今年4月から施行された法律で、加工食品の栄養項目の表示のしかたが変更になりました。それは日本人のだれもが気にする必要のある「減塩」に関係する項目。それはいったい何なのか......詳しく紹介します。
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加工食品の栄養表示が 法律により義務化
食品表示の新しい法律、食品表示法が本年4月1日に施行されました。この法律の最大のポイントは、加工食品の栄養表示が義務化されること。さらに、これまで「ナトリウム」だった表示が、「食塩相当量」に変わります。今後、義務表示項目は、「エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量」の5項目となります。
施行にあたって移行措置期間が5年設けられており、これから2020年までにかけて少しずつ、栄養表示がナトリウムから食塩相当量へと変わっていくことになります。
これまでのナトリウム表示は、くらしの中に役立てようとすると、食塩相当量にいちいち計算しなければなりませんでした。「ナトリウム(mg)×2・54÷1000=食塩相当(g)」という計算方法ですが、実は消費者にとっては一般的ではありません。2014 年3月の消費者庁調査では、ナトリウムの表示から食塩相当量を出す計算式を知っていたのは、わずか3・9%に過ぎなかったとされています。たとえば、パンに「ナトリウム800mg」と書いてあれば、食塩相当量は約2gですが、なかなかピンとこないのではないでしょうか。
日本人の健康政策上、減塩対策がとても重要なのですが、このようにナトリウム表示だと活用しづらく健康指導のうえでもネックになっていました。医師や栄養士からもナトリウム表示を食塩相当量に統一することが強く求められ、消費者庁での検討会における議論を経て、ようやく「食塩相当量」の表記が新法で実現したのです。
くらしに活用しやすいよう 「塩分相当量」にこだわる
しかし、すべての食品が「食塩相当量」の表示になると、食塩を添加していない食品では誤認するケースが出てきそうです。たとえば、ペットボトルのお茶など食塩を添加していないのに「食塩相当量」と表示があると、「熱中症対策で食塩を添加してあるのかしら」と思ってしまう人もいるかもしれません。
そんなケースも想定して、新基準ではナトリウム塩を添加していない場合、ナトリウム〇mg(食塩〇g)とする表示も例外として併せて認めることになりました。この結果、食塩相当量は2通りの表示方法となります(図1)。また、ナトリウムと食塩を併記する場合は、きちんと理解されるようセットで同じ枠内で表示をすることになっています。
なお、ナトリウム○mgを表示する場合は、塩化ナトリウム(食塩)無添加はもちろんですが、塩化ナトリウムを含むソースやしょうゆ、グルタミン酸ナトリウム(調味料)やクエン酸ナトリウム(酸味料など)といった食品添加物由来のナトリウム塩も無添加であることが条件となります。一方、昆布などのうまみ成分が強い海藻もグルタミン酸ナトリウムが含まれていますが、これらはもとの素材に含まれるもので、ナトリウム塩を添加したことにはなりません。このように食塩以外のナトリウム塩も食塩相当量として表記することは、実は科学的には正しいとはいえません。このため欧米ではナトリウム表示がほとんどです。それでも新法では、「食塩相当量」にこだわりました。消費者がいかに表示を活用して健康のために役立てるかということを重視したといえるでしょう。
ようやく表示が変わるのですから、ぜひ食塩摂取量の目安(日本人の食事摂取基準における目標量:18歳以上男性1日8・0g未満、18歳以上女性1日7・0g未満)として利用してもらいたいと思います。
栄養成分表示の レイアウトも任意変更
また、今回の見直しでは将来的に義務化を目指す項目として、「推奨表示」が新たに定められました。これが「飽和脂肪酸」と「食物繊維」の2成分です。他の成分は任意表示となりましたが、これらの表示レイアウトも図2のとおり、変わります。
そして飽和脂肪酸、n ―3系脂肪酸、n ―6系脂肪酸は、脂質のグループに含まれることがわかるように一字下げの―(ハイフン)から始まり、コレステロールは脂質の下に位置づける表示方法となります。また、炭水化物は糖質と食物繊維から構成されることがわかるように一字下げのハイフン、さらに糖類は糖質に含まれることがわかるように二字下げのハイフンから始まります。
このように新レイアウトでは、どの栄養成分がどこに含まれるのか、その関係が理解できるようになります。このレイアウトは欧米でもとり入れられており、輸入食品ではおなじみです。このように表示によって栄養成分の関係の理解も深まります。新しくなる栄養表示、その意味を知って、健康管理にぜひ生かしてもらいたいと思います。
(この記事は2015年7月号に掲載されたものです)
イラスト / オオスキトモコ