いまだ収束の兆しが見えない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大。生活にさまざまな影響が生じていることで、不安やストレスを感じている人も多いのではないでしょうか。こうしたなか、海外の研究から、ヨガがそうした心の問題を解いてくれそうだという結果が明らかに。心身をリフレッシュさせるヨガの効果にあらためて注目が集まりそうです。
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ヨガの効果はどのように現れる?
ヨガに取り組む目的はさまざまかもしれません。美容を意識して、ボディーメイクをヨガに求めている人もいるかもしれませんし、リラックス効果を期待している人もいるでしょう。幅広い効果が見込まれるヨガですが、実際に生活に支障を来たすような不安感を覚えるメンタルの問題である「不安障害」に対する効果がこのたび注目されています。
米国ニューヨーク大学医学部の研究グループは、不安障害にヨガがどのような効果を発揮するのかを検証しています。2013年12月から2019年10月の間に医療施設2か所で不安障害と診断された男女226人を選び、「認知行動療法」「クンダリーニヨガ」「ストレスマネジメント教育」の3グループにランダムにふり分け、不安障害に対する効果について調べたのです。
「認知行動療法」のグループ(90人)は心理教育、認知行動療法(不適応な思考や悩みを認識し、適応させる)、また筋肉を意識的にリラックスさせるトレーニングに取り組みました。「クンダリーニヨガ」のグループ(93人)はヨガのポーズに加えて、呼吸法、リラクゼーション、瞑想、マインドフルネスをトレーニングし、ヨガの理論について学びました。「ストレスマネジメント教育」のグループ(43人)は心理教育や心理学、抗うつ薬のストレスへの効果、飲酒、喫煙、運動、食事といった生活習慣の不安障害への影響とその改善の重要性について講義を受けました。
そのうえで、それぞれのグループの参加者は、4~6人ごとに2人の監督責任者によって、毎週1回120分間のセッションを計12回受けています。また参加者には毎日20分間の宿題が与えられました。12週間後には第三者の専門家が、不安障害の症状の変化について評価しました。
ヨガには短期的な症状を和らげる効果
こうしてわかったのは、ヨガには症状を短期的に和らげる効果があるということ。ただ、長期にわたって不安障害を治していくには専門機関での治療を受けるのがよいという結果でした。
まず、3か月経過後、「認知行動療法」と「クンダリーニヨガ」のいずれもが、「ストレスマネジメント教育」よりも、不安障害に対してはるかに効果的であることが示されました。「認知行動療法」のグループでは71%、「クンダリーニヨガ」のグループでは54%、「ストレスマネジメント教育」のグループでは33%の人に意味のある改善が見られていました。6か月後のフォローアップでは、「認知行動療法」は「ストレスマネジメント教育」に比べてより効果があることが示された一方で、「クンダリーニヨガ」の効果が「ストレスマネジメント教育」よりすぐれているとは明確には示されませんでした。
研究グループは「認知行動療法」には不安障害を和らげる効果がしっかりと認められたとし、短期的には「クンダリーニヨガ」の効果も認められると説明します。第一の治療には「認知行動療法」を考える必要がありますが、短期的に和らげる目的でヨガをする意味はありそうです。短期的だとしてもヨガにはやはり心を落ち着かせる効果あることが科学的に証明された今回の研究結果。ヨガは日常生活にとり入れやすくもあるので、少し心が不安定なときには、試してみるとよいかもしれません。
<参考文献>
Yoga Shown to Improve Anxiety, Study Finds
https://nyulangone.org/news/yoga-shown-improve-anxiety-study-finds
JAMA Psychiatry. Published online August 12, 2020. doi:10.1001/jamapsychiatry.2020.2496
https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/article-abstract/2769486