベストセラーに。現在は大学病院および全国の歯科クリニックにて診療を続ける傍ら、テレビ・ラジオなどのメディアにも多数出演。『日経woman』のオフィシャルアンバサダーも務める。

Contents 目次

歯周病は、歯周病菌による感染症。18歳頃から感染リスクがアップ

歯と歯ぐきの画像

はじめに、下の項目をチェックしてみましょう。

□歯みがきで出血することがある。
□歯ぐきがむずがゆい。
□歯ぐきに腫れがある。
□冷たい食べものが歯にしみる。
□朝起きたときに、口がネバネバする。
□歯が長くなったような気がする。
□歯石がたくさんついている。

いかがでしたか? ひとつでもあてはまる項目があったら、歯周病の可能性があります。

歯周病は、歯の周りに溜まった汚れの中に潜む歯周病菌の毒素に加え、喫煙などの生活習慣、抵抗力の低下や、かみ合わせの過度なストレス等が複合して生じる病気です。歯周病菌は、生まれたばかりの赤ちゃんの口には存在しませんが、箸やスプーンの共用、キスや飲みものの回し飲み等で感染すると考えられています。程度の差こそあれ、日本では成人の8割が歯周病といわれており、決して人ごとではありません。
「一般的には、歯周病菌の中でもタチの悪い菌がすみつきはじめる18歳頃から歯周病リスクが高まってくると考えられています」

歯周病は月経前に悪化? 女性ホルモンを好む歯周病菌も

口を開ける女性と4本の手の画像

歯周病菌はプラーク(歯垢)という粘り気のある汚れの中で、食べかすなどをエサに増殖します。特に、歯と歯ぐきの間のスキマ=歯周ポケットなど空気にふれない場所を好み、そこにすみついて歯ぐきに炎症を起こします。

歯周病は、状態によって4段階に分かれます。
第1段階:歯肉炎
歯と歯ぐきの間に入り込んだ歯周病菌によって炎症が起き、歯ぐきが赤く腫れます。痛みはありません。歯みがきで出血することがあります。
第2段階:軽度の歯周炎
歯ぐきの炎症が進み、腫れがひどくなる。歯を支える骨が少しずつ溶かされ始め、指で動かすと歯がわずかに動きます。痛みはありません。
第3段階:中度の歯周炎
歯がぐらつき始め、かたいものが噛みづらくなります。歯ぐきに出血、膿(うみ)が見られ、口臭が強くなります。
第4段階:重度の歯周炎
歯を支える骨が大きく溶かされ、歯が抜け落ちます。

歯周病菌には300種以上があり、病原性の高い“レッドコンプレックス”と呼ばれる歯周病菌に感染すると重症化する傾向にありますが、多くの歯周病は無症状の時期も長く、第1段階から第4段階まで、何年もかけてじわじわと進行していきます。歯科医院で歯周病の検査を受けるだけでなく、病原性の高い菌がいるかどうかを特定することも、病気を治すポイントになってきます。

「歯周病菌の中には、女性ホルモンをエサに増殖するものがあります。月経サイクルの中で、女性ホルモンの分泌量が増える月経前に、歯ぐきから出血することがありますが、こうした症状が持続する場合は歯周病の疑いがあります」
ホルモンバランスによる一過性のものか、病気が進行しているサインなのかを見極めることは女性にとって重要です。

「また、妊娠中も女性ホルモンが急激に増えるため歯周病リスクも高まります。つわりなどで歯みがきがおっくうになることも悪化につながる要因です。歯周病が早産や低体重児出産を招くこともあり、妊娠を望む女性は、将来に向けた備えとして入念な口腔ケアを心がけましょう」

女性特有の症状以外にも、歯周病は、新型コロナウイルスやインフルエンザ等のウイルス感染症のリスクを高めたり、糖尿病や動脈硬化といった生活習慣病につながったり、アルツハイマー型認知症の進行を早めたりなど、全身の健康に影響を及ぼします。高齢者に多い誤嚥性肺炎も、口の中の歯周病菌が誤って肺に入ることで起きるといわれています。

歯周病治療&予防に、歯みがきは大事じゃない!?

歯ブラシを持った女性の口元の画像

第1段階の歯肉炎の状態なら、歯科医院でプラークや歯石をとってもらい、セルフケアの効果が出やすい環境に導くことで改善します。
「一度感染したら、歯周病菌をゼロにすることは難しいですが、プロによる定期的なクリーニングと正しいセルフケアを続けることで、歯周病の進行を止めたり、発症を予防したりすることができます。歯科医師や歯科衛生士がケアをしてあげられるのは、その人の日常生活においてほんのわずかな時間でしかありません。主治医は自分自身です。セルフケアをしっかり行っていきましょう」

照山先生は、ブラッシングから一歩先に進んだ歯周病ケアとして、「ブクブクうがいとデンタルフロスに重点をおいて」とアドバイスします。
「口内ケアというと、歯ブラシを使った歯みがきに重点をおく方が圧倒的に多いですが、すでに習慣になっているブラッシングはそれほど重要視しなくてもかまいません。日本人は食後に歯みがきを行う習慣があるものの、じつに成人の8割が歯周病というのは、歯みがきのポイントがずれているからだと思います。プラークがつきやすいのは、歯と歯ぐきの境目や歯と歯のすき間ですが、患者さんを診察していても、歯の表面しか磨けていない人が多いと感じます。

じょうずではない歯みがきに時間をかけるより、デンタルフロスや歯間ブラシをしっかり使ったほうが、歯周病ケアには効果的です。デンタルフロスを歯に沿わせるようにぐるっと動かすと、歯周ポケット内のプラークも絡めとることができます。必ず使いたいのは、寝る前。睡眠中は唾液が少なくなることで、歯周病菌をはじめとする細菌が繁殖しやすくなるからです。さらに、ブクブクうがいで、歯周病菌のエサとなる食べかすをきれいに洗い流し、プラークができないように、お口の清潔を意識していきましょう」

ブクブクうがいはこちらの動画から見ることができます。

取材・文/海老根祐子 

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