長引くコロナ禍の不安やストレスで、「眠れない」という“コロナ不眠”を訴える人が増えています。また、最近よく眠れないと感じる人も、コロナストレスで体がSOSを出しているのかもしれません。不安な時代の不眠の解消法を睡眠総合ケアクリニック代々木理事の大川匡子先生に伺いました。悩み別に紹介します。
Contents 目次
なかなか寝つけないときは? 不安やストレスを軽減して、リラックス
不安感が強くてよく眠れないという場合は、自分なりにリラックスできることを試してみましょう。
●副交感神経に切り替える腹式呼吸でリラックス
ストレスや不安があると交感神経が優位になり、覚醒機構が働いて、眠れなくなってしまいます。腹式呼吸は、意識的に自律神経を交感神経優位から副交感神経優位に切り替えられる方法です。鼻からゆっくり息を吸って、口から吐くという呼吸を数回くり返してみましょう。気持ちがリラックスして、寝つきがよくなります。
●ぬるめの温度で入浴する
リラックスできる方法として、入浴も効果的。寝床に入る1~2時間前に、ぬるめのお湯につかるのがおすすめです。熱いお湯に入ると、交感神経を興奮して、寝つきが悪くなってしまうので、避けましょう。
太陽を浴びて体内時計を整えれば、スムーズに入眠できる
朝起きて、夜眠るという睡眠のリズムをつくっているのは、体内時計です。寝つきをよくするには、体内時計のリズムを整えることもカギです。
●朝起きたら、太陽の光を浴びる
体内時計は約25時間周期です。私たちは、昼夜24時間周期で生活しているため、放っておくと寝る時間は1時間ずつ、うしろにずれてしまいます。このズレを調整するのは、光です。「夜が更けても眠くならない」という人は、体内時計がズレているせいかもしれません。朝起きたら、カーテンを開けて、太陽の光を浴びるようにしましょう。
●朝食をしっかり食べる
人は、筋肉や内臓にもそれぞれ体内時計を持っています。朝食をしっかり食べることで、内臓の体内時計がリセットされることもわかっています。それが睡眠のリズムをつくる体内時計を整えることにつながります。特に、前日の夕食から翌日の朝食まで、空腹の時間が長いほど、内臓の体内時計のリセット効果は高いといわれています。忙しい朝でも、朝食を食べる時間を確保しましょう。
●夕方以降に、軽い運動をする
深部体温がストンと下がるタイミングで、人は眠気を感じます。寝床に入る3時間前ぐらいに、ウォーキングやラジオ体操などの軽い運動で、体温を上げておくと、ちょうど就寝の頃に体温が下がり始め、スムーズに入眠できます。日中に太陽の光を浴びると、夜に睡眠に関わるメラトニンという睡眠ホルモンの分泌が増え、体温の下降を助けてくれます。ただし、寝る前の激しい運動はNG。交感神経が優位になり、かえって目が冴えてしまいます。
●夜、明るすぎる場所で過ごすことやスマホの使いすぎはNG
夕方以降に、強い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑えられてしまうため、就寝時間がうしろにズレる要因になり、スムーズな入眠の妨げになります。夜に、コンビニなど照明の明るい場所に長い時間を過ごすのは控えましょう。夜にスマートフォンを使い続けることも、メラトニンの分泌が低下するのでNGです。寝る1時間前には電源をオフにして、夜中には使わないようにしたいですね。
朝までぐっすり眠るには? 日中の活動量を上げる
途中で目が覚めたり、眠りが浅くなったりして、「ぐっすり眠った」という熟睡感が得られないのも、よくある不眠の悩みです。ここでは熟睡できる方法を紹介します。
●日中に運動量を増やす&社会的活動に参加する
熟睡感には、眠気を起こす睡眠物質という脳内ホルモンが関係しています。この睡眠物質は、日中の身体的な活動量が多いことや他者と交わって社会的活動に参加することで、多く分泌され、脳にたまっていきます。睡眠物質を一定以下に保つホメオスターシスの働きで、睡眠物質は寝ているときに処理され、その量が多いほど睡眠は深く長くなります。睡眠物質がよく分泌されるように、睡眠中にオフィスや通勤では階段を使ったり、ランチタイムには屋外に出て歩いたりして、生活の中で運動量を増やす工夫をしましょう。さらに、週末には、新型コロナウイルス感染症予防に努めながら、サークル活動やボランティア活動などに参加するのもよいと思います。
●寝る前のお酒は控えめに
アルコールで眠くなるのは、脳をマヒさせる働きのため。寝つきがよくなるかもしれませんが、飲酒後4時間も経つと、覚醒効果のほうが強くなり、入眠から2~3時間で目が覚めてしまいます。また、アルコールの利尿作用でトイレに起きてしまうことも。再び入眠するまで時間がかかり、イライラしてしまうこともあり、熟睡感を得るには、飲酒は逆効果です。夜にお酒を飲むなら、目安はビール大ビン1本、日本酒1合程度です。
紹介した対策は、ちょっとした心がけや今日からでもできることなので、ムリなく日常にとり入れていきましょう。
取材・文/海老根祐子